日々諸々

西日庵雑記・洗足ベース通信

消費をせんとや生まれけむ

2024-04-11 13:44:40 | 日々程々
 歳をとっても欲しい、手に入れたいという気持ちはなくなりませんが、有形無形を問わず、後世に何かを残そうとする気はなくなりました。虎の皮や人の名、財だろうが仕事だろうが人だろうが、遺すなんてどうでもいい。

 小津安二郎は「安物を粗末に使うな。良いものを大事に使え」といったそうですが、その結果ものが残ったら仕方ない。残された人が好きにすればいい。残さないために粗末に扱う必要はないし、売茶翁や斉藤了英みたいに、自分が死んだら自分のものは焼いてなくしてしまいたいとも思いません。

 それより今の世の中は伝承の大切さを見失って、残さなければならないものを壊し、どうでもいい新しいものに作り変えるのを進歩、繁栄だと思っているようです。でもそんなもの残してどうするんでしょう。陳腐化したり老朽化したら、また壊して作り直せばいいと思ってるんでしょうか。そう、また作ればいい、作れるうちはね。

 60年代から今日まで大量消費社会を体験してきた私は、スクラップアンドビルドも悪くないと思います。私たちの世代は、どこまでいっても「消費をせんとや生まれけむ」です。行くつく所は、バタイユではありませんが「蕩尽せんとや生まれけん」

 10年近く経つサッポロのピノノワール。「ピノノワールはピノノワールとして生まれるのではない。ピノノワールになるのだ」と私はいつもいっていますが、それには15年くらいかかります。このワインもまだなんとか買えるでしょうが、もうすぐ手に入らなくなるでしょう。もうちょっと熟成させなきゃいけないんですが、残したってしょうがない。飲んじゃえ、飲んじゃえ、消費しちゃえ。
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