千石山が属する脊振山系は佐賀県と福岡県の境をなします。
サザンカの自生地から30分もはしると、福岡県久留米市に入りました。
久留米ツツジで名を知られる久留米市は、江戸時代からの植木・苗木の産地です。
久留米市の梅林寺は、1620年(元和6年に京都府の福知山から久留米藩に転封された有馬豊氏が、翌年に福知山の瑞巌寺を久留米に遷座させたのが始まりです。
後に梅林寺と改称し、久留米藩歴代の菩提寺となりました。
寺の3千坪の外苑には市民が寄贈した約30種500本の梅が植えられ1958年から公園として開放され、梅の名所として知られています。
幾つかの枝に梅の花を見かけました。
「あ、梅が咲いてる」と、周囲に、人々の嬉しそうな声が聞えました。
梅林寺から石橋文化センターへ向かいました、
石橋文化センターは久留米文化振興会が運営する総合文化施設です。
久留米市で創業したタイヤメーカ・ブリジストンの創立25周年を記念して、創設者の石橋正二郎が1956(昭和31)年に久留米市に寄贈したものです。
石橋文化センターの庭園は無料無休で開放され、園内にはツバキ園、バラ園、梅園、花しょうぶ園などが設けられています。
ツバキ園には約260品種1,500本のツバキが植栽され、幾つかのツバキに花が咲いていました。
また、園内には梅園をはじめとして140本の梅が植栽されていますが、池の畔の紅梅が見頃を迎えていました。
風もない園内は豊かな陽射しに満ちて、気持ちの良い散策を楽しむことができました。
次に、久留米市の二つ目の梅の名所として、宮ノ陣神社を訪ねました。
宮ノ陣神社には将軍梅があります。
この梅は、南北朝後期の1359年(正平14)に後醍醐天皇の皇子である征西将軍宮懐良親王が足利方の大軍と戦った大原の合戦(筑後川の戦い)で、この地に陣をおき、手植えされたと伝わる紅梅です。
将軍梅の開花は3月上旬~中旬頃に見頃を迎えるそうですが、宮ノ陣神社の境内には約60本の梅の木が植栽され、幾本かの梅に花を見かけました。
久留米市はツバキ類の植木・苗木の生産では全国一を誇ります。
草野町には「久留米つばき園」があり約500品種・2,000本のツバキ類が植栽され、「久留米つばき園」は平成22年3月に国際優秀ツバキ園に認定されています。
ここは、後日時間を掛けてゆっくり見学しようと、玄関先を確認するだけに止めました。
今思えば愚かなことをしたものです。
久留米市の最後の訪問地は石垣観音寺でした。
寺の掲示物の記述によれば、この寺は白鳳二年(674年)の創建で、飛鳥時代最後の和銅元年(708)、女帝元明天皇の詔命で石垣観音寺となったと伝わる古刹です。
この寺には樹齢約350年、久留米市指定の天然記念物であるハルサザンカがあります。
先にも書きましたが、ハルサザンカはヤブツバキとサザンカの種間雑種です。一般にヤブツバキはサザンカよりも花や葉が大きく、ヤブツバキの花は赤ですが、サザンカの花は本来白花で、花弁が散りやすいなどの特徴があります。
開花期はツバキが春で、サザンカは10~11月ですが、種間雑種としてのハルサザンカの開花は11月下旬から4月上旬です。
ハルサザンカは現在約50品種程が知られていますが、その内の一つである石垣観音寺のハルサザンカ「観音寺」は、赤い一重の花を12月から2月頃に咲かせます。
私が訪ねた日は、全ての枝々に花を付けたハルサザンカが、早春の陽の光を、満面の笑みで受け止めていました。
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