つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

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続きはこちらに書いちゃいますねん♪ ~つれづれ号外~

2012-10-28 01:28:47 | つれづれ号外
読んでみましたけどマンガじゃないのよの号外拾参回目は――

タイトル:茨姫はたたかう
著者:近藤史恵
出版社:祥伝社 祥伝社文庫(初版:'00)

であります。

前作「カナリヤは眠れない」がミステリっぽくなくて、どっちかって言うと成長物語だったので、個人的によかったので続きとなる本作を読んでみた。

本作は前作よりもミステリ度2、3割増し、って感じかなぁ。
煽り文句ではサイコ・ミステリらしいのだが、ストーカーを扱ったミステリっぽい話、って感じでやっぱりミステリっぽくない(笑)

主人公は臆病な性格の書店員、梨花子が弟のできちゃった婚で家を出るハメになり、ひとり暮らしを始めるところから始まる。
陰気なマンションの管理人や、ずけずけとものを言うひとりと、天衣無縫でホステスをしている隣人たちに最初は嫌悪感を抱くものの、最終的には探偵役でもある整体師の合田力の助言を得て、力やローカル雑誌の編集部に在籍している雄大など、男性陣とともにストーカー退治に挑む、と言うもの。

2、3割増し、と言うだけあって、いちおうストーカーは誰なのか? と言う謎は提示されているものの、やっぱりそれよりも梨花子が自分を克服すると言うほうに主眼が置かれている感じ。
ただ、あれだけ臆病なほど慎重に生きてきた梨花子が、力の助言だけでストーカーに立ち向かう――もちろん、力や雄大の手助けもあるが――ようになるのは、ちょっと唐突に過ぎる感じがある。

ここだけがちょっと残念かなー。
それ以外は前作同様、梨花子と雄大の視点が交互に描かれ、雄大の視点では合田接骨院で働く歩との関係も描かれていて、けっこうこのふたりの今後は気になる(笑)

どうやら次の「シェルター」でこのシリーズ、完結らしいので読んでみようとは思ってる。
フレによると前作と本作よりも劣る、と言うことだったのだけど、3巻完結で手に取りやすいし、ミステリよりも人間に重きを置いた作風は私の好みとも合うのでね。

と言うわけで、唐突感はあるものの、全体的にまぁよかったかな。
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いちおうミステリだけど……

2012-09-25 19:28:40 | ミステリ
さて、フレに紹介してもらったのよの第1026回は、

タイトル:カナリヤは眠れない
著者:近藤史恵
出版社:祥伝社 祥伝社文庫(初版:'99)

であります。

探偵役の整体師がかっこいいのだそうです(笑)
薦めてくれたフレの言葉ですが、どんなふうにかっこいいのか、けっこう興味津々で読んでみましたが、さてどうなることやら……。

ストーリーは、

『「私」はまたやってしまった。
深いブルーグレーのワンピース――九万八千円。袖を通し、試着してしまったばかりにまた高いお金を使ってしまった。
しかもそれを買うためのカードは夫が作ってくれたもの。
レストランなどをいくつも経営している夫はカードの明細書になんか目を通さない。
それをいいことに何か――それは義母の訪問によるお節介だったり――があると、つい衝動的に買ってしまう。

「私」には前科があった。
大学を出て、就職してからのことだった。地元から出て、地元のデパートの数倍もあるようなデパートでカードを作ったことが原因だった。
カードならば月々いくらで買えてしまう。垢抜けた同僚に近づこうとカードを切り、カードの払いができなくなると消費者金融に走った。
気付くと四〇〇万以上の借金を背負ってしまい、返せなくなった「私」は親に泣きつくしかなく、親も「私」を叱り飛ばしながらも土地を売ってまで借金を返してくれた。

それからは地元に戻り、小さな会社で事務の仕事をしながら平穏な暮らしをしていた。
そこへ現れたのが、今の夫だった。些細な親切がきっかけで見合いを申し込まれ、何回か付き合ってみるうちに、その優しさに触れて結婚して、些細な不満はあるものの、幸せな結婚生活を送っていると思っていた。

一方、「週間関西オリジナル」の編集部の小松崎雄大は、寝違えたらしく、首が回らないほどの痛みだったが、出社。
そこで編集長に女性の買い物についての記事を書くように命じられる。
編集部で一番若いから女友達のつてでも辿って買い物依存症のような女性を見つけてこいと編集部を追い出された雄大は、路上で一人の女性とぶつかり、寝違えた首とも相俟って激しい痛みにしゃがみ込んでしまう。
それを女性は自分のせいだと勘違いしたものの、雄大の説得で納得した女性は、雄大を自分が勤めている合田接骨院という場所に連れて行く。

そこで営業していたのは、合田力という整体師で、商売っ気のない変わり者の整体師だった。
だが、腕は確かなようでたちまちのうちに雄大を治療してしまった。
その後、合田接骨院を紹介してもらったお礼も兼ねて顔を出すうちに、ちょくちょく通うようになった雄大は、ある日、ブランド物のバッグをたくさん抱えた女生と待合室で出会う。
出張治療に出かけていると言う力を待つ間に、その女性の問診票からその女性が墨田茜という名前だと知った雄大。
そして戻ってきた力は、先に来ていたはずの雄大を後目に、後から来た茜のほうを先に診察してしまう。

その後に診察を受けた雄大は、力から茜のほうを先にしてしまった理由の一端を聞かされる……』

読後の第一印象は「ミステリの名を借りた茜の成長物語」でした。
いちおう、読了後には「あぁ、ミステリっぽいなぁ」とは思いましたが、どちらかと言うと「私」こと茜が「自分」というものに目覚める過程に力点が置かれている感じで、ミステリっぽいと言うだけで、あんまりミステリという感じは受けませんでした。
とは言え、ミステリ作家らしいので、ミステリには分類しましたが。

さて、ストーリーですが、買い物依存症にかかってしまった「私」こと茜の導入部に始まり、雑誌記者の雄大が整体師の合田力と出会う下り、そして合田接骨院を訪れた茜を診た力が見てしまった茜の病理、それを治療しようとする力と茜のやりとり、そして茜にとって自分を取り戻す契機となる少年との出会いなどを経て、唯一のミステリらしい部分である自殺を装った殺人計画と茜の成長を描いていきます。
ちょっと力と雄大の関係が何故必要だったのかに違和感を覚えますが、主眼を茜の成長として見た場合にはよく描かれた作品だと思います。
茜の成長のキーパーソンとなる少年との出会いやそれからの茜との関係などもうまく描かれていて、女性作家らしい細やかな描写は好感が持てます。

