佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

「遠 恋」好きでいさせてーⅥ―

2024-05-06 13:20:15 | 日記
留守番電話のメッセージは?メー
ルは、ファックスは、届いていな
かった?あのひとはわたしがここ
に来るということを、知ってい
た?知っていて、日本へ?

こんなことなら、ただ、「来るな」
とひとこと、連絡してくれたら
よかったのに―――。

思いは胸の中を、矢継ぎ早に駆け
抜けていく。けれどもわたしは
何も言えない。

いっそ、憎んでしまえたら、どんな
に楽だろう。わたしの目の前で、まる
で綿菓子のようにふんわりと、幸福を
にじませて微笑むこの人を、嫉妬の刃
で切り刻むように、烈しく憎んでしま
えたら。
「赤ちゃんは、いつ?」
「もうすぐです。予定日はクリスマス
イブ。すてきでしょう?」

時計を見ると、九時十五分過ぎだった。
「そろそろいきます」
胸の奥から、今にも噴き出してきそう
な熱い塊を喉のたりに押し止めた
まま、わたしは彼女に、包みを差し出
した。

「これ、よかったら、食べてください」
「ありがとう。じゃあ、駅まで車まで
送ります」
そう言って、彼女も立ち上がた。
「その必要はないです。タクシーで
行きますから」

「それはバットアイデア。なぜなら
タクシーを呼んで、車を待っている
あいだに、あなたは駅に着けてしま
う」
彼女の運転する車で、駅まで送って
もらった。駅舎の前に車を寄せると、
彼女は車から降りないで、運転席に
乗ったまま、言った。
「楽しい旅を!」

軽くなった鞄を抱えて、わたしは
駅舎の中に入った。

やがて風の中に、細かい雪の結晶
が混じり始めた。
粉雪は風に乗って、空から舞い降
りてくると、そのまま真っ黒な闇
の中に、次々に吸い込まれてゆく。

それは、あまりにも寂しく、あま
りにも寒々しく、厳しく人を拒絶
してるような光景だった。だがそ
れはその孤高ゆえに、美しいと感
じた。

わたしたちはいったい、どんな風
景を、一緒に見たのだろ。
ベンチに腰かかけたまま、わたし
は静かに、両手のひらで顔を覆っ
た。

叩きのめされ、無惨に割れた胸の
中から、悲しみは血液のように、
あとからあとからあふれ出てくる
のに、わたしの目からはひと滴
の涙も、流れ出てこない。

人に泣くことを許さない、そう
いう種類の悲しみも、この世に
はあるのだ.



 

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ふと・・・こんな詩を思い出しました。

2024-05-06 13:17:38 | 日記

 

 

春の夜に霜が降ったよ
やわらかい青い花にも
その花は枯れて死んだよ

若者が娘に惚れて
親たちの知らないうちに
こっそりと駈落ちしたよ
国々をさすらい歩き
幸せにめぐり合わずに
二人ともやつれ死んだよ


高校生の頃 口ずさんだ
ハイネの詩ですが、どこか
間違っているかもしれませ
んけど・・・・。

この娘さんと男は、決して
生命が終わったのでのでは
なく、愛がやつれて死んだ
のでしょうね。

“国々をさすらい歩き 幸せ
にめぐり合わずに・・・“
とても悲しい詩ですね。
アメリカの女性文学者が、
愛は三年で死ぬと言っています。 

 

 

愛が死に、そしていつか愛情
という型に変わり、普通の男
と女になり、時という大きな
手のひらの中に包まれ、良き
夫婦で晩年を迎える。

移ろう季節をともに歩む
の二人の恋が・・・・


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「水に書く文字のようだね」流れゆく恋だからまた恋がはじまる 

