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【映評】エクスペンダブルズ3 ワールドミッション [優しくなったおっさんたち]

2014-12-17 08:49:50 | 映評 2013~
78点(100点満点)
2014年11月30日、丸の内ピカデリーにて鑑賞

【ストーリー紹介】

悪い国や悪い奴らをアメリカのためにやっつけることを主業務としているスタさん他エクスペンダブルズの皆さんは今日も軍事独裁国家っぽいところで戦っています。
やたら警備の厳重な囚人護送列車にヘリコプターで攻撃をかけています。
動けるハゲとして有名なジェイソン・ステーサムらが列車に乗り込み、見張りなど次々ぶっ殺しながら一人の囚人を助け出しました。
彼は元エクスペンダブルズの一員で医療担当だったそうですが、どう見ても治すより殺す方が得意そうなオーラがありました。
あれあれ、よく見たらそのドクターは、あのバンパイアのくせに人間に味方してバンパイア国の刺客たちと戦っていたブレイドだったり、未来世界でデモリションなスタローンと戦ったこともあるウェズリー・スナイプスさんじゃありませんか。久しぶりだなあ。今までなにやっていたのと言えば脱税で投獄されていたのだけど、そんなウェズリーはせっかく助け出されたのに、ジェイソンらが促す方向とは正反対の先頭車両に向けて駆け出します。
そっちは敵がいっぱいいるよと注意したいところですが、彼は敵どもを次々ぶっ殺しながらあっという間に運転席を占拠して、悪の国の悪い奴が待ち構える基地に向けて全速力で機関車を走らせ、もちろん衝突寸前でヘリに飛び乗って脱出し、機関車の突撃を受けた悪の基地は大爆発しました。

こうして映画開始10分でまた一つ悪い国をぶっ潰したスタさんたちですが休む間も無く次の任務に向かいます。
情報によると悪い武器商人が取り引きをするというのです。
ジェット・リーの抜けた穴に強力すぎるメンバーをいれたエクスペンダブルズの皆さんは意気揚々と悪い国の悪い港に乗り込み悪い取り引きをぶっ潰そうとしました。ところが、取り引き現場に現れた武器商人のボスを見たスタさんはあまりの意外さについ声を上げてしまい、もちろん例のごとく口を歪ませて叫ぶのですが、ともかくそのため敵に見つかり大乱戦となります。
その敵のボスとは、またまたかつてのエクスペンダブルズの仲間、悪の道に走ったのでスタさん自らが殺したはずのあいつでした。

その顔はメル・ギブソンじゃないか!マッドマックスでリーサルウェポンでブレイブハートなメルギブかよ。いくら最近ハリウッドでロシア女ばかり抱く変な性癖とか、差別発言とかDVとかすっかりヒールだからって映画も悪かよ。一応アカデミー賞受賞監督だろ!とラジー賞で作品監督脚本主演の四冠制覇したことのあるスタさんが叫んだかわかりませんが、ともかくメルギブの猛攻撃で命からがら逃げてきたスタさんたち。
しかもメルギブは悪っぽくニヤッと笑ってエクスペンダブルズの一人超筋肉黒人のテリー・クルーズの足と背中を狙撃して重症を負わせます。
ウェズリー・スナイプス加入でキャラのかぶる奴を病院送りにしたなんて邪推しちゃいけません。

アメリカに帰ったスタさんは重症のテリーを入院させますが、その病院に普通にすたすたと大物感なく入ってきてスタさんに話しかけるのは、アーノルドシュワでした。
仲間を見舞いに来るとはいいとこあるなあって思いつつ、もうライバル感がすっかり抜けてファミリーっぽく馴染んでいるのに一抹の寂しさを感じつつ、病院を出たスタさんを待ち構えていたのはまたまた大物オーラの抜けたただのおじいちゃんみたな奴でした…
ってよく見たらお前、ハン・ソロじゃないか?!インディじゃないか!?
私は昔、ランボーとインディジョーンズってのは全く別次元のもので決して交わることはないものだと信じていましたが、大間違いだったことを思い知らされた瞬間でした。
CIAは大ハードなハゲに変わってハリソンをエクスペンダブルズ担当にしたわけです。東欧でメルギブがまた悪い取り引きするから行ってとっ捕まえてこい、とスタさんに脅しをかけるハリソンですが歩き去る姿がなんかヨボヨボなおじいちゃんっぽくてちょい哀しい姿でした。