文章は女性作家にしては淡泊なほうですが、茜の心理描写などは過不足なく描かれていて情報不足に陥ることはありません。
ただ、ミステリとして見た場合にはどうでしょうか。
序盤から中盤にかけてミステリらしい文脈が見当たらないので、ミステリとして手に取る方にとっては物足りないかもしれません。
解説文には「現代病理をミステリアスに描く」とあり、確かにミステリアスな部分はありますが、あくまでミステリアスであってミステリと言うには弱いでしょう。

次いでキャラですが、キャラはしっかりしています。
変わり者の整体師である力に雑誌記者の雄大、茜と同じく現代的な病理を抱えた合田接骨院の受付を担当する美人姉妹、そして物語の中心である茜――特に茜に関しては淡泊ながらも過不足のない心理描写で成長していく過程を楽しむことができます。
ところで、薦めてくれたフレの「かっこいい」力先生ですが……どうなんでしょうね?(笑)
終盤、茜を救うために自転車こいで奔走する力の姿が描かれますが……かっこいいんでしょうかねぇ。
まぁ、キャラの好みは人それぞれだとは思いますので、こういうキャラがかっこよく見える方もいるのだとは思いますが、私はさしてそういう印象は受けませんでした。

ただ、第一印象でも触れましたが、ミステリとしてではなく、茜の成長物語として読むのであればけっこうおもしろく読める作品ではないかと思います。
ミステリを期待するとあまりオススメはしませんが、そうでなければ手に取ってみてもいいのではないでしょうか。
キャラも文章もストーリーも及第点ですが、力と雄大の関係が何故必要なのかわからないのと、ミステリとしては弱い、と言うところから総評としては良品をつけることはできないでしょう。

と言うわけで、総評、及第。
でもジャンルとしてはミステリに分類して人は死なないし、成長物語としてはうまく描かれているので、個人的には次も読んでみようかと思います。
次が本格的なミステリになるのか、はたまた本作のような人間を描いた作品になるのか、そして力と雄大の関係性をどう説明してくれるのか、気になるところはありますのでね。


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やはりこの流れに……^^;

2012-09-04 19:21:27 | ファンタジー(異世界)
さて、アニメ化される、またはされたことを知る→原作を読む、が定着してきたなぁの第1025回は、

タイトル:織田信奈の野望
著者:春日みかげ
出版社:ソフトバンク クリエイティブ GA文庫(初版:'09)

であります。

アニメ主体なのでどうしてもラノベばっかりになってしまって申し訳ないです。
いえ、ラノベ以外の普通の小説も読んでいるのですよ?
単に記事にしていないだけで。

まぁ、今は予約していたのが次々と借りれたのでラノベが続いていると思ってくださいな^^;

さておき、ストーリーは、

『戦国ゲームや戦国ネタが好きな普通の高校生相良良晴は、気がつくと何故か戦国時代の真っ直中にいた。
敵として認識され、攻撃されるもドッジボールで常人離れした「当たらない」能力を持つ良晴は何とか逃げ延び、とある本陣へ辿り着く。
そこは今川義元の本陣で……だが、決定的に違うところがあった。
今川義元が十二単を着た美少女だったことだ。

夢だと思っているとは言え、殺されそうになっている良晴は義元に家臣にしてくれと頼み込むが貴族趣味の義元はあっさり拒否。
逆に、家臣の松平元康(後の徳川家康)に殺されそうになる始末。
仕方なく、転がっていた槍を拾って応戦するも「避ける」こと以外にこれと言った能力も技能もない良晴にどうこうできるはずもなく……だが、そこへ織田軍に寝返ろうとしていた足軽が良晴を助けてくれたのだ。

その足軽は良晴を織田側の忍びと見て助けてくれたのだが、あいにくと良晴はそんな存在ではない。
だが、織田信長と言えば能力さえあれば足軽であろうと取り立ててくれる合理主義者。不埒な夢で意気投合した足軽――木下藤吉郎とともに織田領へと向かうが、その途中で藤吉郎は流れ弾に当たって死んでしまう。
木下藤吉郎――後の豊臣秀吉が死んでしまったことに愕然とする良晴の前に、藤吉郎の相方だと言う忍び風情の蜂須賀五右衛門と名乗る少女が現れ、死んだ藤吉郎との約束――ともにこの乱世で出世してみせる――を果たすため、ほんの短い時間、意気投合した藤吉郎の代わりに良晴に仕えると言ってくる。

とりあえず、何ができるかわからないが、織田家に仕官するため、織田軍の本陣へと向かう。
本陣は今川勢に囲まれていたが、五右衛門の助けもあり、信長を助けることに成功。
そして仕官を頼む良晴に下されたのは、「蹴り」だった。
曰く「わたしの名前は、織田信奈よ」』

さて、ストーリーだけど、何の脈絡もなく戦国時代に放り込まれた良晴が、信奈に仕官し、サルというあだ名をつけられ、現代の戦国ゲームなどで培ったそれなりに曖昧な知識をもとに、ツンデレでじゃじゃ馬な信奈と喧嘩しつつもサポートし、桶狭間の戦いで今川義元を討ち取るまでを描いたもの。
天下統一どころか、外国の宣教師から聞いた世界までを見据えた信奈に共感し、戦国時代の知識をもとに良晴が信奈をサポートし、困難を乗り越えていくのが基本的なストーリー展開。

まず言える印象としては、とてもテンポがいい、と言うこと。
はっきり言って、初っぱなから何の脈絡も――本当に何の理由付けもなく、戦国時代に飛ばされるという出だしに挫けそうになったけど、それさえ乗り切ってしまえば、このテンポの良さはかなりの好印象。
「トムとジェリー」ではないが(笑)、良晴と信奈の口げんかもテンポがいいし、他の戦闘シーンなどもこのテンポが落ちないのもいい。
ここまでテンポの良さを持続させられる小説は少ないのではないだろうか。
この点に関しては特筆に値する。

キャラは、まぁ、流行りの歴史上の人物を全員(じゃないけど)、美少女にしちゃいました系で特に見るところはない。
まぁ、それぞれの個性はしっかりしているほうなので、悪くはない、とだけ言っておこう。

あとは文章だが……半分以上が会話文で占められているのはいかがなものかと思う。
括弧付きの会話文だけではなく、地の文までキャラの台詞が入っているので、ほとんど会話文だけで成り立っているような印象を受けてしまう。
基本、良晴の視点で描かれるが、時々別の誰かの視点が唐突に入ってくるのもいただけない。
小説の文章と言うより、何かの脚本を読んでいるような感じがする。(脚本のほうがもっと簡潔できちんと状況説明されているかもしれないが、基本、台詞が主体という意味では脚本に近い印象がする)
まぁ、逆に言えばこの文章がテンポの良さを引き出していると思えば、悪くはないのかもしれないが……。

