宮澤賢治の里より

下根子桜時代の真実の宮澤賢治を知りたくて、賢治の周辺を彷徨う。

会見

2017年03月07日 | 10番稿
賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)
     会見

   (この逞ましい頬骨は
    やっぱり昔の野武士の子孫
    大きな自作の百姓だ)
   (息子がいつでも云ってゐる
    技師といふのはこの男か
    も少しからだも強靱くって
    何でもやるかと思ってゐたが
    これではとても百姓なんて
    ひどい仕事ができさうもない
    だまって町で月給とってゐればいゝんだが)
   (お互じっと眼を見合せて立ってゐれば
    だんだん向ふが人の分子を喪くしてくる
    鹿か何かのトーテムのやうな感じもすれば
    山伏上りの天狗のやうなところもある)
   (みんなで米だの味噌だのもって
    寒沢川につれて行き
    夜は河原へ火をたいてとまり
    みづをたくさん土産にしょはせ帰さうと
    とてもそいつもできさうない)
   (向ふの眼がわらってゐる
    昔 砲兵にとられたころの
    渋いわらひの一きれだ)
   (味噌汁を食へ味噌汁を食へ
    台湾では黄いろな川をわたったり
    気候が蒸れたりしたときは
    どんな手数をこらへても
    兵站部では味噌のお汁を食はせたもんだ)
   (たうとう眼をそらしたな
    平の清盛のやうにりんと立って
    じっと南の地平の方をながめてゐる)
   (ぜんたいいまの村なんて
    借りられるだけ借りつくし
    負担は年々増すばかり
    二割やそこらの増収などで
    誰もどうにもなるもんでない
    無理をしたって却ってみんなだめなもんだ)
   (眼がさびしく愁へてゐる
    なにもかもわかりきって、
    そんなにさびしがられると
    こっちもたゞもう青ぐらいばかり
    じつにわれわれは
    遠征につかれ切った二人の兵士のやうに
    だまって雲とりんごの花をながめるのだ)

     <『校本宮澤賢治全集第四巻』(筑摩書房)>

《鈴木 守著作案内》
◇ この度、拙著『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)が出来しました。
 本書は『宮沢賢治イーハトーブ館』にて販売しております。
 あるいは、次の方法でもご購入いただけます。
 まず、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければ最初に本書を郵送いたします。到着後、その代金として500円、送料180円、計680円分の郵便切手をお送り下さい。
       〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守    電話 0198-24-9813
 なお、既刊『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』、『宮澤賢治と高瀬露』につきましても同様ですが、こちらの場合はそれぞれ1,000円分(送料込)の郵便切手をお送り下さい。

『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』   ☆『羅須地人協会の真実-賢治昭和2年の上京-』   ☆『羅須地人協会の終焉-その真実-』

『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』            ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著)

◇ 拙ブログ〝検証「羅須地人協会時代」〟において、各書の中身そのままで掲載をしています。


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