老谷の大ツバキを見終えて、時間を確認すると17時を過ぎていました。
急いで老谷川に沿った道を下り、岩瀬で県道76号に入り、久目の紹光寺を訪ねました。
紹光寺には目通し140㎝の古木があるはずです。
しかし、大黒さんにお話しを伺うと、ツバキは2年前の平成25年に枯死したそうです。
次に、久目の前田家を探しました。
前田家は明治期まで造り酒屋をしていた旧家だそうですが、久目の集落をいくら探しても見つかりません。
尋ねるべき人にも出会えなかったので、場所が分かる久目神社へ向かうことにしました。
久目神社は2010年3月の旅で一度訪ねています。
静かな境内に人影はなく、8年前に訪ねた時と変わらぬ様子で、ツバキが紅色の花を枝に飾っていました。
久目神社から再び県道76号を岩瀬に戻り、行願時を訪ねました。
本堂裏の丘に林が広がり、林の中に幾本ものツバキが花を咲かせていました。
夕暮れ時の寂しさに包まれた林で、枝々に花を灯すツバキの風情が心に残りました。
時計の針は既に18時を回っていましたが、もう一ヶ所欲張ることにしました。
岩瀬から県道29号を南下し、坪池の集落を訪ねました。
坪池では宝住家墓地と巻家墓地が目当てでしたが、宝住家墓地を探し出すことはできませんでした。
しかし坪池の集落から、更に山の奥へ農道を進んだ先の、巻家墓地のツバキが見事でした。
車一台がやっと通れる程の細道の右手に、こんもり茂るツバキは23本が株立ち状になっています。
ツバキの下に数多くの石塔が並び、青磁の花立てに菊の花が供えられていました。
道路際に三本の檜が並び、法面を守っています。
墓の後ろへ回ると、大きな斜度を伴って、下の耕作地へ落ち込んでいました。
花を見ると花糸が低い位置で分れますので、ユキツバキの血が混じっているのでしょうか。
既に18時半に近く、周囲は薄暗くなり始めていました。
どこか遠くの谷底から、人の息吹を感じさせる車の走行音がかすかに聞こえてきました。
人里を離れ、風のそよぎのない丘の上に夜が忍び寄ります。
悠久の時を刻み続けてきたツバキが今、闇の中の眠りに付こうとしていました。
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