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【映評】ゴーン・ガール [オンナという怪物]

2014-12-20 11:07:13 | 映評 2013~

87点(100点満点)
2014年12月14日、池袋シネマサンシャインにて鑑賞

フィンチャー流やりすぎで怖いの通り越して笑うのも通り超して黙る、ともかく楽しめるのは間違いない衝撃作。

狂った感性の人間を描くのが好きな映画作家はたくさんいるが、さらにエンターテインメントとしても成立させる作家はデビッド・フィンチャーの他に何人いるだろうか?
第一幕における予想着地点の裏をかいた展開で驚かす第二幕。さらにそからまた予想を超えた場所へと着地する第三幕。物語がひたすらすごい。

妻の失踪事件に端を発し、妻を探す「よき夫」
しかし彼の「いい夫」とは真逆のダメ人間の本性が次第に見えてくるストーリーと同時並行で妻の手記の再現映像により夫のろくでもない過去が暴かれていく。
いい夫が実はひどい奴だった。妻が消えて悲嘆にくれる夫が実は犯人…。夫は妻を殺したのか?
とここまではありがちサスペンス。やり方次第でこれだけで十分おもしろくできる。しかしそこで満足はしない良いライター。
夫はたしかにダメ人間だが実は妻はもっととんでもない人間だった。
俗物夫VS怪物妻のメディアや警察や司法を巻き込んでの狂気じみた戦いに発展していく第二幕。
被害者と思われた美しく不幸な妻への同情は次第に恐怖へと変わっていく。
夫婦の映画?サスペンス?と「ジャンル」で括りたがる人間をせせら笑うように映画の雰囲気をころころ変えていくこのストーリー。しかしまだ止まらない。
「そんな馬鹿な!」な結末はやっぱりぜひ劇場で楽しんでいただきたいので書かないが、我らの期待や予想をはるかに超えた展開は、単純に物語の魔力にはまって楽しめる。

それにしてもこの映画でロザムンド・パイクの演じたモンスター妻は2010年代のイコンになるくらいの強烈な印象だ。
男が女を暴力で支配する時代は終わり、それどころか男は女に怯えながら生きるのが当たり前になるのかもしれない。
フィンチャーの『ドラゴン・タトゥーの女』のヒロイン・リズベットも強烈だった。監督ちがうけど『キックアス』のヒットガールも強烈かつ最強ヒロインだった。
ただ彼女らは男のように強く男よりも強いヒロインで、その最強ぶりの中にチラリと見える女の子な部分に萌え~~としちゃうキャラであり、言ってみれば男性的な部分と女性的な部分の合体したヒロインであった。

対して『ゴーン・ガール』のエイミーは、どこまでもオンナである。女性的な部分ばかりで作られながらその全てが男より強い。

リズベットやヒットガールが「基本男の方が強い」という考えの上に成り立つキャラであるのに対して、エイミーは「基本女の方が強い」のであり、男性優位思想を覆す恐怖感を男性諸氏に抱かせる。

エイミーの行動動機は正義のため国のため家族や仲間のためではなく、全て自分のため、というと悪く聞こえるが、オンナの誇りのためである。
夫ニックが、稼ぎないのに浮気するしかも暴力的な面もある、いわゆるダメ男で共感の出来ないキャラだが、その一方でまるで全ての男を代表するような存在に思える。
エイミーは自分の人生を潰された怒り、浮気されたことへの怒り、自分を世界で一番愛さなくなったことへの怒りで復讐する。その手法はオンナであることの武器をフルで使うものだ。身体的なことや、世間が女性に対して抱くイメージを徹底的に利用し男を潰しにかかる。
ベッドで血まみれになる姿はオンナの象徴に思える。
この映画は男と女の戦争であり、最終勝者は女であることを示しているように思える。

女を怒らせたらいかん。男は女に生かされている。飼い主は女なのだ。


『ゴーン・ガール』
監督:デビッド・フィンチャー
脚本:ギリアン・フリン
撮影:ジェフ・クローネンウェス
音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キム・ディケンズ、キャリー・クーン

---以下、鑑賞直後のTwitterフラッシュ映評---

@shinpen: 「ゴーン・ガール」久しぶりに素晴らしい夫婦愛の映画をみた。いい夫を演じる夫、いい妻を演じる妻。事件が2人を分かちそして結びつける。ぜひ夫婦で鑑賞し感動を分かち合ってほしい映画。

@shinpen: 「ゴーン・ガール」それにしてもベン・アフレックの不誠実そうでダメそうでどこか強権的な役はハマっていた。それ以上にロザムンド・パイクのキレッキレの妻のハマりよう!あの目!美しく怖い!アカデミー主演女優賞ノミネート確実って感じ

@shinpen: 「ゴーン・ガール」ファーストカットとラストカット。同じなのに全く違って見えるロザムンド・パイクの顔。素晴らしい

@shinpen: 「ゴーン・ガール」とにかく怖い映画でした。ホラー映画ではないけど精神的な怖さ。そしてところどころ、っていうか中盤以降ほぼ全部ちょっとやりすぎじゃね感があって、でもやりすぎるから映画って素敵だよね。そうじやなきゃイカンよ。特にこの種の映画は。やっぱ大満足のフィンチャーでした

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自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
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1 コメント

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アカデミー賞 (minor tranquilizer)
2014-12-24 23:19:27
トラックバックURL、すみません表示するようにしました。アカデミー賞もうすぐですね。仰る通り、まず候補になるでしょうね!
改めて考えると、エイミー、女刑事さん、双子妹、発情期な教え子、モーテルで金強奪するヤンキー女と、キャラ違い女性のコントラストが強い映画ですね。人生いろいろ。オンナもいろいろ。
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