2024-05-06 12:03:55 | 日記

星と星のあいだにあるのは
まっすぐなくらやみではな
くて
ただ見えないだけでたくさ
んの星

まっくらやみのように見える
夜空は 
無数の星で満ちている

からかわれているようなたよ
りない私たちの
人生は
風に吹かれる木の葉のようで
それは あの夜空からとても
遠い

けれどそれは確かにあの夜空
の中にあって
どこかからきっと
あの夜空などと呼ばれている 


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一本の花

2024-05-06 12:02:29 | 日記
一度に持ちきれないほどの
花束をくれる人よりも、

一本の花を毎日くれる人の
ほうがいい。


恋は積み重ねたほうが
頑丈だから。

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食べることは、ザンコクで、楽しくて、すばらしい。

2024-05-06 12:01:09 | 日記

食べ物や料理をテーマに
した文学、映画、絵画の
数々。

偉大な思想は胃袋から生まれる。


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海は、もうひとつの畑なんだ。

2024-05-06 11:58:41 | 日記
海は、もうひとつの畑なんだ。

味噌も醤油も蕎麦も原
料のほとんどは外国産だ
とか。まさかと思うが、国
産で間にあっている農産物
は米とワサビぐらいじゃな
いかという話も聞く。

海の畑は大丈夫なんだろうか。

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「遠 恋」好きでいさせて ―Ⅶ―

2024-05-06 08:46:47 | 日記

見ているのがつらくなり、
そらした視線の先に、半分
ほどあいたドアが見えた。

ドアの向こうには、机とパソ
コン、その奥にベットの一部。
見てはならないものを見て
いるような気持ちになって、
あわてて視線をテーブルの
上に戻した。

「さ、どうぞ。めしあがれ」
ポットからカップにお茶を
注ぐと、カップのひとつを
わたしの目の前に置いて、
彼女はにっこりと微笑んだ。

あたりに、すーっと、ジャ
スミンの香りが立ちのぼる。
「ありがとう、とてもいい香り」
自分でも不思議だった。

どうしてこんなに、冷静でいら
れるのか。彼女に笑顔を返しな
がら「いい香り」などと、言っ
ていられるのか。
「あなた、カイセイのお友だち?」
「はい」

それ以外に、いったいなんと
答えたらいいのか。
「大学時代の?」
「いいえ」
そう答えとあと、尋ねてみた。
「あなたは日本語がわかりますか?」

はにかみがちに、彼女は笑った。
笑いながら、首をふった。
「いいえ。コンニチハとアリガ
トだけね」

会話はそこで途切れてしまい、
ふたりとも、ただ曖昧な微笑み
を浮かべて、向かい合っている
ことしかできない。彼女が先に
真顔に戻った。

「彼は、私たちのことを、彼の
親戚の人に知らせるために、日
本に行きました。亡くなった
彼のお母さんにも」

私たちのこと?

彼女の唇から、軽快に弾き出さ
れる言葉とその意味する内容が、
わたしの頭の中でひとつの像を
結ぶまでに、時間がかかった。

それまでずっと、なりをひそめ
ていた衝撃が、その時になって
やっと、はっきりとした形を成
し、押し寄せてきた。

本物の感情というのは、出来事
に遭遇した直後ではなく、しば
らくしてからじわじわと、やっ
てくるものなのかもしれない。

衝撃はゆるやかに、圧倒的に、
わたしの躰に乗り移ってきた。

まるで毒が効いてくるように、
ゆっくりと、わたしは打ちのめ
された。「裏切られた」。違う。
「信じられない」。いいえ、そんな
言葉とも、違う。

その時のわたしの気持ちは、到底
言葉にはならない種類のものだった。





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ぐっすりが、いちばんのすくり。

2024-05-06 08:42:34 | 日記
ぐっすりが、いちばんのすくり。

くすっと笑うのもくすり
だが、笑えるような時代で
もなし。

だからぐっすり眠って嫌
なことを忘れてしまおう。
 

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「遠 恋」好きでいさせて ―Ⅳ―

2024-05-06 08:39:21 | 日記
「何か、飲み物が欲しい?」
彼女はわたしにソファーを
すすめたあと、リビングルーム
の続きにあるキッチンに立って、
にこにこ尋ねた。

