バンタンティを出て振り返ると、午前中に下ってきた尾根と谷が見えました。
左手奥がデオラリのピーク3180mです。
ポカラで買った5万分1の地図には、この辺のトレッキングルートが赤線で示されていますが、全く当てになりません。
日本の地図と同じつもりでルートを読むと、頭が混乱しそうになります。
バンタンティを出てから、シャクナゲの原生林の中に道が続きました。
下の写真の、左端中央にザックを背負ったトレッカーの姿が小さく写っているのがお分かりでしょうか。
道の周囲に、樹高30~40mはあろうかと云う、シャクナゲの純林が広がり、トレッカーの姿があまりにも小さく見えます。
嗚呼そうなんです、満開の季節に、このシャクナゲの森に来たかった。
そう、そうなんです、全ての花にタイミングの合う旅などありませんから、「花の旅」とは、諦めることを知る旅なのでしょう。
それにしてもトレッカー達は皆、シャクナゲの純林に気付く風もなく、足早に通り過ぎてゆきます。
「気付かぬ」ことは嘆く時間をも省いてくれるのです。
不平不満とは、所詮そんなものかもしれません。
トレッキングルートは標高2500m前後の山腹を横切るように続きました。
暑さ寒さを意識しない、心地よい大気の中の道を、ゆったりペースで歩き続けました。
やがて、ダウランティ・コーラの上流部に出ました。
今日の目的地のタダパニへは、沢の左手の尾根を越えて行きます。
森の中から、鞍部を越える道が見えていました。
一度谷へ下り、数百メートル程を登り直します。
トレッキングコースには常に人の姿がありました。
小学生ぐらいの子供や、赤子を背負ったトレッカーの姿も見かけました。
しかしそんな最中に、この場所が世界の屋根のヒマラヤであることを、突然降ってきた雹が思い出させました。
ぽかぽかとした気候であっても、瞬時に厳しい状況になる可能性を想定しておくべきなのです。
下った谷をもう一度登り直し、午後2時半過ぎにタダパニに到着しました。
タダパニの村の入口に、とてつもない高さのシャクナゲが花を咲かせていました。
その赤いシャクナゲの花の上を、空一面に白い雲が覆っていました。
そして私は、明朝マチャプチャレが正面に見えるはずの、東に窓を向けたGHに今夜の宿を定めました。
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