つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

復権めざして

2006-10-29 01:33:21 | ファンタジー(異世界)
さて、ここ最近ミステリ/ホラーに押されっぱなしだよなの第698回は、

タイトル:狼と香辛料2
著者:支倉凍砂
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H18)

であります。

今月に3巻が出てるなぁと思って買ったのはいいけど、そういえば2巻を読んでいなかったことに気付いていまさら読了。
タイトルどおり、デビュー作でもある前作の「狼と香辛料」の続編で、25歳の若き行商人ロレンスと、ひょんなことから旅の連れとなった豊作の神である賢狼ホロの、行商の旅を描いた物語。

前作の舞台である港町パッツィオでの出来事で手に入れた胡椒を手に、ポロソンという町を訪れたふたり。
ここで店を構えるラトペアロン商会に胡椒を持ち込み、商談を進め、成立、となるところにホロが胡椒を量る秤……ではなく、秤を乗せるテーブルに細工をしていることを見破る。

そのことを突いてロレンスはラトペアロン商会から大きな取引を仕掛け、北の教会都市リュビンハイゲンへと向かう。
利率は低いが安全な武具の取引……のはずだったが、そこでロレンスは思いも寄らない不渡りを出し、多額の借金を背負ってしまうことに。
商人生命どころではないかもしれない手痛い失敗に、ホロはひとつの案を持ちかける。

印象としては前作よりも全体的にレベルアップの跡が窺える。
ライトノベルにしては主人公が商人、ホロは手よりも知恵を出す立ち位置なので、派手な戦闘シーンなどはなく、全体的にテンポは穏やか。
ストーリーも、不渡りを出したロレンスが起死回生の手を打つものではあるけれど、どちらかと言うとそれよりも、そうした話の中で、ロレンスとホロの関係を中心に描いているため、盛り上がりに乏しい。
とは言え、こうしたところはキャラ設定からも仕方がない部分ではあろうし、それで作品のクオリティが下がっているか、と言えばそうでもない。

文章的にも前作に見られた欠点も少なくなり、読み進める苦労は少ないが、商談や取引などにまつわる商人らしい部分の説明には、やはりまだわかりやすい描写と言うものが求められる。

それにしても、この2巻に至ってホロの魅力全開やね(笑)
見た目は耳と尻尾があるだけの15歳前後の少女だが、実際は数百年を生きる神狼。
……なのだが、若いロレンスをからかったり、老獪さを見せたり、少女らしいかわいらしさを見せたり、単に食いしん坊だったり、怒ったりと様々な姿が描かれている。
まぁ、ちと甘いシーンがいくつかあったりと、ベタなところがないわけでないが、そんなホロとロレンスの関係や会話は楽しめる要素であろう。

ただ、ラストのほうがいまいちなところがあるため、総評としては手放しでオススメというわけにはいかない。
まぁ、前作よりも読み応えは出ているし、欠点は少なくなっているので、評点の甘いライトノベルということを差し引いても、十分及第だろう。



――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『狼と香辛料』のまとめページへ
 ◇ 『ライトノベル一覧表(その1)』へ
 ◆ 『つれづれ総合案内所』へ