しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ストーカー アルカジィ&ボリス・ストルガッキー著 深見弾訳 ハヤカワ文庫

2016-03-26 | 海外SF
本書が昨年(2015年)年読了した最後の本となりました。
‘12年ローカス誌オールタイムベスト32位、1972年刊(77年、80年改訂)刊行。
長らく絶版となっていたようですが2014年に一部改訳され刊行されようです。

‘15年の読書を振り返るなかで、「'12年ローカス誌オールタイムベストどれくらいよんだかなぁ」と見返して本作を読むと33位まで完読となることを発見したためアマゾンで新品を入手しました。

本書とは関係ないですが、'12年ローカス誌ベスト作品、3年越しで「まぁそれなりに読んだものだ...」としばし感慨にふけりました。

(上の画像青塗りが読了済です。)

34位の「Stand On Zanzibar」は未訳のため、私には読めないので(汗)抜かすとして...。
この後も順次読んでいくつもりです。
(「Stand on Zanzibar」は1969年のヒューゴー賞受賞作品ですが、日本の翻訳家の評判悪く未訳のようです)

著者のストルガッキー兄弟はソビエト時代のロシアのSF作家。
本作は「惑星ソラリス」を監督したタルコフスキーによる映画作品、また作品世界を表現したゲームでも有名なようです。

内容(裏表紙記載)
何が起こるか予測のできない謎の領域、ゾーン。地球を訪れ、地球人と接触することなく去っていった異星の超文明の痕跡である。その研究が進められる中、ゾーンに不法侵入し、異星文明が残した物品を命がけで持ちだす者たち“ストーカー"が現われた。その一人のレドリックが案内するゾーンの実体とは? 異星文明が来訪したその目的とは? ロシアSFの巨星が迫力ある筆致で描く、ファースト・コンタクト・テーマの傑作


上記にもあるとおりファーストコンタクトの名作とされているようですが、実際に異星人とは遭遇しません。
異星人が(ではないかもしれないですが)残した「領域」=「ゾーン」をめぐる事件・人々を描いた作品です。
原題を直訳すると「路傍のピクニック」のようで、ピクニックした後残されたゴミやらなにやらはそこにいるアリにとってどう見えるか?
という発想のようです。

形式的には時系列的につながった4つの短編から出来上がっています。
構成
・ワレンチン・ビルマン博士が19××年度ノーベル物理学賞を受賞した際、ハーモント放送局の特派員がおこなったインタビューからの抜粋
1.レドリック・シュハルト。23歳。独身。国際地球外文化研究所ハーモント支所所属実験助手
2.レドリック・ショハルト。28歳。既婚。職業不定
3.リチャード・H・ヌーナン。51歳。国際地球外文化研究所ハーモント支所勤務。電子機器納入業者検査官
4.レドリック・シュハルト。31歳
ゾーンに入り込み、法や危険をおかしながらお宝をかすめる「ストーカー」なる人物「シュハルト」が主人公といえる人物。

ゾーンに入ってのチリチリした緊張感の中での活動の描写が見事ですが、シュハルトの心情が歳を重ね、家族もできていくなかで変化していくのも趣深かったです。

31歳の妻と子供をもったシュハルトと23歳の怖いもの・守るもののなにもないシュハルトでは同じ価値観ではあるのですが...別人のようになっています。
31歳のシュハルトの方が強い面もあり、弱い面もある、成長なのか退歩なのか...。

そんな31歳のシュハルトが「なんともならない状況」ラストで家族のための希望を探し求める姿...切ないです。

いろいろ考えさせられる作品でした。

ロシア、東欧のSFはアメリカの「娯楽」的位置づけでなくより文学な方向で進化したんですね。
「ストーカー」の危険をおかすストイックな無法者的描写はのちのサイバー・パンクにも影響を与えているのかもしれませんね。

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