しかしスタさんはある決意を固めます。メルギブは強敵です。前回のヴァンダムのようなかませ犬ではありません。戦えば大好きなエクスペンダブルズの仲間が死ぬかもしれません。そんなところ見たくない。どうしたらいいんだ…
そうだ!!死んでもあんまり悲しくない若者たちと新ユニット組んで乗り込もう!!とちょっと人格を疑うような決意をしてジェイソン、ドルフ、ウェズリー、ランディにサヨナラして若手探しに奔走します。もちろんみんな寂しそうな目をします。ジェイソンは頭も寂しそうです。
あるいはシリーズ3作目ともなると加齢臭漂うおっさんばかりじゃシリーズ存続が苦しくなってきて若手ファン獲得にはしったのかもしれません。スタさんはエクスペンダブルズの経営者みたいなものですからね。色々つらいよ。

ともかくスタさんは全米から自信に溢れて、ロッククライミングを披露したり、暴漢をボコボコにしたりする若造や女の子らを集めます。
若い戦士探しの旅をするスタさんは、旅の中で一人のやたら身の軽いよく喋るスペイン風の音楽にのって現れるどう見ても若者には見えないアントニオなバンデラスと出会います。
一体どういうことだ?こいつが若者なはずないだろ!でもそういうキャスティングって映画には良くあることだ。若者という設定ならそれを受け入れて見てやろうと私も決意を固めたのですが、スタさんは一目でバンデラスをおっさんと看破し即効不採用決定でした。
さてスタさんが若手チームで準備しているころメルギブはロシアで絵画に毒づくセレブインテリっぽい演技を『ブレイブハート』でアカデミー賞主演男優賞候補になった自慢の演技力で披露していました。たぶん出演してくれたことへのスタさんからのお礼でロシア美女をはべらすシーン付きです。

そしてスタさんと若者チームは悪いメルギブが悪い奴らと悪い取り引きする東欧のどっかの国に到着。若者たちのハイテク駆使したゆるいミッションインポッシプル風作戦でわりとあっさりメルギブをとっ捕まえてアメリカ行きの飛行機へと護送します。
なんとなくこの護送車の中でのメルギブとスタさんの台詞のやり取りが『リーサルウェポン』のラスト近くのメルギブとゲイリー・ビジーの台詞のやり取りと似てる気がしましたが、あの種の会話はこの種の映画によくあるので気のせいかもしれません。
ともかくあっさり任務完了かと思ったらそこはスタさん詰めが甘くて、メルギブの仲間たちの急襲でメルギブあっさり奪還された挙句若い奴らはまとめて人質に、スタさん1人逃げ延びるみっともない結果に。
悪いメルギブは4人の若者を縛り上げてスタさんに助けにこいと言います。
おいおい、結局若造どもは年寄りの見せ場作り要員かよ!
しかも優しいメルギブは4人もいるのに1人も殺しません。
4人の中にいる女の子が犯されないのは、メルギブがロシア女以外興味ないからでしょう。

責任感じた我らがスタさんはたった1人で助けに行くべくアメリカに戻って戦闘準備していたら、あのバンデラスなアントニオ野郎が仲間になりたそうにやって来ます。

こいつなら死んでも悲しくないと思ったのかスタさんはセニョールバンデラスを仲間に入れることにして、愛機でいざテイク・オフ!と思ったら、滑走路をふさぐように四人の男が立っているではありませんか!
もちろん、ジェイソンとドルフとウェズリーとランディです。
一体いつからそこに?そこで待ってるより格納庫に行った方がいいんでは?しかも四人でしめし合わせて?
などなど突っ込みたいところが山ほどあるのですが、ここは黙って泣いてあげるのが男ってもんでしょう。
結局、ほぼいつものメンツになってメルギブとの対決のためボロ飛行機を飛ばすスタさんでした。

それでスタさんだけだと心もとないと思ったインディ爺さんとT-800型ターミネーターも現地に行くことにしました。しかもT-800は今回まだ出番のなかったジェット・リーをお供に連れているではありませんか。ちょっとインディとショート・ラウンドと岩砕器のとこで戦った大男っぽく見える魔宮の伝説っぽい3人でした。

メルギブの基地は国名の最後3文字がスタンの架空の国でした。こういう安易なネーミングさすがスタさん脚本です。
メルギブはその権力でなんとかスタンの実質支配者となっています。役立たずの若造たちが囚われている廃墟と化したホテルにスタさんとエクスペンダブルズの一行がノコノコやって来てあっさり救出成功したかと思いきやメルギブはなんとかスタンの軍隊何百人と戦車数台と攻撃ヘリ数機を繰り出し一斉攻撃をかけます。といってもメルギブはその程度の攻撃で死傷者を出すスタさんチームだとでも思っていたのでしょうか?
レギュラーメンバーはもちろん新入りの若造たちまで含めて1人も死なないどころか負傷者すら出ない戦いぶり。もちろんなんとかスタン軍は片っぱしからぶち殺されていく始末。
ハリソンの操縦するヘリからアーノルドとジェットがマシンガン撃ちまくりの援護も加わり、気がつけば敵はほぼ壊滅。
ホテル大爆発寸前で次々とヘリに乗りこむエクスペンダブルズの皆さんですがスタさんだけが来ない。
そうですスタさんはあいつと決着をつけなきゃなりません。
当たり前のように一人で乗り込んでくるリーサルウェポンメルギブ。

