今回の旅は全行程を車で移動しますので、計画の当初から、できるだけ車の特性を生かしたいと考えていました。
複数の選択肢がある場合は、公共交通機関では行き難いルートを選択しました。
グラスゴーに植物園があるので、今日は、そこは外せませんが、途中経路として公共交通機関で行き難い場所を探すと、インヴァレリー(Inveraray)という町が面白そうです。
ナビにインヴァレリーと入力してスタートしましたが、幹線道路A82を走る途中で、ナビは右折して一般道B8074へ入るようにアナウンスしました。
四桁の番号が付いた道路は初めてで、しかも道は砂利道です。
ちょっと、戸惑いました。しかし、山の稜線が進行方向に向かって下がっています。
目的地は海に面した町ですから、地形に矛盾はありません。
道の轍はある程度の交通量があることを示しています。
車のガソリンメーターも数百キロは走れることを保証しています。
判断はGO。
見通しが良くないので、対向車に注意してスピードを落します。
誰か個人の庭へでも入って行きそうな雰囲気の道です。
途中から右手に、道路に平行して川が流れ始めました。
岩の露出した場所を、鉄分を含んだような色の水が流れていました。
流れは穏やかで、小さな関を見かけました。
鱒が岩影に潜んでいそうな雰囲気です。
小さな川は、直ぐに幅を広げて川原を見せていました。
対岸の山裾は放牧地です。
こんな長閑な道を走っていると、肩から力が抜けていくような、寛ぎに満たされます。
やっぱりドライブは、信号も標識もない田舎道が楽しい。
牧草地に包まれた池の畔に古城跡を見かけました。
いいな~、こんな景色 !
15分程度だったでしょか、案ずるようなことも無く、また幹線道路A85に合流しました。
こんな些細なことが、不思議と記憶に残ります。
目的地のインヴァレリーの街はガイドブックに「ファイン湖畔の貴婦人」と紹介されています。
確かに気品ある街並みでした。
港の帆船アークティック・ペンギン号が船底を見せていました。
干満の差がこんなにあるんですね、驚きです。
この船は1911年から1965年まで灯台船として、その後は観光帆船として使われていたそうです。今は船上博物館となっています。
まだ、朝が早いので、人気のない港は静寂に包まれていました。
この町の鐘楼は第一次世界大戦で戦死した町民を追悼して、町の創設者が建てたもので、この鐘楼の鐘は8トンもあって、世界で二番目に重いそうです。
私は今朝4時半から動き始めましたので、今はまだ7時半。街の商店は全て閉まっていました。
たまたま一軒だけシャッターを開け始めたパン屋さんがあったので、朝食を求めて中に入りました。
30代と思える店主の左腕に、日本語で「デェービス」と刺青が彫られていました。
「おお、デェービスさん」と私が声を上げると、店主は「何で分かったの?」といった怪訝な顔をします。
私が「何で日本語で彫ったの?」と聞くと、彼は「これは私の名前です」と答えました。
(それは分かってますよ)、
しかし、会話がちぐはぐなので、私は「いいねー! (It's nice!)」と応じ、親指を立てて、笑顔で祝福してあげました。
店主は、はにかんだ笑顔をみせて、「サンキュー」と嬉しそうでした。
「ファイン湖畔の貴婦人」の住人は、朴訥で穏やかで、平和な日々のように見えます。
このパン屋さんのサンドイッチで朝食を済ますと、私は再び次の町を目指しました。
補足
地球の歩き方の「スコットランド」にはファイン湖と記載されていますが、地図で確認すると、ファイン湖の地形は日本語では湾、ないしは入江に相当します。しかし、イギリスの地図を見ると、このような地形には、多くの場合「Loch」の名が付けられていました。
辞書には「 Loch ; n.(スコットランド語)湖、入江 」 と記載されています。
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