しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

世界終末十億年前-異常な状況で発見された手記 アルカジィ&ボリス・ストルガッキー著 深見弾訳 群像社

2017-07-09 | 海外SF
本書は‘12年ローカス誌オールタイムベスト長編58位...と書きかけたのですが、発刊年等合わないので、あらためてローカス誌ベストの英語原題を見直したら58位は同じストルガッキー兄弟の作品でも“Hard to Be a God (1964)”邦題:「神様はつらい」であり本書ではありませんでした。
読んでいるときには58位に入ってる作品だと思っていました....。

この「神様はつらい」は世界SF全集の24巻に収録されているようですが現在入手困難なようでamazonで確認したら7,000円近くする….。

ということで本書はランクインはしていませんがローカス誌32位の「ストーカー」の作者である、ソ連(ロシアというべき?)のSF作家ストルガッキー兄弟の作品です。
ストルガッキー作品では同132位に“The Snail on the Slope”(邦題:そろそろ登れかたつむり-タイトルの原題は小林一茶の句が基らしい)がランクインしています

ローカス誌はもちろんアメリカの雑誌ですからランキングもアメリカ(英国)の作家が中心となっています。
そんななか旧ソ連の作家であるストルガッキー兄弟の作品がベスト100に2作、ベスト全体で3作ランクインしているのはアメリカ(だけでなく?国際的に)で評価が高い作家なんでしょうね。

解説などを読むとなにせ旧ソ連ですから自由に創作するのも難しかったようで著作が発禁処分になったりといろいろ苦労があったようです。
本書のタイトルにもありますが“異常な状態”だったわけでその中で

ということで勘違いで入手した本書ですが、まぁこれも縁ということで。
絶版だったのでamazonで古本を入手しました。

1977年発刊です。

内容紹介(amazonn記載-Bookデータベースより)
画期的な研究の完成を目前にした科学者たちの前に次々と現われる奇妙な訪問者とは誰か?映画「ストーカー」の原作者ストルガツキイが描く世紀末のファンタスチカ。


とりあえずの感想としては、「安部公房的」。
初期の安部公房の「人間そっくり」などに味わいがよく似ているような気がしました。
(ずいぶん前に読んだのでかなり怪しいですが)

そういえば安部公房作品は旧ソ連で紹介され評価が高かったようです。
兄のアルカジィは日本文学研究者で阿部公房の「第四間氷期」を訳しているようですし影響あったんですかねぇ。

作品の舞台はほぼ主人公の天文学者マリャーノフの部屋とたまに同じアパートメントの違うフロアに住む主人公の友人の科学者たちの部屋に行くのみと限定されており派手なアクションなどは皆無です。

あれこれ妨害される男性科学者たちの困惑ぶりと最後のあきらめ感がコミカルといえばコミカルなのですが…現代日本のサラリーマン的でもあり身につまされます。

マリャーノフの部屋に「妻の友人」として訪れる美女や技師グーバリのところに訪れる女性たち・子供などの非人間的な異質感はレムの「ソラリス」で現れた妨害者たちと通じるところもあります。

「ソラリス」の場合と違って、異星で会うわけではなく「自分の部屋」ですから叩き殺すわけにもいかず...のイライラ感もコミカルです。

そんなこんなの一見小さな話が地球・宇宙規模の大きな話につながっていくのですが「なにやら超越的な意思が人類・文明の進歩に関与している?」というアイディア自体はありがちではあります。
(直近読んだものとしてはアシモフの「夜来たる」収載の「人間培養中」もその手のテーマです)

その辺ラストでどう処理するのかなぁ...と思っていたのですが数学者のヴェチェローフスキイがすべて引き受けてシャンシャンという安易といえば安易なラストでした。

オヤジ連中のがやがや感と地球・宇宙規模の問題に対しての、マリャーノフたち天才科学者たちの小市民的な悩みのギャップ、なんとも迂遠な妨害とのギャップなど旧ソ連の体制を批判しているともとれるような不条理感の味わいを楽しむ作品かと思います。

「ライト」かつ「ちょっと古いかなぁ」とは思いますが分量的にも薄めですのでアメリカSFとは一味違世界を楽しめました。

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