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哲学をもったアメーバ (アメーバ経営(稲盛 和夫))

2006-12-06 00:03:09 | 本と雑誌

Amoeba  著者の稲盛和夫氏は、1959年(昭和34年)4月京セラ(当時:京都セラミック)を興し、現在同社の名誉会長職にあります。

 稲盛氏の本は初めてです。今まではどうも「食わず嫌い」的な感覚でいました。

 本書は、京セラで実践された経営手法である「アメーバ経営」の要諦を解説したものです。

(p4より引用) 企業が健全に発展していくためには、誰が見ても正しい「経営哲学」と、それにものづく「経営管理システム」を確立することが不可欠である。

 まず、「アメーバ経営」の三つの目的です。

(p31より引用)

  • 第一の目的 市場に直結した部門別採算制度の確立
  • 第二の目的 経営者意識を持つ人材の育成
  • 第三の目的 全員参加経営の実現

 この「第一の目的」で示された「部門別独立採算制度」を支える「独立採算組織」が「アメーバ」です。
 アメーバ組織は、経営状況・市場/競合状況・技術動向等に応じて、臨機応変に変化します。さらに小さなビジネスユニットに分裂する場合もあれば、同種のプロセスどうしで統合する場合もあります。

 この「アメーバ」の成立にも三つの条件があります。

(p61より引用) 第一の条件は、・・・「明確な収入が存在し、かつ、その収入を得るために要した費用を算出できること」である。

(p62より引用) 第二の条件は、「最小単位の組織であるアメーバが、ビジネスとして完結する単位となること」である。・・・アメーバが独立したひとつの事業として成り立ってこそ、リーダーが創意工夫をする余地があり、やりがいが生まれる。

(p64より引用) 第三の条件は、「会社全体の目的、方針を遂行できるように分割すること」である。

 第三の条件は、アメーバは分割された小グループでありながら、「部分最適にならない」ことを求めたものであり、これは難しい条件です。

 この点については、稲盛氏自身も「アメーバ組織の弱点」として以下のように言及しています。
 すなわち、「アメーバ」は「独立採算組織」であるがゆえに

(p78より引用) アメーバ組織では、自分の組織を守るという思いが人一番強くなるために、部門間の争いが激しくなり、会社全体の調和が乱れやすいのである。

との指摘です。

 そして、その問題点の克服方法として、こう続けます。

(p79より引用) 個の利益と全体の利益のあいだで対立が起こると、葛藤が絶えない。その葛藤を克服するには、個として自部門を守ると同時に、立場の違いを越えて、より高い次元で物事を考え、判断することができる経営哲学、フィロソフィを備える必要がある。

 この部門間の葛藤の調整は、最終的には上司による「大岡裁き」のような公平な裁定でというのですが、これもまた難しいでしょう。

(p83より引用) 私は常々、リーダーとは、全き人格者でなければならないと言っている。・・・経営トップはもちろん、アメーバリーダーに至るまですばらしい人間性を備えることが必要である。

 稲盛氏の言は否定はしませんし、「難しい」との一言で済ませるべきではないと思いますが、なかなかです・・・。

 稲盛氏によると、あらゆる経営課題にあたっての判断基準は「人間として何が正しいか」だと言います。
 これは、哲学であり信念です。

 良否の評価は別にして、こういったトップの強力な経営哲学に拠った統一的な経営システムは、これはこれでひとつの理想形かもしれません。

 ちなみに、京セラの「経営理念」は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」だそうです。

アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役 アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2006-09

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