ついに来ました。これ見なきゃ何のために作ったかわからないスタさんVSメルギブのタイマン勝負。
もちろん敵の技は全部喰らってあげた上でド根性の逆転を決めるプロレス風スタさん流儀で最後はブチ殺します。「俺が裁く」なんてキメ台詞もいやんなるくらい決まっちゃって腹かかえて笑える…じゃなくてかっこいいスタさん。
そのあと大爆発の中ヘリに向かってムゥオォォッッて例の唇ゆがめ叫びしながらのラン&ジャンプをきめるスタさん。
スタさん映画見慣れたこちらとしては、はいはい、頑張ったねって思うところですが、エクスペンダブルズのみんなは果たしてスタさんが爆発に巻き込まれずにヘリに飛び乗れたのかハラハラしながら見守って、ほんで煙が晴れたらヘリから垂らしたロープの先にぶら下がるスタさん。ファンファーレ。ニッコニコのみんな。
なんとかスタンの軍隊は全滅。
スタさんがいる限りアメリカ相手に喧嘩はできないと全世界の人々はまたしても思い知ったのでした。



【所感】

スタローンの高齢筋肉アクション祭もついに第三回。
前作よりさらに豪華スターをかき集め、加えて若いニューフェイスを集めて、みんなでスタローンを楽しく盛り立てている。
でもなんとなく1、2ほどの盛り上がりには及ばなかった感もあり、多分仲間増やしすぎて個々の見せ場が減ったことが最大の原因。
シュワルツェネッガーはすっかりレギュラーというかファミリー的に馴染みすぎ大物ゲスト感が消えた。
アクション的にもヘリから銃撃つだけ。
それ以上にジェット・リーがシュワと一緒にやっぱりヘリから銃撃つだけじゃダメだろ。ジェットの華麗な殺陣を見たかった。
ジェイソンやドルフの見せ場も減って食い足りなさを感じる。
逆に新加入のウェズリー・スナイプスや、アントニオ・バンデラスが楽しませてくれたのは良かった。
特にアクションスターってわけでもないバンデラスが見事にエクスペのみんなの中に馴染みハマっていたのは素晴らしかった。
エクスペシリーズでもランボーシリーズでも女性と距離を置き、女性が闘いに参加することをあまり快く思っていなかった感のあるスタローンが、どういう心境の変化か新メンバーに若い女の子を加える。その女の子のアクションがすげーかっこいい。ロンダ・ラウジーという娘なのだが、なんと北京オリンピックで柔道70kg級アメリカ代表で銅メダリスト。その娘と軟派なフェロモントニオ・バンデラスが二人で華麗にダンスでもするように息を合わせて敵を次々ぶっ殺していくシーンが、アクション的には一番印象に残っている。


シリーズを重ねるごとに残虐描写が減りファミリー映画デートムービー感が強くなってくる。(もっともファミリー層が見にくるとは思えないし、勝負デートでこれを選ぶ男は高確率でフラれると思うが)
今回はスタローンとメル・ギブソンという残虐大好きな二人の共演となったにも関わらず、シリーズ中もっとも血が出ないアクション映画になった。もっと血や内臓や手足が飛び散る描写が欲しいところだが
そうした視覚的な面だけでなく、味方側に一人の死者も出ないユルさは何とかならなかったのか?
人質4人もとればこの種の映画なら普通見せしめに1人殺して、主人公の怒りの理由付けするだろう。
メルギブが世界各国で残虐行為を行っていたという設定も、CIAのファイルに挟まれた現場写真が伝えるのみ。
もっとメルギブの悪人ぶりを見せて欲しかった。1、2、とかなりの面白さとハードさだっただけに、3のユルさに若干の食い足りなさを感じる。
とはいえ、基本的に絵づらだけで十分楽しめるシリーズなので、やっぱり4は作ってほしいな。



『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』
監督:パトリック・ヒューズ
脚本:シルベスター・スタローン、クレイトン・ローゼンバーガー、ケイトリン・ベネディクト
音楽:ブライアン・タイラー
出演:シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステーサム、ウェズリー・スナイプス、アントニオ・バンデラス、ハリソン・フォード、メル・ギブソン、シュワ

---以下、鑑賞直後のTwitterフラッシュ映評---

@shinpen: スタローン主催の第3回男たちの肉汁祭を鑑賞。安心のファミリー映画。スタさんVSメルギブのタイマン勝負!!ハリソンの操るヘリからマシンガン乱射のシュワ。やっぱり肉汁が世界を救う

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自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
最新作「チクタクレス」

 小坂本町一丁目映画祭Vol.12 入選
 日本芸術センター映像グランプリ ノミネート

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