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ニッポンのゆる~い日常

海保法改正で「偽装漁民」撃退を

2014-06-24 18:51:38 | 正論より
6月24日付   産経新聞【正論】より


海保法改正で「偽装漁民」撃退を   東海大学教授・山田吉彦氏

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140624/plc14062403100005-n1.htm


 中国海警局の警備船による尖閣諸島周辺のわが国領海内への侵入が半ば常態化している。海上保安庁は巡視船の数を増やし対処しているが、領土が脅かされる状況は一段と深刻化している。

 政府は集団的自衛権の行使容認と併せ、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対応についても議論を進めている。



 ≪尖閣への大量上陸警戒せよ≫


 政府が公表した安保法制の閣議決定案では、離島防衛で警察力が直ちに対応できない場合、手続きを経ているうちに被害が拡大しないように、早期に命令を下し手続きを迅速化する方策を具体的に検討することとしている。

 これは、漁民に偽装した中国の特殊部隊や「海上民兵」が、離島に不法上陸した場合を想定したものである。それらが重武装していて、海上保安庁の装備と能力を超えている場合に備え、自衛隊の迅速な出動を可能にする態勢を整備しておこうというのだ。

 だが、離島に他国の重武装集団が上陸するという想定は現実的ではない。重装備だと、乗り込む船舶は速度も遅くなり、事前にレーダーなどで捕捉でき、海上警備行動を発令してから自衛隊が対応することも可能だからだ。


 むしろ警戒すべきは大量の漁民の上陸である。尖閣を脅かしている中国は、南シナ海では漁民を尖兵(せんぺい)として送り込み、支配海域を拡大する戦略をとってきた。フィリピンが管轄権を唱えているミスチーフ礁やスカボロー礁に対し、中国の漁民を保護するとの名目で進出し、支配海域に組み入れてきたのが、その好例である。


 この5月には、ベトナムが自国の排他的経済水域(EEZ)と主張しているパラセル(中国名・西沙)諸島の海域に、巨大な施設を持ち込んで、一方的に海底油田の掘削を始めた。中国による実効支配がこれ以上進むことを案じたベトナムは艦船を派遣し、中国側に掘削作業の停止と退去を求めた。中国はしかし、掘削施設と作業員の保護を名分に、中国海警局の警備船と軍艦を派遣し、ベトナムに圧力をかけ、以来、中越双方の衝突と対峙(たいじ)が続いている。





 ≪中国は海警で警察権を拡充≫


 自国民の保護を口実に進出し、武力を背景に実効支配態勢を確立する。そして、あたかも歴史的に中国が支配してきたかのように喧伝(けんでん)して、既成事実を作り上げる。中国の常套(じょうとう)手段である。

 数百隻の漁船が日本の領海内に押し寄せて、離島への上陸を試みた場合、洋上でそれを完全に阻止することは不可能だ。漁民たちは中国当局の指示の下に上陸した後は、得意の「人海戦術」で島を占拠するだろう。小火器や刀剣を用いてのゲリラ戦で抵抗することも想定される。こうした場合に、現行の海上保安庁法で対処できるかどうか甚だ疑問である。


 海洋進出に際して、海洋警備機関である中国海警局を前面に押し出しているのも巧妙だ。


 1992年に制定した領海法によって、東シナ海、南シナ海のほぼ全域の島々を自国の領土と勝手に決定した中国は、この国内法を盾に警察権を打ち立てて支配海域の拡大を目論(もくろ)んでいる。



 軍事的に行動しているという国際的な非難をかわすため、法制度の整備を行い、警察権の執行機関を軍並みに充実させてきた。中国海軍が出てこない以上、自衛隊が対処することは難しい。

 国連海洋法条約では、軍艦や非商業目的で運航する他の政府船舶である「公船」は、沿岸国の法執行権が及ばないとされている。前述の中越紛争では、中国の警備船がベトナムの警備船に体当たりするという、実力行使による法の執行に出た。これは、海上警察機関同士が直接ぶつかり合う「戦争」の新たな形態といえる。




