「遠 恋」愛よりも優しくー Ⅶ―

2024-05-14 12:00:53 | 日記
手紙を読んだら、すぐ連絡ください。
電話のそばで待っています。

僕は来週、ここを出て、オレゴン州へ
旅立ちます。成田で僕が詩音ちゃん
を待っていた理由は、

春になったらアメリカに来て、僕と
一緒にオレゴンへ行って、一緒に住
んでもらえないかということを、
詩音ちゃんに直接会って、伝えあた
いと思っていたからなのです。

「返事がYESなら、空港まで来て
欲しい」と、書きました。
 詩音ちゃん、僕は先に「人の気
持ちは他人には絶対にわからない」
と書きました。

冷たい考え方のようですが、これ
は真実だと僕は思っています。
どんなに相手のことを思ってい
ても、別の人間である相手には、
その思いは「わからない」のです。

そして、どんなに深く、一生懸命
相手のことを思っていても、その
相手が同じくらい自分のことを
思ってくれているのかどうか、
それも、わからないのだと思い
ます。

しかし、ひとつだけ、わかるこ
とがあります。それは自分の
気持ちです。

自分の気持ちだけは、わかりすぎ
るほど、わかります。僕が詩音ち
ゃんを思う気持ちは絶対的なもの
で、それは出会った時から今、
この瞬間まで、少しも変わりま
せん。

成田空港では、恥ずかしながら、
僕はひとりでめそめそな泣きま
した。僕は詩音ちゃんが考えて
いるほど、強い人間じゃないよ。

非常に弱虫で、さびしがりやで、
とんでもない小心者です。
心の中の醜い「どろんこいかだ」
が浮かんでくまで、あの展望ロ
ビーのベンチに、じっと座って
いました。

そして、詩音ちゃんが成田に来て
くれなかったことを、詩音ちゃん
の出した最終的な答えとして、
真摯に受け止めようと思っていた
のです。

もうこれ以上、・・・・・。
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