さて、総評だが、テンポの良さはかなりの好印象なのでいい点をあげたいところだが、結局は流行り物のひとつ。
キャラも個性はしっかりしているが特筆すべきところはないし、文章も地の文合わせて半分以上が会話文というのもどうかと思うので、良品の評価はあげられないなぁ。
なので及第とさせてもらうが、本当にテンポの良さだけは買う。
ハマれる人にはこのテンポの良さはさくさく読めていいと思うので、良品未満くらいの評価でオススメできるとは思う。
とりあえず、この1巻を読んでみて、テンポの良さにハマれば続きを買うのもいいだろう。

あ、ちなみに著者もあとがきで書いているが、時代考証などのアレンジや設定に現代風味が混じっているのはパラレルワールドなので勘弁してね(意訳)、と言っているので、そういうところにうるさい人には向かないだろう。


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すいません^^;

2012-08-22 20:23:04 | 恋愛小説
さて、だいぶん間隔が長くなってしまってすいませんの第1024回は、

タイトル:陽だまりの彼女
著者:越谷オサム
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:'11)

であります。

いや、本は読んでなかったわけではないのです。(なんか前にも言ったな、これ(爆))
今回は読んでいたのが、すでに記事になっている9Sシリーズだったりとかして、記事にならなかったんです^^;

で、ようやく予約の順番が回ってきた本書をようやく読了したので、記事にすることができました。
確か書店で見たときには「女子が男子に読ませたい」という帯の文句があって、それに興味を惹かれて図書館で予約したと思います。

さて、ストーリーは、

『僕――奥田浩介、鉄道関係の広告代理店に勤めるまだ二年目の平社員。
今日はいわゆる「お供の若手」として、近年成長著しいランジェリー・メーカー「ララ・オロール」の営業に上司にくっついてきていた。
だが、そこにいたのは中学時代の幼馴染み、渡来真緒とその上司だった。

中学時代、かわいいけれど、分数の計算もできない学年有数のバカだった真緒。
そのこともあってか、真緒はいじめられっ子だった。
だが、あることをきっかけに僕は真緒を助けることになり、またそれをきっかけにして僕と真緒は中学時代、浮いた存在としてクラスからも教師からも見られるようになっていた。
それは僕が中学三年のときに転校するまで続き、その間、僕は真緒に懐かれていて、よく勉強を教えてやっていたりしていた。

そんな真緒が十年ぶりに僕の前に現れたときには美人で、モテ系の出来る女へと変身していたのだ。
新規のクライアントとして「ララ・オロール」との交渉に挑む資料を作ったのは僕で、その資料にミスがあって、さらにはそれを真緒に指摘されてしまったのだ。
それがきっかけで交渉は真緒のペース。
中学時代とはまったく逆転してしまっていた。

けれど、仕事でのやりとりを続けていくうちに、真緒とのやりとりは次第に仕事絡みの他人行儀なやりとりから、次第にくだけたものに変わっていった。
そして仕事以外で会うことも多くなり、徐々に僕と真緒の距離は縮まっていく……』

すいません、あらすじが短いのはネタバレを防ぐためです。
あんまり長く書いてしまうとホントにネタバレになってしまって、どうしようもないのでこれくらいにしておきます。

さて、第一印象ですが、やはり男性の書く恋愛小説だなぁ、と言うところでした。
はっきり言って情趣にも雰囲気にも乏しく、世界観に浸れない作品で、読み進めるのにだいぶ苦労しました。

ストーリーは、僕こと浩介と真緒の甘々のラブストーリーです。
ここで断言しておきますが、さぶいぼ症候群の方は手を出さないほうがいいです。
ベタ甘です。
幸せオーラ満載です。
そういうのが苦手な人にはこの作品は無理でしょう。
私はまだ耐えられるほうなのでいいのですが、そうでなければ読み進めるのは無理だと思います。

さて、さぶいぼ症候群を発症しない方には、出来のいい恋愛小説である、といえるでしょう。
甘々な僕と真緒のやりとりや真緒の不可解な行動、些細な喧嘩と仲直りなど、恋愛小説の定番は揃っていますし、そんな中にラストに至る伏線が周到に張り巡らされていたりと、小説の構成としてはかなり出来がいい作品です。
ラストまで読んで、なるほど、あの日常の光景や過去話は伏線だったのかと、うまく作られた展開には素直に感心しました。
またタイトルと作品の内容とのマッチングもよく考えられているなぁ、と言う印象があります。

ストーリーは再会から付き合うようになり、そして駆け落ちまがいの結婚をしてのふたりの十ヶ月を描いたものです。
ラストは作品解説でも触れられていますが、私はハッピーエンドだと思っています。
確かに作品解説で語られているように浩介の今後を不安視する視点もありだとは思いますが、個人的には悲恋ものとは思えないので、ハッピーエンドでいいのではないでしょうか。

キャラはしっかりしています。
……が、平凡な浩介と、ラストで明かされる真緒の正体とその性格の関連性など、主人公ふたりはよくできています。
まぁ、ほとんどふたりだけの世界を作って構成されているので、脇役などはほんのスパイス程度です。強いてあげるなら真緒の養父母ですが、これも浩介の上司と言ったスパイス程度よりは出番が多いと言う程度のものなので、やっぱりスパイスの域を出ないでしょう。
もっとも、浩介と真緒ふたりの激甘ラブストーリーなので、さほど気にする必要はないでしょう。

文章も一貫して浩介の視点で描かれ、ブレがないのが好感が持てます。
読みづらい点もありませんし、章立ての最後に語られる浩介の一言などにくすりとさせられる場面もあるでしょう。(私はさしてありませんでしたが(笑))
文章面でも及第点ですし、ちょっとしたスパイスもあり、よくできた文章と言えるでしょう。

さぶいぼ症候群の方を除けば、客観的に見て、小説としてよくできた作品、と言えます。
万人にオススメできるほうではないですが、作品として見るならば良品と言えると思います。

ですが、作品の帯にあった「女子が男子にすすめたい」という文句――これははっきり言って疑問です。
中学時代の幼馴染みがモテ系の美人になって再会し、恋人になり、幸せな結婚生活を送る――男性受けはするでしょうが、女子が薦めたくなるような作品とはとうてい思えません。
個人的にも雰囲気に乏しいし、おもしろい作品だとは思いませんが、周到に張り巡らされ、日常の中に隠された伏線やそれを収斂したラストなど、小説としての出来はかなりいいので良品の評価をしたいと思います。
個人的な感想と客観的評価は別ですので。

と言うわけで、総評、良品。
……でもやっぱり男性向けで、「女子がすすめる」と言うところには違和感を拭えません^^;


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えぇ! これが!?

