聖マリアンナ医科大学病院臨床研修Blog

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臨床研修における形成的評価と総括的評価

2013-02-09 23:25:41 | 指導医日記

指導医養成ワークショップで混乱してしまう言葉に
『形成的評価』と『総括的評価』がある

研修医のポートフォリオにも形成的評価と総括的評価があり
日頃指導医から質問を受けることが多い

指導医ガイドラインから引用すると
教育評価は
学習者(研修医)の可能性を引き出し成長・向上を促すフィードバックを行う形成的評価と
目標達成の程度を把握して成績をつけ、合否などの判断をする総括的評価とに大別されるのである


形成的評価 Formative Evaluation又は診断的評価 Diagnostic Evaluationというものは
それぞれの研修診療科において研修到達目標を修得しているか否か
つまり学習中にその形成過程の改善を目的に実施される評価である
つまり
その評価結果は研修医の学習や指導医の指導方法を是正し
日頃の研修内容の改善へのフィードバック資料となるべき内容となる

一方
総括的評価 Summative Evaluationとは
達成された研修目標の程度を総括的に把握するための評価である
通常は研修診療科の終了時や全研修が終了した時期に実施され
修了判定のために行われるものである

単に研修修了判定のみの目的であれば
総括的評価が研修2年目の最終段階にのみ実施されればいいことになる

 

医学部における学習のように
総括的評価のみで学科の学習目標に到達したか否かを判定しようとする場合には
これを合格した者の中にはいわゆる「一夜漬け」で学習したものもいるかもしれない
実際小生もこのタイプだった

このような学習者のその後の忘却のスピードは極めて速い可能性が大きい
それに対して1学習単位ごとに形成的評価からのフィードバックを受けて
効果的な学習を行い
前述の学習者と同じレベルの合格点を総括的評価で取った学習者の忘却曲線はなだらかとなることが報告されている

研修における学習のプロセスにおいて頻繁に実施すべき形成的評価が極めて重要であることは明白である
研修のどのタイミングでどのように評価を受け適切なフィードバックが得られるか

これが研修医の成長に大きな影響を与えることは間違いないのである

ポートフォリオを活用するポイントで『指導医や同僚によるフィードバック』は大切である
形成的な評価が実践されない限り十分な効果が得られないといえる

いずれにせよ
形成的評価と総括的評価は単なる言葉の違いだけではない
成人学習における大きな効果の違いがある

 

 


指導医徒然日記 ~『いろんな手技ができます』という不思議な説明会~

2013-02-03 18:29:40 | 指導医日記

最近、某研修病院のプログラム説明会に参加させてもらう機会があった。

大学病院だけではなく市中病院も参加した説明会でちょっとした興味があり、傍聴させてもらった次第である。

そこで、凄く気になったことがあった。

 

『いろんな手技ができます』という宣伝文句である。

 

確かに研修医はいろいろな手技を経験したいのだと思う。焦る気持ちはよくわかる。しかしである。

『いろいろな手技できます』には多少の違和感を覚えてしまった。

手技を実践するのは研修医であるが、手技を受けるのは『患者』ではないだろうか。

『手技ができる』は、いろいろな行動に分解できる。『手技』について基本的な知識が求められ、『手技』に伴う偶発的な問題を知っており、当然、器具を用いる場合にはその基本的な操作はもちろん、偶発的な問題の発生時に対応できる、等々。単なる想起的な知識から、解釈・解決を求める知識は知っているという大前提がある。だからこそ、多くの大学では卒業前にシミュレーション教育を重視し始めているし、本学の研修プログラムでは内視鏡などは基本的にまずシミュレーションを優先させている。

 

はたして『患者』への説明はどうなんだろう?とふと心配してしまった。

『患者』は知っているのであろうか?