「コーヒー、紅茶、ジャスミン
ティ、グリーンティもあるのよ。
それともあなた、ワインを飲み
ますか」
喉がからからに渇いていた。

「ありがとうございます。じゃあ、
ジャスミンティをいただきます。
その前に、お水を一杯もらえま
すか」
「はい、わかりました」

彼女がお湯を沸かして、お茶の
準備をしているあいだに、わた
しはさり気なくあたりを見回し
た。いや、見回さなくとも、
次々にわたしの目に飛び込ん
できた。

テーブルの上に置かれている
雑誌、英語の新聞、そして日
本語の辞書。ボールペンとメモ
用紙。女物の腕時計。長椅子の
上にはクッションのほかに、
明らかにあのひとのものだと
わかるセーターとシャツ・・・。

それらは「あのひと」であり、
同時に「あのひとの不在」でも
あった。

飾り棚の上には、ファックス用
紙の差し込まれた電話機と、写
真立てがいくつか。大きく引き
伸ばされた彼女の写真。彼女が
両親と三人で写っているものと、
彼女の子ども時代の写真。

その隣に、コックの制服を着て、
クラスメイトと一緒に写って
いる、あのひとの写真。

それは、わたしのよく知ってい
るあのひとのようにも見えたが、
同時に、まったく見知らぬ他人
のようにも見えた。

この部屋で、あのひとは、この
人と暮らしていた。いいえ今も、
暮らしている。

ここには、わたしの知らない
あのひとの生活があり、それは
これからも続いていく。



 

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「自負心」と「自惚(うぬぼれ)」の境界線をしっかり見きわめよ編

2024-05-06 08:37:09 | 日記

人間なら誰でも、自惚はある
ものです。
フランスの作家ラ・フォン
テーヌが、友人を訪問する
と、客間で二つのものを
くらべて、その差異を上手
に言いあうゲームの最中だ
ったそうです。

ラ・フォンテーヌが仲間に
入ると、その女主人は、「
わたくしと時計の違いはな
んでございましょうか」と、
にこやかに笑いながら問題
を出しました。

すると彼は、こう答えたの
です。「時計は時間を思い出
させますが、あなたは時間を
忘れさせます」

この女主人は、他愛のない
ゲームではありますが、自惚
をおおいに満ちたしえたと言
うべきでしょう。こうした他愛
ない自惚なら、別に実害はない
と思いますが、実害が出てくる
ようになると、注意しなければ
なりません。 

 

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あなたに会えたお礼です

2024-05-06 08:35:25 | 日記

この人とよくぞ出会えた、と
思うことが、まれにある。
そう思うからには、その人物
は自分にとって少なからず重
要なに人間(例えば、恋人とか、
恩人とか、特別な友人)なのだ
が、

それにもかかわらず、出会いと
は言えば、何とも頼りない数々
の偶然の上に起こっていること
に、いまさらながら気づく。

あの時、別の道を通っていたら。
家を出るのが五分おそかったら。
バスが一分早く来ていたら。

思えば人間の出会いとは、ぜんぶ
がぜんぶ、そんなことの積み重ね
でできている。そう考えると、な
にか心細くもあり、どこか空おそ
ろしくもあり、よく、考えると、
胸をしめつけられるように切なく
なったりもするのだ。

でも、人と人はそうやって出会う。

六十数億もの人間の中から、数え
きれないほどの奇蹟のような偶然
を乗り越えて、その人に出会って
しまうのだ。出会ってしまうだけ
ではない。その人は自分の人生の
中できわめて大切な役割を果たし
てくれるのである。

でも僕は、そうやって出会った
ふたりを「出会う運命にあった」
などと美化するつもりはない。
出会うことはまったく偶然である。
問題は出会ったあとの関係のつく
りかただ。

新しい人と出会い、その都度、
その人との人間関係を、きちん
とていねいに育てる人を見て
いると、心から尊敬してしまう。 

 

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