道端鈴成

エッセイと書評など

靖国狂想曲、自由社会の敵

2006年08月18日 | アジア論
河端「道端君いるかい。」
道端「河端先輩こんにちは。先日はご馳走さまでした。」
河端「いやあ、ひさしぶりに楽しかったな。鈴子君もよろしくといってたよ。」
道端「あ、もう帰られたのですか....」
河端「なんだか、淋しそうだな。」
道端「いえ。テレビ、新聞メディアもようやく靖国狂想曲が終わったようですね。」
河端「小泉首相も、中韓、国内メディアの圧力に屈せず、よく初めの公約をまもった。感動した。といいたいところだな。」
道端「そうでしょうか。小泉首相の個人的満足のための8月15日のように思えます。それにせっかくの発信のチャンスですから、靖国の追悼文化について他国との比較もふくめて、非難が適当でないことを、もっと具体的に説明してほしかったですね。心の問題だけでは不十分です。一国の首相ですから、自分の行為について、決意表明だけでなく、もっと論理的に展開して語って欲しいです。」
河端「すると道端君は、中韓やテレビ、新聞メディアからの批判に理があるというのかい。」
道端「いえ、とんでもありません。中韓からの、他国の追悼文化への非難、内政干渉は礼を欠いたものです。」
河端「それを突っぱねたのだから立派ではないか。」
道端「中国の外交部が、小泉首相の靖国参拝は、人類の文明への挑戦とか、なんとか言ってました。」
河端「文化大革命、チベット、ウイグル、等々、手を血に汚してきた、そして今も法輪功などの宗教団体にひどい人権弾圧を続けている共産党独裁政権が言うんだから、とんだブラックジョークだな。」
道端「ええ、ただ、笑ってばかりもいられません。ここの人類といった言い方では、例によって、ナチスと第二次世界大戦の日本軍のアナロジーがほのめかされています。ナチスのユダヤ人の組織的虐殺は、人類史上でも例をみない残酷非道なものです。ユーラシアのジンギスカンなどの征服者やヨーロッパの新大陸進出での虐殺も大規模なものですが、組織性ではかなわないでしょう。ソビエト、中国、カンボジアなど共産主義政権下での1億人ちかくの犠牲が、その組織性で近いかもしれません。」
河端「しかしナチスと第二次世界大戦の日本軍のアナロジーはなりたつのか。」
道端「戦争の残虐性という点で公平にみたら、全くなりたたないでしょう。ごく大ざっぱなに分けてみます。(a)正規の戦闘行為での殺戮、(b)正規の戦闘行為に関連しての民間人の殺戮、(c)空爆による民間人の大規模殺戮、(d)民族の大規模な組織的虐殺。このように並べると、ナチスの罪は(d)で最悪です。(c)は日本軍も行いましたが、もっとも大規模に行ったのは米軍です。」
河端「戦争は国家による人殺しだ。国家による人殺しはすべて許されざる行為だ、みたいな考えがあるからなあ。道端君のような議論は、受け入れられないのではないか。」
道端「だったら、すべての戦争における軍を同様に批判しないと非論理的です。」
河端「結局、ナチスと第二次世界大戦の日本軍の共通点は、(イ)互いに同盟を結んでいた、(ロ)連合国側と闘って破れた、(ハ)戦後連合国側による戦争裁判にかけられ有罪とされた、ということではないのか。」
道端「はい。その通りです。しかしそれは、以上に説明しましたが、人類の歴史における軍の非道さとは全く別です。ナチスの非道さは人類の歴史上でも例をみないものです。日本軍も、(b)正規の戦闘行為に関連しての民間人の殺戮、(c)空爆による民間人の大規模殺戮といった、誤りを犯しました。しかしこれは、ナチスの犯した(d)民族の大規模な組織的虐殺に比較できるようなものでは全くありません。」
河端「そうだな、問題は(ハ)と軍の非道さ評価が、結びついて受け取られていることだろうな。話も長くなったし、つづきは、またの機会にしよう。鈴子君にも声をかけてみるよ。」
道端「そうですね、また、ぜひ。」
河端「鈴子君というと、なんか、うれしそうだな。ところで、加藤紘一代議士の自宅が65才の右翼団体の男に放火され、その男が割腹した事件はもうきいたかい。」
道端「はい驚きました。加藤氏の靖国に関する発言に対してなどと報道にあるのを見ました。組織的背景もふくめて徹底的に捜査して、このようなことが起きないようにして欲しいです。ポパーが「開かれた社会とその論敵」で、ナチスなどの極右とマルクス主義を、自由社会の敵として、左右の全体主義を批判していたことを、あらためて思い出しました。」
河端「そうだな、暴力団がらみらしいが、気持ちわるいな。暴力は自由な言論を萎縮させる最たるものだ。加藤氏もこれに屈しないで欲しいな。また、加藤氏の意見への批判も、加藤氏にエールを送る気持ちで、遠慮せずに徹底的にいきたいものだな。」
道端「はい。そうですね。」

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