外科医であれば『患者』はまず執刀医の手術件数は気になるところだ。

『先生にお任せします』はとても怖い言葉だ。

若いころは『先生お幾つですか?』と聞かれた。つまり、『(お前、やったことあるのかよ?大丈夫だろうな~?)』である。

自分は全国レベルでどれくらいなんだろう?と今でも思う。たまたま、医師仲間と吞む機会があり、その中で同年代の彼らよりも難易度の高い手術を複数回経験していることを知り、ちょっとホッとした。

そのとき、これから外科系を選ぶ研修医には、ますますシミュレーションは大切になるし、指導医はそのことを踏まえて研修記録などを活用して、研修の履歴をきちんと残すように指導していくことがとても大切だと実感した。

 

そこで自分なりに考えた。

『手技が安全に実施できるような研修を考えています』

 こちらの方が正しい説明のような気がする。いかが?


指導医徒然日記 ~久々に・・・・~

2012-08-30 22:27:18 | 指導医日記

久々に覗いて見たら、ブログは久しく更新されていないらしい

ちょっと悲しい事実である

思えば2006年(平成18年)の4月に思い立って書き始めた

気づくと5年以上が経過して書き込まれた記事は2000件を超えている

ま~よく頑張った

 

普通の臨床医としてただ熱く語っていただけなのに

気づいたら医学教育にちょいと興味を持った

臨床研修の必修化

いつの間にか『(新)臨床研修』で(新)はとれてしまった

全国の大学病院が巻き返しをはかる中、我が母校はというと

とうとう研修医募集数も見直される羽目になっていた

 

今月号の医学教育のイラストコラムに考えさせられた

William Osler先生の有名な言葉

『患者を診ずに本だけで勉強することは、全く航海に出ないに等しいといえるが、

反面、本を読まずに疾病の現象を学ぶのは、海図を持たずに航海するに等しい』

コラムを書かれた先生は、外科の恩師とのやりとりをこう書かれていた

大学で医学教育の旗振り役だった筆者は、当時、外科の恩師に『根拠を示せ』と

常に理論を要求されたらしい

そして自分のやらんとしていた医学教育が、さまに『海図を持たずに航海している』状態だったと気づかされ、大学院で理論を学んだのだそうだ

自分なりに行動したあとに、根拠としていた文献などを読み返し、振り返るという、臨床医としての当たり前の姿

まさに振り返りを実践することの大切さを示している

そして最後に読者に向けて『海図を持って航海しているか?』『海図は何枚あるか?』と聞き結んでいる

 

大学在職中に化学療法による抗腫瘍効果を増強する治療を発表したとき、学会で根拠を示せといわれ、それから薬学部と共同研究した

今も後輩たちが継続して研究し、患者さんの治療に役立っていることもうれしい

臨床研修ではいくら欧米の医学教育がすばらしくとも、日本に合っているのかどうしても不安で、ポートフォリオも教育学における理論から懸命に学んだ

今も教授の先生方から質問を受けると理論から説明するようにしているが、とても小うるさい輩だと思われているに違いない

 

今はとても大きな立派な船には乗っていないし、大海原を航海しているとは言えない

でも自分で集めた海図だけはしっかりと手元に持っているつもりである

 

母校の医学生や研修医はきちんと自分の海図である教科書や文献を大切にしているのだろうか?

集めた海図をきちんと整理しているのだろうか?

いつでも大海原を航海できるように準備しているのだろうか?ただまとめただけで、すぐに使えるようなものでないのなら、何のため?

怒られるから勉強する?留年するから試験前には勉強する?

 

久々にそんなことを感じた

 

 


平成24年度 研修医オリエンテーション終了

2012-04-07 21:54:11 | 指導医日記

平成24年度研修医オリエンテーションが4月6日に無事終了しました。来週からは各診療科に配属され、研修医としての生活が始まります。今年のオリエンテーションでは改めて若人の発想力の豊かさに驚かされました。中でもKJ法の発表(基本的診療能力とは)では、独創的なデザインが複数みられ、立体(3D)の発表を初めて目にしました。その柔軟な頭脳を是非今後に活かして欲しいと思います。

 


指導医徒然日記 ~自分がドンキホーテに思える瞬間~

2012-03-11 22:00:54 | 指導医日記
先日もある教授から質問された
『なぜ本学ではポートフォリオで臨床研修の修了判定を行うのか?』
違う教授からも質問された
『これは厚労省の義務ですか?本学だけですか?』