 ≪25条変え行動できる態勢に≫


 海上保安庁法には、「海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」(第25条)との規定がある。だが、中国の海洋進出攻勢をはじめとする今の東アジアの安全保障環境は、海保の能力も相応の水準に引き上げざるを得ないようなありさまだ。「グレーゾーン事態」に効果的に対処するには、海保が行動しやすい法整備が必須なのである。

 防衛出動などが発令された場合、海上保安庁は防衛大臣の指揮下に入ることになる。ただし、海保は後方支援をすることしかできない。海上保安庁法第25条が現行のままでは、日本の海域を守るためには欠くべからざる、海保と海上自衛隊の本質的な連携ができないのだ。

 今後、海保が海賊対処行動や国連平和維持活動(PKO)を行うに当たり、業務を遂行し海上保安官が自らの安全を守るためにも、25条の改正は避けて通れないと考える。日本が自国防衛、国際貢献の両面で責務を果たしていくためには、海保も必要な能力を持たなければならない。米沿岸警備隊などがその参考になろう。

 海上の安全を守る態勢は大きな変革の時を迎えている。(やまだ よしひこ)









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「米中安保」の現実を直視せよ アメリカの傘の下から脱し、自主防衛に舵を切れ

2014-06-13 17:32:13 | 日本
歴史教科書は子供たちに「卑劣な日本人像」を刷り込んでいる

「米中安保」の現実を直視せよ アメリカの傘の下から脱し、自主防衛に舵を切れ

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20140612-01/1.htm


 今年4月に来日した米国・オバマ大統領は「尖閣諸島は日本の施政権下にあり、日米安全保障条約第5条の適用範囲にある」と言明した。しかし、財団法人「ディフェンスリサーチセンター」専務理事の杉山徹宗・明海大学名誉教授は「中国に軸足をシフトさせつつある米国には日本を守る意思も覚悟もない」と警鐘を鳴らす。


21世紀に入り、アフガンやイラク戦争で財政が悪化した米国は国防費の大幅削減を強いられ、「世界の警察官」から「地域の警察官」へと規模を縮小しつつある。一方の中国は、米国との経済関係を緊密化しながら「A2/AD」(米軍の接近阻止・領域侵入拒否)と呼ばれる海洋軍事戦略を着々と推進してきた。2025年までに原子力空母6隻、原潜20隻を配備し、米軍に東アジア防衛を諦めさせるのが狙いで、将来的に米国と太平洋を分割支配することを画策している。そうなれば、中国は「米中安保」を呼びかける可能性が極めて高く、米国も中国との同盟関係を模索せざるを得なくなるだろう。


 かつて米国は中国を「戦略的コンペティター(競争者)」と呼び、同国の軍事膨張に警戒の目を光らせていた。ところが現在では中国を「ステーク・ホルダー(利益共有者)」に格上げし、まるで同盟国のように扱っている。


 昨年4月に初訪中したケリー国務長官は「米中という世界最強の2か国が国際社会の隅々まで目配りすれば相乗効果が生まれる」と述べ、中国要人から喝采を浴びた。近い将来を見据え、「今から米中両国で世界を仕切っていこう」というメッセージを中国側に発信したのである。


 そもそも米中は基本的に過去100年に亘って友好関係を保っており、朝鮮戦争やベトナム戦争はあっても直接干戈を交えたことはない。米国は「日米安保」の建前上、尖閣を巡る中国側の動きを牽制しているが、軍事対決するつもりなど毛頭ないのだ。



 尖閣や竹島問題以来、米国では中韓の反日政策を支持する動きが強まっている。米政府が靖国や従軍慰安婦問題で中韓と歴史認識の歩調を合わせているのは、日米戦争における自国の不都合を隠蔽し、日本の台頭を封じ込めるのに好都合だからだ。戦前から今日に至るまでの謀略史を紐解けば、米国が基本的に中韓と同じスタンスの対日感情を有していることが理解できる。


 米国は過去の日米戦争における真珠湾奇襲攻撃や特攻隊の玉砕などを「非人道的行為」として批判し続けてきたが、自分たちが行なった原爆投下や日本本土への無差別爆撃に関しては一切口を閉ざしたままだ。


