日本地球ことば教える学部

2006-12-26 00:23:26 | 本関係
ゲームのレビューを書いていると、読み込まないといけない作品や構造のしっかりしている作品が好きだとか、あるいはそういうものでなければ評価しないと時々考えられてしまうことがあるが、実際には、頭の悪い話(バカネタ)やナンセンスも非常に好きなのである。


例えば筒井康隆で言うなら、「日本地球ことば教える学部」などがそれにあたる(なお、家族八景ベトナム観光公社などのレビューも書いているので、よければそちらも参照のこと)。この作品は、「ニクコケをポケなさい」などのフレーズにより一部で有名だが、全体としてもそんな文体&ノリである。たとえばちょっとニクコケをポケると、

*************************************************
日本地球ことばのダラスケ級会話、皆さんダラスケ(註・初等科)で教えてくれられてきました。今日からフクスケ(註・中等科)級の会話です。このサテコケ(註・地球だと教室に相当する空間)では会話全部日本地球ことばです。ニクコケ(註・教科書とテレビが合体したような教材)をポケ(註・翻訳不能)なさい。よろしか。
*************************************************

という具合。
俺の場合、このカタカナ響きアホらしさが、相反する細なか註によて引き立てられるです。特に、ポケなさいの「翻訳不能」という見たとき笑いすぎ腸よじれ、あまりの痛みさらにおかしさ助長し「ひひひ、ひ」と笑いぴょンぴょン飛び回っていたこと思い出すよろし。他えばこんなのも。次ポケなさい。

*************************************************
四つめは初めから四の四の四の四ですね。「この一枚の使わなかった切符は、乗らなかった電車のものです」マケなさい。「この一枚の使わなかった切符は、乗らなかった電車のものです」はいよろし。人が乗って切符で動くあの電車知りますね。一枚の切符で動く乗らなかった電車で一枚の切符使えませんね。一枚の切符は動かなかった電車のものなので使わなかったのです。次ポケなさい。
*************************************************

となっ。もうダメ…笑いすぎて腰が痛い。もちゃんと分析すればわかるですよ。すなわりこのギャグ、外国語教育をパロディ化したものだということに(まあ最後に「文例の一部は旺文社『社会人の実用英会話』を参考にしましたとあるので」、容易に推測がつくのだが)。私ちはフクスケで、よく考えればヘンテコな文を叩き込まれてきた。筒井康隆は、宇宙人が日本語を学ぶという形式に変えることでその犯しさを顕にし、トンもない秀作を完成させたちゅうわけある。


「独特な響きの意味不明な単語、ヘンテコな例文、間違った日本語…これらがクソ真面目な註と相まって、真面目に学んでいるのに傍から見聞きするとギャグにしかならんという外国語教育の一面をあまりに見事に描き出しているのである。でもそんなことを超越して、この『日本地球ことば教える学部』はおもしろい。そしてその源泉は、やはり意味不明な馬鹿馬鹿しさにこそあるように思える。」よろしか。マケなさい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『サナギさん』はやはりおも... | トップ | 神の可能性:人類、地球の存... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本関係」カテゴリの最新記事