その一方で未だに質問されるもっとも多い内容
『この到達目標は多すぎるからいけないのでは?』

何度でも説明するが
研修到達目標は厚労省が定めているもので
これを達成できるように研修環境を整え
指導評価を繰り返して
最終的に研修到達目標を達成したと判断して修了させるのが
臨床研修病院に課せられた使命である

『この研修到達目標が医師としての基礎的診療能力なのか?』
こう感じている方々はまさに『行動主義』的発想にとらわれていると言える

これもあれも全部できるように
一つずつ項目を掲げて
まるでステージを一つずつクリアしていくRPGのごとく研修していく
これが『行動主義』である

一方で
こんな風になれば医師としての基本的診療能力を修得したと考えるから
自分でその目標に向かって頑張るようにして
あとは細かいことは言わない
その代わりに証拠は見せてください
これが『構成主義』的発想であり
そのもっとも有用な学習ツールであり評価ツールが
『ポートフォリオ』であり『ポートフォリオ評価』である

だからこそ
『ポートフォリオ』には
研修医個々がどうやって自分で考えて研修のよりよい改善を行ったのかがわかるものでなければならず
またそれは証拠として挟み込まれていなければならない

このことを十分に理解していない指導医が研修医につくと
なぜポートフォリオを作らないといけないのだと疑問をもつ研修医を正しく導くことができない
もしこの指導医がかなり立場が上であったとする
たとえば医局もしくは病棟の責任者であると
残念ながらその研修医は淡々と日々与えられたものをこなすだけの研修をすることになる
さながらゲームの攻略本を片手に高得点を叩きだそうと奮闘する様に似る

研修医はとにかく早く医者になりたいと考える
でもその理想とする姿は素早く縫合したり的確な指示を出すといった表面的なことだけだろう
もし本当に研修医があこがれの指導医に近づこうと思えば
夜な夜な重傷患者の側から離れず
夜な夜な資料を集めてひたすら独学しているそんな姿を目の当たりにするはずなのである
そして
その一方で豪快に遊ぶ姿もみるだろう
そんな憧れの指導医に近づきたいと思い一生懸命側にいようと努力しても
本質的なことは学べないのである
誰も教えてくれない
自分で気づくしかないのである

最近よく思うのが指導医としての自分である
はたして自分はどっちの指導医なのか
もし研修医の憧れの医師であるのであれば
その指導医が薦める『ポートフォリオ』を自分なりに解釈して作ってくれるのではないか
少なくともよくわからないけど頑張って見せてくれるのではないかと

大学内でそれなりに知られた存在かもしれないが
研修医のための学習ツールが活用されない
このままではさながら自分が『ドンキホーテ』に思えてくる


確かに妄想癖があることは否定しない
でも夢を実現させるために今を頑張るとも思っている

今宵月下独酌なのだ


臨床研修管理委員会が開かれました

2012-03-08 07:51:56 | 指導医日記
平成23年度聖マリアンナ医科大学臨床研修管理委員会が開かれました
委員長として本院病院長
そして研修協力施設・病院の研修責任者であるそれぞれの病院長・施設長の先生方
研修に関わる病院内の部署の責任者の方々
さらに臨床研修センターからセンター長をはじめそれぞれの研修プログラム責任者
多くの方々が集まり研修修了判定を含め討議しました

平成22年度研修修了までの流れの説明のあと
今回の研修修了者が承認されました
それぞれの研修プログラムの終了判定における問題も議題となり
今回はとくにポートフォリオ評価における研修医の質的評価に関して議論がなされました
せっかくポートフォリオ評価で評価しながら
形式ばかりの評価に陥りがちな点についてあらためて厳密に評価を行い
研修医にも強いメッセージを送ることに意見が一致しました