 それどころか多くの米国人は、「日本が卑怯な奇襲攻撃をしたのだから、米軍による非人道的行為は当然許されるべき」と考えている。一般人だけではなく、政治家や対外政策を立案するオピニオン・リーダー、有識者と呼ばれる人々も同様だ。01年9月11日の米・同時多発テロを受け、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が「これは戦争だ。真珠湾を奇襲した日本海軍を思い起こす」と述べたことがそれを物語っている。



●慰安婦問題で日本をスケープゴートに


 1941年12月7日の真珠湾攻撃で日本海軍機動部隊は20隻以上の米軍艦船を大破撃沈し、米陸軍航空部隊と海軍などの航空機188機を破壊した。日本海軍の攻撃で死亡した米国人は民間人を含め約2300人に上る。


 第2次世界大戦初期から対日開戦の道を模索していたルーズベルトはこれを絶好の参戦機会と捉え、「真珠湾への騙し打ち」「スニーキーアタック(ずる賢い攻撃)」「ジャップ」といった言葉を繰り返し、厭戦ムードにあった米国民の対日憎悪を一気に燃え盛らせた。現在でも米国の歴史教科書には、「日本軍の奇襲により戦端が開かれた」と記述され、いまなお多くの米国人に「卑劣な日本人」像が刷り込まれている。


 だが、真珠湾攻撃がルーズベルトによる「謀略」だったことは明白だ。10年に米・ウィスコンシン大学外交文書図書館で発見された公電がそれを裏付けている。

 公電は1941年1月25日、東京に駐在していたジョセフ・グルー駐日大使がコーデル・ハル国務長官に宛てたもので「日米関係が縺れた場合、日本海軍は総力を挙げて真珠湾を奇襲攻撃するという驚くべき情報を得た」という内容だ。米国側は情報を元に、太平洋周囲に配置した25か所の通信傍受施設と暗号電報解読技術を駆使して奇襲攻撃の概要を正確に掴んでいたはずだが、ルーズベルトは対日開戦の端緒とするためこれをあえて聞き流した。被害が想像以上に甚大だったのは、白人優越主義から日本海軍の実力を侮っていたルーズベルトの誤算である。



 ルーズベルト政権が真珠湾攻撃以前から対日開戦の謀略を巡らせていたことは数々の史料から判明している。91年3月には、米国と中国国民党が練り上げた「日本空爆」の作戦計画書が米・国立公文書館で発見された。この計画は、中国軍機に偽装した計300機の米軍機が日本列島を空爆するもので、ルーズベルトは41年7月23日に許可の署名をしている。その2日後には在米の日本資産が凍結され、8月1日には石油の対日輸出が全面禁止された。


 空爆計画は航空機の航続距離の問題などから頓挫したが、こうした事実を見れば、日本は「ハル・ノート」を突きつけられる以前から開戦を余儀なくされていたことが理解できるだろう。



 戦後の東京裁判で判事を務めたインド代表のラダ・ビノード・パール氏は、「欧米諸国は日本が侵略戦争を行なったと非難することで、自らのアジア侵略の正当性を誇示するとともに、日本のアジアにおける17年間のすべてを『罪悪』であったと烙印することが目的であった」とし、「欧米こそが憎むべきアジア侵略の張本人だった」と喝破した。



 慰安婦問題も同様だ。かつて筆者が第2次世界大戦を経験した退役米兵に慰安婦問題について意見を求めると、彼らは平然とこう言い放った。

「慰安婦は日本だけでなく米軍をはじめとする欧米の軍隊にもあったし、恐らく中国軍にもあった。金銭で女性を集めた国もあれば、強制的に集めた国もあったはずだ」


 では、なぜ彼らはその事実を米国のメディアに伝えようとしないのか。改めて問うと、退役米兵の1人は苦笑いしながら答えた。

「そんなことできるはずがない。事実を明かせば全米の幸せな家庭は崩壊してしまう」



 呆れたものである。戦後、日本を占領統治したGHQがまず日本政府に求めたのは米軍人のための「慰安所」設置だった。米国はそうした事実を一切明かさず、慰安婦問題で日本をスケープゴートにしてきたのだ。




