アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

日曜日記300・共感広がるウトロ平和祈念館だけど・・・

2024年05月05日 | 日記・エッセイ・コラム
   

 4月30日、ウトロ平和記念館(京都府宇治市)が設立2周年を迎えた。それを記念して「みんなのためのウトロ音楽祭」が29日、同館前の広場と同館であった。
 朝から雨天の予報だったが、約200人が集った。参加費は無料(投げ銭方式)だ。

 午後1時半の開始直前に最寄りの近鉄伊勢田駅に着いた。同じ電車から降りた女性と男性がスマホを見ていた。「ウトロですか?」と声をかけると案の定、初めて行かれるお二人だった。私は3度目だったので、ご案内しながら一緒に館に着いた。女性は「農楽隊をぜひ見たい」と。同感だ。

 ウトロ出身で劇団「四季」にも所属していた鄭雅美さん(写真中)、ウトロ企画ではおなじみのシンガーソングライターの川口真由美さんと、在日のかおりさん(カオリンズ)のコラボ(写真右)、そしてフィナーレのウトロ農学隊など、プログラムは多彩で魅了された。

 演奏もさることながら、鄭さんやかおりさんが語る故郷(朝鮮半島)や母親の話が胸を打った。

 2周年のお祝いに、近所の生け花の先生から贈られた作品が紹介された。祈念館が地域に根付いていることがこの生け花からもうかがえた。

 「ウトロレター」(2024・3号)によると、来館者は2月中旬時点で2万3千人を超えた。2年目も初年度と変わらない水準だという。
 年代別では、60代以上が46%に対し50代以下が54%とわずかだが上回っている。30代以下が26%。嬉しい現象だ。

 来館者の居住地は京都府内33%に対し、京都府を除く近畿地方が46%と最も多い。関東地方も9%。海外からも訪れているが、アンケート回収が少ないのでデータには反映されていないという。

 祈念館がさらに多くの人びと、地域に広がり、日本の植民地支配の加害の歴史といまに続く差別(ヘイト)の実態を学ぶ場になることを願いたい。

 音楽祭の最後は農学隊と参加者が手拍子で一体になった。祈念館の企画に参加させてもらうと、いつも励まされる。音楽と言葉と、オモニ、ハルモニたちの笑顔に。

 だが、そんな祈念館前広場の光景とあまりにも対照的な冷たい無機質な風景がどうしても気になる。細い道を隔てた隣が陸上自衛隊大久保駐屯地なのだ(写真左)。この日もカーキ色のブルドーザーが並んでいた。

 ウトロ平和祈念館と自衛隊基地。あまりにも不似合いだが、その対照は逆にこの国の歴史と現実を象徴しているとも言える。そして、祈念館、自衛隊基地と接しているのが中学校だということも意味深長だ(23年6月4日のブログ参照)。

 ウトロの人たちは気にもしていないかもしれないが、私はどうしても気になる。いつの日か、この空間を祈念館と中学校だけにしたい。

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