厚木基地(神奈川県)から岩国基地(山口県)への米軍艦載機60機の移転(写真左)が3月30日終了、岩国基地に所属する米軍機は約120機に膨らみ、同基地は極東最大級の米軍基地になりました。
移転は現地・岩国や周辺自治体の住民に多大な犠牲・不安を与え、基地の害悪が改めて浮き彫りになっています。
① 秘密主義・対米従属…「移転計画を巡っては、国と米側の説明の食い違いが相次いだ。…なぜ食い違うのか。…国の説明も『米軍の運用次第』に終始しがちだ。…移転を通じ、米軍の事情が優先される現実と、厚い軍事機密の壁が浮き彫りになった」(3日付中国新聞)
② 被害とりわけ騒音…「岩国市へ2017年度、市民から寄せられた米軍岩国基地に絡む苦情件数は3543件に上り、過去最多となったことが市のまとめで分かった。前年度(2071件)の1・7倍と大幅に増えた。…苦情件数の内訳は、『航空機騒音』が3077件と全体の9割近くを占め、前年度(1710件)から急増した」(7日付同)
③ 犯罪増加不安…「『米兵の犯罪を許さない岩国市民の会』の大川清代表(59)は『激しい訓練で重圧にさらされた米兵が増える。基地と犯罪は、簡単に切り離せない』と危機感を強めた」(1日付同)。
今回の移転で岩国市には今年後半までに約3800人の軍人・軍属、家族が移り住み、米軍関係者は1万人を超え、市の人口の1割弱になります。
④ 懐柔策…「軍民共用の岩国錦帯橋空港…愛宕山地区にオープンした野球場『絆スタジアム』…。基地のまちは、移転に絡む施設整備で大きく姿を変えた。…市は今月、基地を活用した英語教育の推進室し…防衛省の交付金を使って公立小中学校の給食費を無償化し、防犯灯の電気代全額助成などの事業も展開する」(4日付同)(写真中は岩国基地で行われた「市民公開」)
⑤ 環境破壊…「本州唯一のナベヅルの越冬地、周南市八代地区の上空で米軍岩国基地に関連するとみられる機体が相次いで目撃されている。…『ツルが来なくなるのでは』と心配する声が上がっている」(7日付同)
これら犠牲・不安・住民無視は沖縄の人々にとっては日常茶飯事。元凶は日米軍事同盟=日米安保条約であり、その運用のための日米地位協定ですから、住民の犠牲・不安が共通しているのは当然です。
同時にしかし、岩国とくらべても、沖縄の実態はさらにいっそう過酷で差別的であることを銘記する必要があります。それは「0・6%の国土の沖縄に約70%の米軍専用施設が集中している」「構造的差別」(故新崎盛暉氏)ですが、たんに量・規模だけではありません。例えば、「クリアゾーン」です。
7日付の沖縄タイムス(平安名純代・米国特約記者)によると、米軍の「指針」では安全対策のため、飛行場滑走路の両端に「クリアゾーン」(利用禁止区域)が設定され土地利用が禁止されることになっています。ところが、米海兵隊基地の中で唯一、この「クリアゾーン」がない飛行場があります。それが沖縄の普天間飛行場(写真右)です。
「元米兵らで組織する県内の平和団体『ベテランズ・フォー・ピース・ロック(VFP-ROCK)』は先月、普天間や岩国を含む国内外の海兵隊基地15カ所のうち、クリアゾーン内に学校や住宅などの建造物があるのは普天間のみと指摘。マティス国防長官らに書簡を送付し、米国の安全基準に反する普天間の即時閉鎖を要求した」(7日付沖縄タイムス)
また、米軍の「臨時訓練空域」の危険については先に書きましたが(3日のブログ参照)、沖縄上空の「訓練空域」新設について日米両政府は沖縄県に一言も知らせませんでした。一方、「空母艦載機移転に伴い2016年に米軍も使える臨時訓練空域『ITRA』を岩国周辺で新設した際には、山口県にこの計画を説明しており、対応は二重基準だとも言える」(3月26日付琉球新報)という実態があります。
米軍艦載機移転に伴い岩国市の福田良彦市長は「基地との共存」(4日付中国新聞)を強調し、メディアも「市民が納得できる『共存』をどう実現していくのか」(同)が課題だとしています。しかし、軍事基地と市民の間に「納得できる『共存』」などありえません。それは沖縄の歴史と現実が明確に証明しています。
基地被害・不安をなくするためには、米軍を全面撤去する以外にありません。
日本全土に基地の被害と不安をまき散らし、とりわけ沖縄を「軍事植民地」化し、東アジアの平和を脅かしている元凶である日米軍事同盟=安保条約を廃棄することは、喫緊の今日的課題です。