Sim's blog

電子工作はじめてみました

位相検波(2)

2010-02-12 03:10:07 | 電子工作
位相検波(1)の続きになります。

その後、最後までシミュレーションできたので一応ご報告です。

回路全景です(クリックすると拡大します)。


電源は±2.9Vです。シミュレーション上ではvpが2.9V、vmが-2.9Vにしてあります。

まずは、左上の正弦波出力回路(緑)と右上の-90度位相発生回路の出力(赤)です。

前回はLT1055を使って2Vp-p(+1V~-1V)でしたが、ちゃんとNJM062Dを使ってやると4Vp-p(+2V~-2V)になります。

次はレベル変換です(回路図中段左側)。抵抗で分圧してボルテージフォロワーで受けています。ここで4Vp-pの正弦波を500mVp-pに変換しています。

ここが500mVp-pであることが重要なので、実はNJM062Dのかわりに別のオペアンプを使った実装も可です。2Vp-pなら、1/4になるような分圧をすれば500mVp-pになるからです。

次は電圧→電流変換です(回路図中央)。ぐぐってみるとこちらのページにある「アースに対して電流出力できる回路1」と同じ回路になっています。電圧と電流の比はR19で決まります。1kΩなので電圧の1000分の1の大きさの電流になります。具体的には電圧(緑)が500mVp-pの正弦波なのでコイルを流れる電流(赤)は500uAp-pの正弦波になります。


このときのLにかかっている電圧(緑)です。

赤は一つ上と同じ電流です。Lは1mHのとき、電圧はπmVp-p(+π/2mV~-π/2mV)になります。ちなみにLが100uHのときは、π×100uVp-pになります。つまりLのインダクタンスに比例した電圧になっています。ただし、直列抵抗成分がない場合の話です。LTSpiceのデフォルトではLの直列抵抗は1mΩになっています。
それにしても、こんなところにπが出てくるのはおもしろいですね。

Lの直列抵抗を10Ωにしたときの波形です。

電圧の方は4.8mVp-pくらいまで大きくなっています。この直列抵抗の影響を取り除くのが位相検波をする目的になります。

次はレンジ切り替え用のアンプです(回路図中段右側)。

πmVp-pは変わりませんが、中心電圧が-1Vくらい下がっています。
測定対象のLが
<20uHのとき100倍
20uH~200uHのとき10倍
200uH~2mHのとき1倍
2mH~20mHのとき0.1倍
をスイッチで切り替えるようになっています。今回は手抜きで1倍(ボルテージフォロワー)しか作っていないので200uH~2mHの測定をすることになります。このとき、π×200uVp-p~π×2mVp-pが入力かつ出力になります。他のレンジのときの出力も同じ範囲になります。

次は位相検波回路(回路図下段左)です。レンジ切り替えアンプの出力を4053というアナログスイッチを使ったスイッチで検波しています。

回路図の上の方の4053の出力です。

位相の信号が負の所の信号だけとりだしています。

同じく下の方の4053の出力です。

位相の信号が正の所の信号だけとりだしています。
ある意味正と負の2つの信号を取り出しているのはレンジ切り替えアンプの所でオフセットがあるので、次の段で差動増幅+積分することでオフセットをキャンセルするためです。
4053はLTSpiceのbvという部品を使って実現しました。bvは任意の式を使った変換を実現できる便利な素子です。今回はif文を使って4053にしています。

ちなみに直列抵抗を10Ωいれたときは、このような波形になります。

緑が上の4053の出力、赤が下の4053の出力になります。

最後はローパスフィルタ(積分回路)です。

このLPFはゲインが10倍あって、さらに差動入力になっています。測定したのが1mHで結果は10mVになっています(10倍)。ちなみにLTSpiceでRMSは10.009mVになっています。
緑は上の4053の出力、赤は下の4053の出力、ピンクは位相信号です。

500uHのコイルを測ったときの様子です。

ほぼ5mVになっています(4.9462mV)。

1mHで10Ωの直列抵抗がある場合です。

10.245mVです。

ちなみにLPFの特性です。



シミュレーション向きにおもいっきり簡略化してみました(クリックすると拡大します)。


0.5mAp-p(+0.25mA~-0.25mA)の正弦波(緑)を1mHのコイルに流してやるとπmVp-pの電圧LOUT(赤)が出力されます。

ピンクは位相検波に使う位相信号です。

LOUTを4053で位相検波した結果(赤)を積分すると1mVの直流(緑)になります。


Lは同じ1mHですが10Ωの直列抵抗がある場合です。

LOUTは6mVp-pと直列抵抗が1mΩのときの倍くらいあります。しかし、位相検波(赤)してやることで、積分結果は1mVの直流(緑)になります。


秋月のLメータはアナログ回路なので、調整用の抵抗があったり定数を合わせる必要があります。マイコンを使って実現する場合には定数はぴったり合わせる必要はなく割り算して辻褄を合わせてやればよくなるので調整部分が減ります。

うーん、それにしても、ここまで来るのに時間がかかったー。でも、とても勉強になっておもしろかったです。とか言いながら式で計算する方法はさっぱりです。

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