2012-07-15 20:38:41 | ファンタジー(現世界)
さて、第1023回は、

タイトル:吸血鬼のおしごと
著者:鈴木鈴
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'02)

であります。

本を読むのはたいてい帰りの電車の中です。
そして読む速度は、おもしろいかおもしろくないかで顕著に変わってきます。

この作品はと言うと……かな~り読み進めるのに苦労しました。
でもこの作品、第8回電撃ゲーム大賞選考委員奨励賞受賞作なんですねぇ。

さて、そのストーリーはと言うと……

『ところはローマ。神学校に通うレレナは、叔父でもあるガゼット大司教に呼ばれて中央礼拝堂に来ていた。
そこでガゼット大司教から語られたのは、日本行きの言葉。日本人を母に持つハーフであるレレナは日本語がぺらぺらなので選ばれたと言うこともあるのだが、レレナはそこにクルセイダルと言う重要な任務の匂いを感じ取って日本行きを決める。

ところ変わって日本。東京都内にある何の変哲もなく、特徴らしい特徴もないのが特徴のベッドタウン湯ヶ崎町。
そんな町でツキ(黒猫)は、ボスとして君臨しつつも主人である月島亮史を叩き起こすところであった。
月島亮史――職業フリーター、種族吸血鬼。
日光がダメで、にんにくがダメで、十字架がダメで……いわゆるまんま吸血鬼の亮史は、日の出ている日中生活できないため、夜のアルバイトをしながら、血液パックの血を飲み、ついでに普通の人間のようにも食事をしながら、また使い魔のツキとともに何とか平穏に暮らしていた。

そんな亮史が住む廃屋同然の洋館に現れたのは幽霊だった。
顔半分がえぐれてしまったままの状態で現れた幽霊は、「痛い、苦しい」と訴えるが、亮史は幽霊の何たるかを知っていたため、その訴えを取り除くことができた。
……できたのはいいのだが、雪村舞と名乗ったその幽霊は、あろうことか亮史にまとわりつき、亮史の住む洋館にほとんど押しかけ同然で居着いてしまったのだ。

さて、ところ変わらず、湯ヶ崎町の某所。
レレナは目的地である教会を探して迷子になっていた。地図を見て、案内板を見て、場所を特定できたのはいいけれど、そこは空き地で教会などない。
途方に暮れたレレナは、寂しさのあまり、たまたま見つけた黒猫に縋るようにして黒猫を追いかけ――それはツキだったのだが――幽霊に続いて亮史の洋館に転がり込んでしまう。

ツキの忠告も聞かず、舞とレレナを受け入れてしまう亮史。
平穏な生活に珍客が訪れたものの、平穏な日々はそのままだったはずの湯ヶ崎町で事件が起きる。駅の看板に女性のバラバラ死体が杭で打ち付けられると言う残忍な事件だった。
その人間離れした事件の犯人を、亮史は吸血鬼の使い魔が、さらに吸血行為によって行ったために生まれた「亡者」のものと看破するが亡者は人を食らうものと関心を向けない。

しかし、その亡者にレレナがさらわれる事態となって……』

いやぁ、読むのに苦労しました(笑)
ちょうどこの前に読んだ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」がそれなりにさくさく読めたのに対して、こちらはなかなか読み進めませんでした。
と言うことで、はっきり言って、おもしろくなかったです、はい。
これが最終選考まで残って、奨励賞を受賞したのが不思議なくらいです。
私が下読みさんなら、1次選考自体、通しませんね、これ。

まずストーリーですが、ほぼあらすじのとおりです。
ただ、視点移動が頻繁です。ちゃんと視点移動の際に、段落を区切ってわかりやすくしている点はいいのですが、目的も行動原理も異なるキャラたちの視点移動が頻繁なので、かなり流れを阻害しています。
ストーリー展開も穏やかと言えば聞こえはいいですが、だらだらしているだけで、おもしろみの微片もありません。
終盤でレレナがさらわれたことで、アクションシーンが出てきますが、盛り上がりに欠けますし、表現下手なのでわかりにくいことこの上ありません。
一応今後に続く伏線を張っていますが、こうも漫然とだらだらしたストーリー展開でおもしろみもなければ、いくら伏線を張ったところで興味のわきようがありません。

キャラもまったく魅力を感じません。
表紙折り返しの解説文には「魅力的なキャラクター達が大活躍!」とありますが、このお話のどこに「魅力的」で「大活躍!」と呼べるキャラがいるのか、不思議なくらいです。
あえて挙げるとすれば亮史の使い魔であるツキくらいでしょうか。
と言うか、主人公のはずの亮史がだらしなさすぎて相対的にツキのキャラが際立っているだけ、と言うだけかもしれません。
舞、レレナのヒロイン群にも魅力をまったく感じません。
舞は最初の悲劇的な様子から一変して元気いっぱいのキャラになりますが、ただそれだけですし、レレナもこの一冊だけでは目的も見えず、ただ巻き込まれただけの子でしかありません。
解説文に惹かれて手に取ると完全にバカを見るキャラたちです。

ただ、いい点を挙げるとすれば文章でしょうか。
視点移動が頻繁なのはすでに書きましたが、突然視点が変わることもなく、ちゃんと段落を区切っているので、視点移動で混乱することはあまりありません。
無用な傍点ルビや三点リーダーなどの多用もありませんので、作法自体は比較的まともな部類に入ります。
ですが、最近、作法にはうるさくなくなったので、これがプラス点になるかと言えば、そうとも言えません。
好感は持てますが、それだけですね。
肝心のストーリー、キャラにまったく魅力を感じないのでプラス点としては微々たるものです。

と言うわけで総評ですが、あえて言を加えることもなく、落第決定。
まぁ、まだ第8回で、ゲーム大賞の時代ですし、今のようにレベルの高い作品が多数応募されてきているころではないので、こういう作品が出てくるのも仕方がないのかもしれませんが、ホントにおもしろくありませんでした。
ラノベ以外にも多数読んでて、おもしろくないのは途中で挫折するのがほとんどだったりして、及第評価が多かったのですが、久々に文句なく落第決定なのは久しぶりですね(笑)


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これが走りになるのかな?

2012-07-09 20:25:27 | ファンタジー(現世界)
さて、ふたつの意味で走りだと思うの第1022回は、

タイトル:俺の妹がこんなに可愛いわけがない
著者:伏見つかさ
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'08)

であります。

ふたつの意味で、というのはいわゆる「妹モノ」の走りではないかと言うことと、やたら長いタイトルが粗製濫造されているうちの走りではないか、と言うこと。
「妹モノ」は、これの人気にあやかってやたらと出始めた印象があるし、読む気も起きないやたら長いタイトルの作品が目につくようになったのも、これが最初ではないかと言う印象がある。

まぁ、それはさておき、アニメ化もされ、二期も決定している本作の第一作。
Wikiによると、著者人生最後の作品とも考えていたらしい作品であって、人気が出てよかったねぇ、と思ってはいるけど、内容は……。

『「普通」な人生でいい。
高坂京介は、特に趣味もなければ特徴らしい特徴もいらない――そんな「普通」で地に足のついた人生で十分だと思っている高校生だった。
家族構成は両親に妹の4人家族。
だが、この妹が京介とは正反対とも言える存在だった。