その後次年度研修プログラムの内容が確認され
また研修修了評価基準の確認も行われました

研修プログラム川崎多摩で独自に行われた
臨床研修指導・評価者を養成したことなども報告されました

次年度以降は新たなメンバーを加わり
より一層本学の研修環境が充実したものになるよう努力していくことが確認されました


指導医徒然日記 ~復活!~

2012-03-01 08:05:36 | 指導医日記
ご無沙汰です!
今日から再スタート

聖マリアンナ医科大学の臨床研修もようやくひとつの区切りを迎えました
ポートフォリオ評価も修了基準(ルーブリック)が公開され
研修医も自分がどのように成長すればいいのか
ある基準が見えるようになりました

また病院内で態度を含めて指導・評価してもらえるような研修環境の整備も
それぞれの病院で整えられています


もちろん将来の自分を見据えて
研修スケジュールを立てながら
研修到達目標を意識した研修にするスタイルは変わりません

4月から研修プログラム責任者も変わります

このブログも新しいメンバーで書き続けていこうと思っていますので
皆さんよろしくお願いします

指導医徒然日記 ~連休中はしんどい~

2011-10-09 17:12:20 | 指導医日記
いや~わかっていても連休中のへき地での診療はきついです

発熱や腹痛で救急外来で対応していると
頭部打撲に突然の頭痛
さらには
交通外傷の救急車

そこに
『主人がチェーンソーで足を切ったんです!』って救急外来に直接飛び込んでくる

ぜ~んぶ一人で対応するのは正直大変でした

なんとか今は落ち着きましたが
これは大変だ~

多摩臨床研修ニュース 中間面談 ポートフォリオ検討会開催

2011-10-06 20:03:34 | 指導医日記
今日は研修医1年目・2年目が集まってのポートフォリオ検討会が開催されました
事前に研修医はそれぞれのテューターと面談し
自分たちの作成したポートフォリオの1ページ1ページを一緒にみることで
きちんと研修の証拠があることを確認します

そのうえでサインをもらい
今日のこの日を迎えています

研修医は
どんな医師になりたいのかを示し
さらにどんな思いでこの研修プログラムを希望したのか
研修医や指導医の前でポートフォリオを示しながらプレゼンします

さらに
研修到達目標の達成度を評価表を示しながら発表
そして自分の到達できたこと
まだまだ不十分なこと
そしてこれから何を達成すべきかを語ってくれました

この検討会の特徴は
研修医同士が互いにポートフォリオを見せ合うこと
自分たちの達成度を確認しあうことです
これはひとつの刺激となり
また
研修医が自分の研修を振り返る機会となっています

検討会をやってこそのポートフォリオ評価です

これからも継続していきたいと思ってます

多摩病院臨床研修ニュース ~臨床指導評価担当者養成講習会~

2011-10-01 22:31:59 | 指導医日記
とうとう10月になってしまいました
早いものですね~あっという間に紅葉の季節です

ゆうべ遅くに実家に戻り
今朝はあまりの寒さに目覚めてしまいました
18℃でTシャツは厳しかったです

さて
昨日は臨床研修における指導評価者を養成する講習会
前後半合わせて100名ちょっと
臨床指導医ではなく
看護師さんや放射線技師さん
リハビリのPT・OT・STに薬剤師さん
さらには臨床検査技師さんや栄養士さんまで
本当に多くの病院で一緒に働いている皆さん方が
研修医の育成のために協力してくださっているんだな~と実感しています

昨日は19時からの開催だったのにも関わらず
本当にありがとうございました 

途中話ながらかなり過激な発言になったと気づき
終わったあとしばらく落ち込みました

でも
本当になんとかしたい
そう思っています

まずは日頃の自分の診療で模範を示そうと思ってきたここ数年ですが
それでも研修医や指導医のことで様々な情報が入ると
やっぱり気になります
自分の努力不足だと痛感し落ち込みます

それが
ちょっと強い口調になってしまうのかもしれません
ぜひお許し頂ければと思っています

でも
本当に研修医や多くの医療に関わる職種の新人は
皆さんの後ろ姿をみて成長します
日々研修環境の中で
自分たちで考えズレを修正して学んでいます

だから
間違った後ろ姿だけは見せて頂きたくない
そう思っています

ぜひぜひ今後ともよろしくご指導のほどお願いします