アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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CO2をアジアに輸出・「脱炭素」で新植民地主義

2024年05月08日 | 日本の政治・社会・経済と民主主義
  

 3日の岸田首相とブラジル・ルラ大統領の会談では、「日本のハイブリッド技術とブラジルのバイオ燃料を組み合わせて脱炭素への動きをリードする考えで一致」(4日付京都新聞=共同)したと報じられました。

 「脱炭素をリード」といえば聞こえがいいですが、実はたいへんな計画が進行していることに目を向けなければなりません。

企業のCO2輸出計画急増 脱炭素、地中に貯留

 この見出しで京都新聞(4月8日付)に共同通信の独自記事が掲載されました。

「脱炭素対策の一環で日本企業が二酸化炭素(CO2)を東南アジアなどに輸出し地下にためる計画が過去2年ほどで急増し、少なくとも13件に上ることが共同通信のまとめで分かった。…早ければ2030年前後の開始を見込む。…CO2が生じる(大企業の)事業の継続策として海外貯蓄を有力視している実態が浮かんだ」

 同記事によれば、主な二酸化炭素輸出計画の輸出企業と輸出先は次の通り。

▶三菱商事・ENEOS⇒マレーシア   ▶中部電力⇒インドネシア
▶住友商事・JFEスチール⇒オーストラリア   ▶大阪ガス⇒アジア太平洋

 もちろん大手企業が独自に行っていることではなく、政府の政策に基づいて、官民一体で推進されている計画です。

 同記事によれば、CO2を地下に貯蔵する技術はCCSといい、政府はすでに2月に「CCS事業法案」を閣議決定し、今国会に提出して成立を図る構えです。30年度までに事業を開始するとし、官民合わせて少なくとも約4兆円をCCSに投じる計画です(写真右は苫小牧のCCS実証実験センター=4月8日付京都新聞より)。

 日本が出したCO2をアジア諸国に押し付けようとする同計画に対して、当然ながら現地ではすでに反発が出ています。

「環境団体FoEマレーシアは3月、日本政府や三菱商事などへの抗議文を公表し「日本がなすべきことは排出削減であり、他国への輸出や投棄ではない」と批判した」(同記事)

 日本の学者も批判しています。

「東北大の明日香寿川教授(環境エネルギー政策)は「4兆円を再生エネや省エネに投資すれば、早期のCO2大幅削減や化石燃料輸入費の縮減、エネルギー安全保障強化につながる」と指摘。CCSへの支援は国民負担を増やし、脱化石燃料も遅らせると説く」(同記事)

 大企業が利益を上げるためにCO2を出し続け、それをアジア諸国に輸出(投棄)して犠牲を転嫁し、「CO2削減」を装う。政府がそれを国策として巨額の事業費(税金)を投入する。政府はそれで「脱炭素社会をリードする」と豪語する―これはまさに現代の新たな植民地主義と言わねばなりません。いわば環境植民地主義と言うべき暴挙です。

 こうした計画があり、すでに具体的に進行していることを、私はこの記事で初めて知りました。私の不勉強を差し引いても、あまりにも報道が不十分で、知る人は多くはないのではないでしょうか。

 戦時性奴隷(「慰安婦」)や強制連行・労働(「徴用工」)問題はじめ、侵略戦争・植民地支配の加害の歴史に向き合おうとしない日本が、再び新たな植民地主義の暴挙を行なおうとしているのです。絶対に容認できません。


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