まだ中学生だが茶髪にピアス、おまけに雑誌のモデルもやるような美人でいわゆるイマドキの女子中学生の高スペック版とも言える妹で、普通なら自慢できる妹……と言いたいところなのだが、京介と妹桐乃との関係は最悪。
ここ数年、まともな会話をしたこともなければ、帰ってきたときの挨拶すら無視される始末。
もっとも、京介自身も別段そういう桐乃とのことはどうでもいいので、スルーしておけばいいだけのこと。

それで日常は過ぎていくのだと思っていたのだが、ある日のこと。
用を足しに向かった先で、出かける途中の桐乃とぶつかってしまい、桐乃のバッグの中身がぶちまけられてしまった。
拾おうとしてもそれを拒絶される始末だが、まぁ、桐乃との関係はこんなもんだと思っていた京介は、桐乃が出かけてしまったあと、玄関で妙なものを拾ってしまう。
それはアニメのDVDのパッケージで、中身は「妹と恋しよっ♪」というタイトルのゲームらしきDVD――。

家族の性格からまったくいったい誰のものか想像もつかない京介は、夕飯時、それとなく話題を振ってみると桐乃の様子が明らかにおかしい。
そこで京介は策を弄してコンビニへ出かけるふりをして桐乃の反応を見ようとしたのだが――見事にビンゴ。
そこには京介が拾ったDVDを探すために京介の部屋を家捜ししている桐乃の姿があったのだ。
明らかに桐乃の持ち物だとわかるのだが、桐乃はDVDの所有を認めない。面倒くさくなった京介は拾ったそれを桐乃に渡してさっさと退散願おうとしたのだが、桐乃の口から出た言葉は「私がこういうのを持っていてもおかしくない?」だった。

人の趣味など千差万別。桐乃がどういう趣味であろうとどうでもいい京介は「いいんじゃないか」と適当に答えてしまったのだが、これがいけなかった。
それをきっかけに、桐乃は「人生相談」という名目で京介を巻き込んでいく……。』

さて……個人的な好みの問題は置いといて、ストーリーの流れはいいと思う。
ストーリーは、京介が桐乃の秘密(オタク趣味で妹萌え)を知り、それに協力するハメになる、と言う巻き込まれ型のストーリー展開となっているが、幼馴染みの麻奈実のアドバイスをもらって、同じ趣味のSNSに入ったり、オフ会の観察を強制されたりしながら、最後には文字通りラスボスである親父との戦いを経て、「何故か」不仲の妹のために奮闘する、と言う内容。
まぁ、その「何故か」というのもわからないでもないので、京介の行動には無理はないのであろう。
私には妹がいないので、文中で同意を求められても何とも言えないが、理解はできるし、そういったところに無理がないので流れが悪くなることはない。

文章は京介の一人称で、やや好みが分かれそうな気はしないでもないが、途中で視点が変わることもなく、京介の語りで一貫しているところは好印象。
オフ会なども女性限定という縛りがあるにもかかわらず、いきなりひとりで行くのはと言う理由で観察者にされて、京介視点で描いているなど、卒がない。
無駄な傍点ルビや三点リーダーの多用などもあまり見受けられないので、文章の作法としてはきちんと一人称の作法を守って書いてくれているので文章面での評価は高い。

で、おもしろいかと言われれば、個人的には「普通」
キャラ萌えをあまりしないタイプなので、どのキャラがいいとかそういうところはない。
たぶん、キャラ萌えする人には作中徹底的にツンを貫いた桐乃が最後の最後でデレてくれたりするところにグッと来たりするのかもしれないが、あいにくとそういうのに萌えないタイプなのでデレてくれたところで何の感慨もない。
まぁ、ラストにタイトルと合わせて終わらせているのはうまく書いたな、と言う印象ではあるけれど。

と言うわけで、総評ではあるが、ラノベ点も加えて、良品としておこうか。
ストーリー展開、流れ、キャラ、文章ともに悪いところが見当たらないので、個人的におもしろかったかどうかは別にして、よくできた作品とは言えるだろう。
あとは読む人の好みの問題だと言えよう。
手放しでオススメはしないが、出来はいいので読んでみて損はない作品と言えるだろうね。

と言うわけで、総評、良品。
しかし個人的に2巻以降読むかは微妙なところ。アニメ見て、だいたいの話はわかってるってのもあるかもしれないけど、個人的にすごいおもしろかった、とは思ってないのでね。
ただ、著者にはホントによかったね、と言ってあげたい。
これが最後のつもりで書いたらしいのだから、人気も出て、続きも出て、アニメにもなって……作家を廃業しなくてすんだんだし、ね。


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匂いってわかりますか?

2012-07-02 20:41:15 | ファンタジー(現世界)
さて、ラノベばっかですいませんの第1021回は、

タイトル:ストライク・ザ・ブラッド1 聖者の右腕
著者:三雲岳斗
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'11)

であります。

雰囲気とか、そういうのと似た感じで時折、匂いを感じることがある。
今回のは巻頭にあるカラーイラストと、そこに紹介されている文章を見て、「とある魔術の禁書目録」に似た匂いを感じて、初っぱなからかなりげんなりした。

とは言え、ストーリーまで似た匂いを感じるわけではないので、読み進めてはみたけれど……。

さて、ストーリーは、

『見習いの剣巫である姫柊雪菜は、所属する獅子王機関の長老である三聖に呼び出されていた。
そこで簡単な実力を試され、三聖の意図するところがわからない雪菜は、わけがわからないまま、第四真祖の存在を知らされる。

「一切の血族同胞を持たない、唯一孤高にして最強の吸血鬼」――それが第四真祖だった。
だが、他の真祖とは異なるその存在は、名前は知られていながらも都市伝説の類だと思っていた雪菜は、しかし三聖から第四真祖が実在することを教えられ、一枚の写真を見せられる。
そこに写っていたのは暁古城という男子高校生のもので、ごくふつうの高校生にしか見えない。
だが、その暁古城が第四真祖であり、雪菜はその監視役――場合によっては抹殺することを命じられる。

一方、自分の生活の裏でそんなことがあったことなと露知らぬ古城は、ファミレスの一角で友人の藍羽浅葱と矢瀬基樹とともに追試の勉強をしていた。
欠席がちで試験にも来ていなかった古城にとって追試は仕方がないのだが、夏休みも終わり間近、九教科の追試に体育のハーフマラソンの追試が待っているとなればやる気も起きない。
しかし、それでも時間は無情に過ぎていく。

勉強を教えてもらっている浅葱は、バイトがあると席を立ち、ちゃっかりと隣で浅葱の宿題を移していた基樹も用が済んだとばかりに帰って行ってしまう。
勉強を教えてもらう浅葱がいなければ、これ以上ファミレスにいても仕方がないので、古城もファミレスを後にしようとしたとき、古城は夕陽を背にしたギターケースを持った少女を見かける。
その少女こそ、姫柊雪菜――古城と雪菜の運命の邂逅だった。』

