浮世絵は庶民の娯楽として、楽しい絵や美しい絵を生み出す一方、社会の世相を伝えるうちに、
次第に(今日でいう)報道写真としての役目も備えるようになりました。
昨日紹介した、大日本帝国憲法発布式の様子を描いた浮世絵は、まさにその代表的な作品といえるでしょう。
そして、時代は日清、日露戦争へ。
浮世絵師たちはここでも活躍しています。
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我艦隊於黄海ニ清艦ヲ撃チ沈ル之図
小林清親 明治27年1894年
わがかんたい こうかいにおいて しんかんをうちしずめるのず こばやしきよちか
今まさに沈みゆく清の戦艦、亀裂の入った船体、立ち上る泡、おぼれる人々、巨大な海底の岩・・・
海上では砲撃を受けて煙をあげる別の船も描かれています。
海中と海上の2つの世界を同時に描く、絵画のみに可能な構図です。
激しくも、静かな印象を受けるのは、落ち着いた色彩で描かれているからでしょうか。
戦争画ではありますが、だからこそ臨場感と絵画性をあわせもつ、明治浮世絵の傑作のひとつです。
この新聞浮世絵をみて、庶民は大歓声をあげたことでしょう。
文字が読めなくても、一目で情報を伝える新聞浮世絵は多くの庶民から熱烈に求められました。
この後起こった日露戦争の状況を伝える新聞浮世絵も多数制作されています。
(本展にはマカロフ中将奮死の図、露国コザック騎兵を撃退の図、
乃木大将とステッセル将軍会見の図の3点を展示)
ご存じのように日本は日清、日露戦争に勝利します。
日清戦争の勝利により、日本は遼東半島などを得ますが、ドイツ、フランス、ロシアの三国干渉により、
その権利を放棄することになります。
今まで、国際法が、などと上から目線で話していた西欧諸国が、正当な権利を有する日本に
不当ないいがかりをつけてきたことは、西欧白人国家がただの貪欲で自分勝手な国にすぎないこと、
かつ世界は力の原理で動いていることを自分たちで証明したと言えるでしょう。
やがて起こった日露戦争は、近代において東洋人がはじめて西洋人を打ち負かした画期的な出来事でした。
このことはどれだけ強調しても強調しすぎることはないでしょう。
そして、日本の勝利は、西洋の植民地として長らく白人に支配され搾取されている他のアジア民族を大いに勇気づけます。
また日本がロシアの捕虜を大切に扱ったことはよく知られています。
その道徳性においても日本は西欧白人に勝利したのです。
さて、一方新聞浮世絵は、印刷技術の発達にともない、その位置を「写真」にとってかわられていくことになります・・・
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幕末明治の浮世絵・探訪展
~幕末の歴史絵から明治の開化絵まで~
期 間 平成26年 3月1日(土)~3月30日(日)
時 間 9時~17時30分(入館は17時まで)
休館日 毎週火曜日
入館料 一般800円 高校・大学生700円 中学生以下無料
会 場 黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館 3階展示ホール
富山県黒部市宇奈月温泉6-3 TEL 0765-62-2000