 日本は名誉回復のためにもこうした米国の謀略や欺瞞を国際社会に強く訴え、判断を仰ぐ必要がある。




●守ってくれない日米安保よりも自主防衛の道を


 米国の対日基本政策は「日本の封じ込め」にあり、戦後70年近く経った現在も日本を「敵国」と見做していることに変わりはない。日米同盟を押しつけ在日米軍を駐留させ続けているのは、日本列島が戦略的に不可欠という理由だけではなく、依然として日本に強い警戒心を抱き続けているためだ。米国には「日本に軍事力を持たせれば強力な軍隊を復活させ、核兵器を保有して復讐するのではないか」という潜在的恐怖心がある。


 そうした対日認識は米歴代政権に受け継がれてきた。米中が国交回復交渉を行なった71年、ニクソン大統領の特使として訪中したキッシンジャー大統領補佐官は、周恩来首相と「日本が独立した外交・軍事政策を行なう国になることを阻止する。日本には核戦力を持たせない」とする密約を結んだ。また、80年代に沖縄の海兵隊司令官だったヘンリー・スタックポール中将は、中国要人から日米同盟の脅威を指摘されると「米軍駐留は日本が軍事大国化しないための『瓶のフタ』の役割をしている」と述べて中国側の疑念を払拭した。米国と中国は折に触れ「日本に自主防衛をさせないこと」を確認し合ってきたのである。



 多くの日本人は「日米同盟さえあれば日本は安泰」と考えているが、甘いと言わざるを得ない。米国は「瓶のフタ」が外れないように一定の軍事力は日本に残しつつ、不足分を日本に補わせる戦略をとっているのが実情である。


 すでに米国は中国が早晩グアムまでの太平洋に進出することを既定のことと認識している。そうなれば日本は中国から軍事的圧力を受けることになる。日本に求められているのは米軍依存からの脱却であり、自主防衛だ。中国は通常兵器の分野においても既に日本の数倍の戦力を保持しているうえ、核も保有している。


 もちろん、日本が核武装すれば国際社会から非難と経済制裁を受ける可能性があるだけでなく、「予防措置」として中国から核開発施設を攻撃されることが考えられる。米国にとっても日本の核開発は脅威となるため、これを是認せざるを得なくなるだろう。



 では、核武装が現実的選択肢でないとしたら、日本はどう自主防衛を実現すべきか。


 筆者は中国や北朝鮮の核弾道ミサイルを完全にシャットアウトする「レーザー砲」の自主開発を推進すべきと提言している。SFの世界のように思われるかもしれないが、既に米国では実証試験が繰り返され、韓国でさえもイスラエルの支援で50m先の標的を破壊することに成功している。将来的には「ノドンを撃ち落とす」と鼻息も荒い。


 現在、弾道ミサイルの迎撃にはMD(ミサイル・ディフェンス)が運用されているが、迎撃率は50%程度だ。秒速3万kmで飛翔する弾道ミサイルをPAC-3ミサイルで撃ち落とすことは容易ではない。


 一方、自由電子レーザーやフッ化クリプトンレーザーは水平照射すれば5000km先まで光を収束させたまま到達する特性を持ち、光速と同じ秒速33万kmの速度で確実に弾道ミサイルを迎撃することができる。世界の最先端を走る日本の民生用レーザー技術を活用すれば、遅くとも10年以内にMDに代わる世界最強のレーザー砲が完成するだろう。運用には早期警戒衛星と「Xバンドレーダー」の装備が不可欠だが、これも2~3年あれば国産化は可能だ。

 仮に日本が射程500kmの長距離レーザー砲を開発し、全国15か所ほどの自衛隊駐屯地に配備すれば、日本列島をすべてカバーできる。米軍なしでも確実に国家の安全保障を達成できるのだ。

(SAPIO 2014年7月号掲載) 2014年6月12日(木)配信

文=(財)ディフェンスリサーチセンター専務理事・杉山徹宗

















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