表紙の返しにある作品紹介には「学園アクションファンタジー」とあるけれど、まんまだね。
良くも悪くも普通の学園アクションファンタジーで目立った特徴もなければ、変わった設定とかもない。
設定については、最初に書いたとおり、「とある魔術の禁書目録」の匂いがするのだが、まぁ、これは後述。

ストーリーは古城の監視役に選ばれた雪菜が、あらすじのとおり接触し、ついでに古城の住むマンションの隣にまで引っ越してくると言う徹底ぶりで監視を続ける中、吸血鬼や獣人などの魔族が襲われる事件が発生し、それに首を突っ込むことになった雪菜と古城が、事件の首謀者であるオイスタッハと戦うハメになり、そしてオイスタッハの真の目的を知り、それをふたりで阻止することになる、と言うもの。
ストーリー自体はまぁまぁまとまっているほうかな。
言葉にできない違和感があるのだが、これは分析型の相方なんかが読むとしっかり説明してくれそうなのだが、感性派の私にはちょいと無理。
まぁ、ややマイナスの要素にはなるものの、そこまで気にするほどでもないのでラノベとしては許容範囲としておこう。

キャラも悪くはない。
特に性格や個性、行動原理に問題があるわけではないので、キャラ立ちはしているほうだろう。
ただ、これと言って目立つキャラがいるわけでもなく、ここでも普通さ加減が際立っているのだが……。

文章については、最初、無意味な傍点ルビがあって、これがまた続くのかと思ってげんなりしたものだが、これは最初だけでその後は三点リーダーの多用も少なく、ラノベとしては作法を逸脱しない比較的まともな文章だと言える。
相方がかなりボロクソに言っていたので、どうかと思っていたが、ストーリー、キャラ、文章ともにまともでこれはかなり意外ではあった。

マイナス面も少なく、良くも悪くも普通であることを除けば、悪いところが見当たらなさそうなラノベなのだが、上述のとおり、禁書臭が漂うのが難点だろうか。
邪推と言えばそれまでだが、その邪推をあくまでするとすれば、たとえば、

舞台となる魔族も生活する人口浮島「絃神市」。魔族も生活を保障され、その魔族の研究を行う研究機関や企業が集う街→禁書目録で言う「学園都市」
超人的な肉体を誇る獣人や吸血鬼など→能力者
獅子王機関→統括理事会
オイスタッハと言った祓魔師→まんま禁書に出てくる魔術師
同じくオイスタッハが装備する肉体強化などを行う装備→禁書目録で出てくる霊装

など、禁書目録の設定をアレンジしただけのものにしか見えない設定が多数出てくる。
キャラも終章で基樹が古城を監視する本来のスパイであることなど、友人でありながらスパイであると言うところなどは禁書目録の土御門に似たところがある。
気にしなければいいじゃないかと言う向きもあるかもしれないが、禁書目録を読んだことがある人ならば――ラノベではかなり人気のあるシリーズなのでラノベ好きなら読んだことない人のほうが少ないのでないかと思うが――やはり、この設定に似た匂いを感じる人は多いのではないだろうか。

完全なオリジナルを作ることは到底無理なので、何かしらの作品に似た部分が出てしまうのは仕方がないとは言え、ここまで似た匂いを振りまいていると、二番煎じという感が拭えない。

と言うわけで、それなりに悪い点はないながらも、この禁書目録臭がしてしまうと言う点がマイナスになって落第と言ったところだろうか。
もっとも、これがなくても普通の学園アクションファンタジーなので、及第以上の評価をすることはできないのだが……。


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今頃なんて言わないで(笑)

2012-06-24 17:21:35 | ファンタジー(現世界)
さて、ホントに今頃なんですが読んでみましたの第1020回は、

タイトル:図書館戦争
著者:有川浩
出版社:メディアワークス (初版:'06)

であります。

アニメ化もされ、花ゆめでマンガ化もされ、確か劇場版もやっているはず……の人気作ですが、相変わらず人気作ほど読まない、と言う法則(?)で読むのが今頃になってしまいました^^;
まぁ、レンタルでアニメ先に見ちゃったので、話の概要はわかっているのですが、原作はどんなもんかいなと言うことで、読んでみました。

ストーリーは、

『笠原郁、二十二歳、念願の図書館に就職が決まり、日々図書館業務に……もとい、図書館防衛のための訓練に精を出していた。
鬼教官、堂上の厳しいしごきに耐えながら。

図書館防衛……なぜそんなところに郁が就職したかと言うと、昭和最終年度に成立した「メディア良化法」のためであった。
公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として成立した本法は、ほとんど恣意的に検閲を許すようなとんでもない法律だった。
それに対抗する形で施行された図書館法によって、図書館はメディア良化法の検閲から本を守るため、武装化。
そのために、通常の図書館員とは別に防衛員という職種まで図書館に配備されるようになったのだった。

郁が図書館防衛員を目指した理由――それは過去の出来事だった。
好きだった児童文学の完結編が出版されることを知った当時高校生だった郁は、その本を買い求めるとき、書店で良化特務機関の検閲に出くわしてしまった。
郁が求めていた本も検閲の対象となっていて、買おうとした矢先にそれを取り上げられそうになってしまう。

そこへ現れたのが郁の「王子様」
図書館法の権限でもって検閲で持ち去られようとした郁が買おうとしていた本を含む書店の本を守った彼に憧れ、防衛員の道を歩むことになったのだが……。

現実は訓練に次ぐ訓練。――しかも嫌われているのではないかと思うくらいの鬼教官のしごきの日々。
だが、それだけでは終わらなかった。
防衛員の中でも特別な職種、図書特殊部隊――ライブラリ・タスクフォースへの配属が決まってしまったのだ。
防衛員の中でもエリート中のエリートに配属され……たのはいいが、結局は訓練に次ぐ訓練、ついでに図書館業務の研修まで入ってしまい……。
タスクフォースへ配属された郁の日々はいかに……!?』

文芸書の体裁を取っていますが、中身はラノベです。

さておき、まずは全体的に見てですが、文章、ストーリーともに軽快で好感が持てます。
基本的に主人公である郁の視点で話が進み、ストーリーは防衛員としての訓練やタスクフォースとなってからの訓練、研修の中で教官の堂上や同僚の芝崎、同じくタスクフォースに配属された手塚などとの絡みを交えながら、クライマックスとなる戦闘シーン、それに外され、図書隊司令の付き添いを任された郁が遭遇する事件を経て、完結を迎えます。
訓練や芝崎などの同僚たち、堂上教官たちとのやりとり、クライマックスの戦闘シーンに至るまで軽快な語り口調でさくさく読み進めることができるでしょう。

