美保関を後に、松江に向け車を走らせます。
途中、鳥取県と島根県の境に中海という汽水湖がひろがっていました。
この中海の中に大根島という島があって、全国有数のボタン花と高麗人参の産地として知られています。
今の季節ボタンの花を見ることはできませんが、後学のために寄り道をしました。
再び境水道大橋を渡り、境港市へ入ります。
傾きかけた陽光の中、大橋から見下ろした境港の街が、現実感を喪失した寓話の世界のように見えたのは、きっと私が、旅の気分に浸りきって、日常から解き放されていた証なのでしょか。
人は何故旅をするのかも分かったような気がして、黄昏る街へ下って行きました。
境港から中海を渡って江島、大根島へと向かいます。
大根島には幾つかのボタン園がありますが、代表的な由志園に行ってみました。
この時点で略17時でしたから中へは入りませんでしたが、ボタンの花の咲く頃に再度訪ねてみたいものです。
大根島から中海を横切る埋め立て道路へ入ります。
陽の傾きを確かめながら、ナビで松江までの距離を測りました。
夕日を宍道湖畔で見るには、頃合いのタイミングのようです。
松江へ向かう途中で、湖上に大山の姿を認めました。
青い水面に浮かぶ大山は見納めと思えたので、トンネルを抜けると道を逸れて、小さな湖畔の村へと旧道を進みました。
大山の頂きに雲は消え、中海と空は青のグラデーションに包まれています。
村の漁港に一本の松が枝を広げ、その奥で大山の頂きが微かに陽に染まっていました。
思い通りのタイミングで、宍道湖の夕日スポットに到着することができました。
心に掛かる由無しごともなく、幸福な時間を紡げた一日を象徴するかのように、湖畔に静かな黄昏が迫っていました。
空に浮かぶ茜雲が、至福のひと時を迎える人々を祝福しているような、そんな気がする夕暮れどきでした。
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