つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

紅蝙蝠の方が格好いいと思うが……

2006-10-16 23:27:10 | ファンタジー(現世界)
さて、違う文庫なら評価が変わった……とは思えない第685回は、

タイトル:はじまりは青い月 <スカーレット・パラソル1>
著者:新庄節美
出版社:東京創元社 創元推理文庫(初版:H16 単行本初版:H2)

であります。

お初の作家さんです。
買った後で激しく後悔しました……理由は後述。



彼女の名は阿藤愛梨、スポーツ万能の高校二年生にして――怪盗。

愛梨は今、初仕事の下見に来ている。
狙うは、中に三日月を宿したブルーダイヤ『カリマンタンの青い月』。
もっともそれは、本来の所有者から騙し取った盗品だ、罪悪感は微塵もない。

つい先日、愛梨のおばあ様こと『怪盗・紅蝙蝠』に一通の手紙が届いた。
差出人はブルネア国の王子ムアラ、依頼は盗まれた『カリマンタンの青い月』の奪還。
愛梨は紅蝙蝠の後継ぎとして、おばあ様と二人で仕事に挑むことになった。

だが、世の中はそう上手くいかない。
久々の仕事に張り切るおばあ様が、不慮の事故で入院してしまったのだ。
一人になってしまった愛梨は、おばあ様抜きの一発勝負に出る。

彼女の名は阿藤愛梨、またの名を――スカーレット・パラソル!



三百年の伝統なぞ知るかっ!

とまあ、自己中でロマンチストなおばあ様への文句は置いといて。
どこを褒めていいのやら、さっぱり解らない作品に当たってしまいました。
歳のせいだとは思いたくないけど、これ、子供に受けたのかなぁ……。
(理由は後述、ってまだ引っ張るか、私)

二代目怪盗の愛梨と、そのライバル(?)である二代目探偵の武市六平の一人称で書かれた怪盗物です。
どちらの主人公も地の文で喋りまくります。しかも、一行一段落、擬音使いまくりで。
ラスト近くで煙幕を使うシーンなどは、『こわれている?(改行)どうしよう!(改行)その時だ。(改行)ボッ(改行)シュー(改行――以下、ウザイので略)』という有様。

舐めてるのか、をい。

一番引っかかったのは、登場人物の外見比喩に映画俳優を使っていること。
主人公が映画好きだから、ってことらしいですが、映画好きなのは主人公じゃなくて作者だろ。
別に映画が嫌いなわけじゃありませんが、小説で人物を描写する時に、『現実の××に似ている』とか言って済ますのは、ただのサボリだと思います。自分の言葉で説明しろ、自分の言葉でっ! さらに言うと、ここに出てくる俳優が通じる子供が何人いるんだ? いくら十六年前だからって、キャサリン・ヘプバーンやエロール・フリンがあっさり通じる子供なんてそうそういないぞ。自己満足に浸ってんじゃねぇよっ!


(暴走中……しばらくお待ち下さい)


すいません、取り乱しました。
子供という単語を連発したのでお解りかもしれませんが、これ、本来は児童書です。
創元推理文庫に入れられた経緯は不明ですが……編集部になにか悪いモノでも降りたんでしょうか?

話の筋も、よく言えば素直、悪く言えば安直。
怪盗対探偵の息詰まる攻防などはなく……あるのは善人同士の馴れ合いだけ。
深~く考えると、シンデレラ・ストーリーだし。(ああっ、寒気がっ!)

うーん……児童書だと割り切ってもアラが目立ちます、読まない方が吉。
極甘のラブコメを凄まじく軽い文体で読みたい、という方限定で、どうぞ。
でも、ドラマにしたら受けそうでちょっと怖い……。



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