ただ、基本郁の視点で語られますが、時折手塚や堂上の視点になったりして――まぁ、それくらいはいいのですが、郁以外の視点になったときに、誰の視点なのか判然としないところが出てくるのが、流れを阻害している感があります。
また、必要なことではあるのですが、図書館とメディア良化委員との関係など、世界観の理屈を語る場面がちらほらあり、これも流れを阻害している原因となっています。
さくさく読める、とは言いましたが、こういうところがあるので、一気に、と言うわけにはいきません。
ここはマイナス点になるでしょうか。
まぁ、そこまで酷くはないのでラノベとしては我慢できる範囲内に収まってはいるのですが。

ストーリーも全体的にまとまっていますし、見せ場も作ってくれているし、ラノベとしてはいい作品に分類できるとは思うのですが……。
世界観にツッコミを入れたくなってしまうのがちょいと難点かな、と。
いろいろと理屈をこね回してはいますが、そもそも検閲を許す法律が成立している、と言う世界が憲法などの法律をかじった人間としてはツッコミを入れたくなってしまいます。
良化特務機関が現実に出版業界や書店に損害を与えていると言う時点で、国賠法などで違憲判決を求めることは可能だし、いくら一度成立した法律を覆しにくいと説明されているとは言え、明らかに憲法違反な法律で違憲判決がばんばん出れば、政治家も動かざるを得ないとは思うのですが……。
まぁ、ここは世界観の根幹を成す部分なので、突っ込んではいけない部分でしょう。
でないと物語が成立しないのですから^^;

ツッコミ部分はさておき、総じて言えば確かに人気作になるだけあって、ラノベとしてはおもしろい作品と言えるでしょう。
全体的に軽快なテンポで進むストーリー、文章はいいところです。
やや文章に難があるところがありますが、ラノベとしてはマシなほうなのでそこまで気にしなくてもいいでしょう。
とは言え、ややマイナスなところもありますし、世界観にツッコミを入れたい気持ちが残ってしまうので、手放しで良品とは言えません。
全体的に悪くなく、どうかと聞かれれば読んでみても損はないとは言えますので、Amazonの評価なら☆4つくらいはつけられるので、限りなく良品に近い及第、と言ったところでしょうか。

と言うわけで、総評としては及第です。
あ、ちなみに文庫版も出ているので、手に取るならそちらのほうをオススメします。


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いまさらですが

2012-06-17 16:12:51 | マンガ(少女漫画)
さて、この人を紹介してなかったんだなぁの第1019回は、

タイトル:革命の日続革命の日
著者:つだみきよ
出版社:新書館 ウィングスコミックス(初版:'99、'01)

であります。

マイナーだけど、おもしろくて好きなマンガ家さんだったのに、目録を見て紹介していなかったことにちょっとびっくりです(笑)
まぁでも、何年ぶりかに段ボールから引っ張り出してなのでしょうがないかとも思ったり……。

さて、ストーリーですが、

『父親との確執に悩む高校生の吉川恵(けい)は、いつものように友人であり仲間である鳥羽、立待、神明とともに屋上にたむろっていた。
いつものバカ騒ぎをしている中、恵の身体には変化が起こっていた。このところ、妙に身体が痛むのだ。
そしてついには倒れて病院に運ばれた恵は、驚愕の事実を教えられる。

「検査の結果、君は女の子だったんだよ」

染色体の異常や遺伝子伝達のミスやらなにやらで稀に見た目は男性なのに、染色体が女性だったりする場合があるらしい。
15年間、男として生きていた恵。――しかし、このことをきっかけに女として生きていくことを決め、父親との確執も解消され、新しい人生、家族を歩むことにしたのだが……。

そうは問屋が卸さない。
学校に事情を話し、半年間の休学を経て、「同じ高校」に吉川恵(めぐみ)として入学した恵。サポート役で世話になっている病院の医者の姪、豊麻琴とともに新たな学校生活を平穏に送ろうとするのだが、同じ高校に入学したと言うことは、いつも屋上でたむろっていた仲間たちや、元クラスメイトに出会う確率はかなり高いわけで……。

案の定、疑惑の目を向けられる恵。
麻琴のフォローも虚しく、事情を洗いざらい元の仲間たちに白状した恵だったが、元仲間たちの反応は――ちょうどいい、だった。
もともと男でいたときから女性的な顔立ちで仲間内ではマスコット的な扱いを受けていたこともあり、仲間たちは完全に恵を女性として見る目に。
半年前までは男をやっていたのだし、しかもそのときの仲間が完全に女を見る目に変わってしまったことに混乱する恵。

男と付き合うなんて無理。しかもある事件がきっかけでほとんど男性恐怖症に陥った恵は一生麻琴の世話になると宣言するも、仲間たちの追及の手は収まらない。
あれこれと仕掛けてくる仲間たちから逃れるために、夏休みはほぼ毎日麻琴の家に逃げ込んでいた恵は、そこで麻琴の弟の実琴に出会い……』

マンガの世界ではなく、実際に稀ではありますがあるようですね。
続のほうに、ファンレターとして送られてきた手紙の中で実際に性別を変えて生きることにしたことを綴ったものが紹介されていて、事実は小説よりも奇なりを地でいくのもあるんだなぁ、と思います。

それはさておき、ストーリーですが、あらすじのとおり、染色体は女性と判断された恵が、女性として生きる決意をし、男時代に仲間だった連中に追い回されるのが「革命の日」の展開。
「続革命の日」は、相変わらず迫ってくる元仲間たちから逃げつつも、麻琴の弟の実琴と出会うことによって変わっていく恵を描いたもの。

基本、コメディです。
最初の話だけは、父親との確執が描かれていてシリアスな部分もありますが、それ以降は迫る仲間たち、逃げる恵の葛藤をおもしろおかしく描いていて、笑えます(笑)
当初、著者として「革命の日」だけで終わるつもりだったのですが、もろもろ指摘を受けてあまりに中途半端に終わってしまっているため、「続革命の日」が描かれるわけになったわけですが、個人的には「続革命の日」で実琴とくっついてくれて終わっているのでこれで完結でいいと思います。
あとがきなどで、恵の元仲間たちをひいきにしている人たちは、その誰かと恵をくっつけて欲しい、と言う意見もあるだろうと書かれていますが、まぁ、そのとおりでしょう。
ですが、どのキャラとくっつけても角が立つので、実琴という新キャラを持ってきてくっつけるほうがいちばん角が立たないとは思うので、これでいいのかと……。

キャラは、いちおう個性の説明はされているものの、元仲間たちは十把一絡げの扱いが多いので、仲間たちについてはややキャラが薄い印象があります。
と言うか、たいていセットで登場してくるので仕方ないところではありますが。
麻琴も当初の印象からかなり腹黒く変わっていっていて、ブレが見られます。(まぁ、麻琴は腹黒が定着してからはキャラがしっかりしているのでまだいいのですが)
始めからキャラがしっかりしているのは、主人公の恵と、実琴くらいでしょうか。
まぁ、それでもマンガとしてはおもしろいから目を瞑っていられる範囲ではありますが。

総じてコメディとしての出来はいいほうだと思います。
キャラひいきによる賛否両論はあろうかと思いますが、オチは納得できるものでもありますし、二冊で終わってくれているのでお財布にも優しいですし、個人的にはオススメのマンガに入るのですが……。
良品として、手放しにオススメできるかと言えば、そうでない部分もあるわけでして……。
Amazonの☆なら4つは確実につけられるおもしろさだとは思うのですが、個人的なオススメだけで良品をつけるわけにもいかないので、ここでは及第とさせてもらいます。


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ブルーレイ予約しちゃったなぁ(笑)

2012-06-03 17:08:01 | ファンタジー(現世界)
さて、8巻出てたので2クールやるんだろうなぁの第1018回は、

タイトル:アクセルワールド 黒雪姫の帰還
著者:川原礫
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'09)

であります。

はい、四月から開始されたアニメ見て読んでみた。いつもの流れだすな^^;
アニメはとてもおもしろいんだけど、原作はいまいち良品って言えるのがないなぁってのが、これまたこのところの流れだったりするんだけど、本書はどうだろうか……。

さて、ストーリーは、

『梅郷中学校に通うハルユキは授業中、とあるメールを受信した。それはハルユキにいつも絡んでくる荒谷からのメールで、昼休みにパシリをしてこいと言う内容のメールだった。
そう、ハルユキはいわゆるいじめられっ子だった。
小柄で太った外見に自信のなさそうな言動、卑屈な思考回路……取り柄と言えば、ゲームのみと言う冴えない生徒だった。

そんなハルユキの唯一の憂さ晴らしは、やはりゲームだった。
ニューロリンカーと呼ばれる身体に埋め込まれた携帯端末から学内ローカルネットに入り、人気のないスカッシュゲームで一心不乱にボールを叩き返し、スコアを更新する――仮想空間に完全ダイブして行うそれだけが現実世界から逃れられる唯一の手段だった。

ある放課後、幼馴染みのチユリとの些細な諍いが原因で、素直に下校する気になれなくなったハルユキは図書室で時間を潰すことにした。
いつものように完全ダイブしてスカッシュゲームのある場所へ向かうと、そこに表示されていたのはハルユキがたたき出したスコアを大きく上回るスコア。――たったひとつの拠り所さえ失ったハルユキに、誰かが声をかける。
声の主は、ハルユキでも知っている学校の有名人「黒雪姫」――副生徒会長を務める美貌の上級生だった。
そしてその黒雪姫はハルユキに向けてこう言った。
「もっと先へ……《加速》したくはないか、少年」――と。

翌日、荒谷のメールを無視して黒雪姫が告げたラウンジへと向かったハルユキは、学内ネットワークのセキュリティを回避するためでもあり、また親密な相手であることを示す直結を黒雪姫から示される。
戸惑うハルユキは、けれどケーブルを介した直結を黒雪姫と行い、そこでハルユキは正体不明のプログラムを黒雪姫から受け取る。
そのプログラムの名前は「BRAIN BURST」。
黒雪姫がハルユキの現実を破壊すると告げたものの正体だった。

いったい何のプログラムなのか、さっぱり見当のつかないハルユキだったが、その効果は意外なところで判明する。
荒谷だった。――パシリを命じておきながらラウンジへ来たハルユキを追ってきた荒谷の暴力を回避するために紡がれた「バースト・リンク」
その瞬間、訪れたのは止まった――ように見える世界。「BRAIN BURST」によって加速された世界だった。』

これ以上書いてるとあらすじが長くなりそうなので、終わり(笑)
基本のストーリーは、ハルユキが黒雪姫から「BRAIN BURST」を受け取り、そのプログラムがもたらす仮想世界で「シルバー・クロウ」というアバターとして、黒雪姫のために戦う、と言うもの。
その合間に、幼馴染みのチユリやタクムとの話などが入って、ハルユキの人となりなどが語られるわけだが、基本的にはバーストリンカーとして「BRAIN BURST」が用意した仮想空間で格闘ゲームをやる、と言うのが大筋の流れ。

こういういわゆる仮想空間を使ったSFファンタジーは、そのうち出るだろうとは思っていたけど、これもそのひとつ、と言うことになるだろう。
さて、ストーリー展開だけど、アニメを見て知ってはいたものの、そつなく、ゲームとしてのアクションも、人間関係も適度に描写されており、全体的なまとまりはいい。
破綻もなく、盛り上げるところは盛り上げられているし、ラノベとしてはかなりクオリティの高い作品になっている。

キャラも美形ではない主人公と言うのが珍しいが、それぞれ個性もしっかりしており、キャラ立ちもしている。
ややハルユキの思考回路に「ん?」と思うことがないわけではないが、全体的に見れば些末だと言っていいだろう。

文章も及第点……というか、ラノベにしてはかなりまとも。
もともとWeb上で作品を発表していたようだが、ネット出身者のほうが文章の作法は心得ているのか、と思うくらいまともだ。
前にも携帯小説出身の作家の本を読んで、文章がかなりまともだったと思ったものだが、下手なラノベ作家よりネット出身者のほうが表現力があるのだろうか。
まぁ、細かいことを言えば言えないこともないが、全体的に表現力はいいほうなので些末なことだろう。
イラストも、アバターや「BRAIN BURST」が描く仮想世界をうまく描写していて、世界を想像するのに上手に配置されているのもプラスに働いているだろう。
まぁ、私はアニメ先行だったので、場面を想像するのはかなりたやすかったが、アニメを知らなくても十二分に想像できる描写とイラストで、うまく補完関係を築いている。

総じて、ストーリー展開、キャラ、文章ともにクオリティの高い作品と言えるだろう。
手放しとまではいかないが、ラノベとしてはオススメの部類に入る作品で、これは久々に良品の評価をしてもいいだろう。

……ただ、巻末にある解説。「境界線上のホライズン」で人気のある川上稔が解説を書いているのだが、これが解説とは名ばかりの駄文。
せっかくクオリティの高い作品に仕上がっていると言うのに、解説はホントに駄文と言うしかないもの。
はっきり言って、解説は読まないほうがいい。作品世界を損なうこと請け合いである。
私は読んで激しく後悔したからねぇ。よくもまぁ、電撃編集部もこんな駄文を解説と称して載せたわ、とその神経を疑いたくなるほどだ。
本編とは関係がないので、本書の評価を下げるつもりはないが、ほんとーに、読まないほうがいい。
これだけは断言しておく。


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