ゆう’sful LIFE

感染予防と看護について考えたことや勉強したことを綴っています。

これから登山を考えている人へ:山の感染対策

2020年05月31日 | 感染管理
高尾山では例年の2割程度の登山客だそうですが、この時期って新緑がきれいで気候もいいから、みなさん出かけたくなりますよね。
業種別ガイドラインというものがでていますが、山岳医療救助機構から分かりやすく具体的なガイドが出ていました。
加藤英明先生が監修されているんですね。
登山はするけど、冬は危ないから行かないよ、なーんて以前仰っていました。

発熱などの何らかの体調不良がある場合に行かないのは当たり前ですが、無症状でも感染性があることが指摘されていますし、同行する人がCOVID-19感染者ではないという保証はありません。
SARS-CoV-2の感染リスクとして、三蜜があるわけですが、登山という野外活動自体は三蜜に該当しません。
高尾山や富士山のように、登山道で行列を作るようなことがあっても、基本的にみなさん同じ方向を向いて黙々と歩いているので、飛沫が顔にかかるということも稀でしょう。
ロープや鎖を触ると接触感染が心配かもしれませんね。
これは、手指衛生をするまでは顔に触らない、飲食の前に手指衛生をすることで大丈夫です。

では、感染リスクがある場所や行為とはなんでしょうか。

・登山仲間と休息時や下山後に6フィート=1.8m以内でおしゃべりをしながら飲食をする。
・飲み物をの回し飲みをする。
・山小屋・テントや移動の車の中で、みんなでワイワイマスクを外しておしゃべりをする。

となると、ソロ登山か、現地集合現地解散ですかね。
パーティで山小屋に宿泊するのは、感染者がいた場合はクラスター発生に繋がるリスクがあるといえるでしょう。

感染リスクを避けるために行うことで注意してほしいこともあります。
マスクを着用したままでの登山は、熱中症や酸素飽和度の低下を招く可能性があります。
前述したようなリスクのある場面で着用することをお勧めします。

登山時にケガをすると医療機関はどのような影響を受けるのか?
COVID-19の対応をしているのは、内科系です。
外傷は外科系です。
とはいっても、4月の流行期は外科系医師も総出で対応に当たっていました。
登山をするような山岳近隣のクリニックには、医師を含めた人的ソースは少ないでしょうし、重症でICUを埋めるような状況は、どちらにしても歓迎できるものではありません。
今は少しおさまっていますが、流行期の入院=院内感染を受ける可能性と隣り合わせです。
または、自分自身が感染者であれば、院内感染の原因になるかもしれないのです。

大前提として、安全に登山できること、感染対策をできる人だけが、山に行ってほしいです。
山を歩くことで感染したというエビデンスはありませんが、自宅の出発から帰宅までの過程では、感染リスクがあちこちにあるのです。
そして、山で遭難したり、ケガをしてしまうと、感染対策の意味そのものがありません。
自粛生活で思った以上に体力も落ちています(私も…実感中)。
安全登山と感染対策をセットで、楽しい登山を楽しんでください。

https://sangakui.jp/data/wp-content/uploads/tozan_knowledge_practical0524s.pdf

クラスター対応 その1

2020年05月23日 | 感染管理
近隣ではクラスターの発生が多く、当院も薄氷を踏む思いで日々を過ごしていました。
ある病院からは、発熱だけを理由に”お断り”された患者が、直接紹介され続けて
なんて送り付け方をするんだと憤っていたところ
ある患者でCOVID-19のPCR陽性。
その後も、1人。
当該医療機関は、クラスターが確認され、長期間に渡ってニュースを賑わすことになりました。

その後も近隣では、グループホームや高齢者施設、病院と県内随一の発生地となり
4月に入ってから、保健所さんと訪問支援に行くようになりました。
延べ7施設。
後半、厚生労働省クラスター班の方と一緒になるようになりました。
そこで、ふと気づいたことがあります。
クラスター班の組織の中には、感染対策(感染防止技術)に関する専門家がいない。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000599837.pdf

彼らのいう対策とは、リンクを追い、濃厚接触者をとにかく封じ込め、リンクを断つこと。
見ているのは主に後ろ向きです。
私たちも疫学的分析をして、リスク因子と考えるものに対して対策を講じるという点では視点は同じですが
院内感染のクラスターでは、リスク因子を改善して、医療を継続しなければなりません。
リンクを断つ=医療従事者の濃厚接触者は自宅待機 だけでは、現場の戦線離脱者を大量に生み出すことになり
医療機能の減退につながります。

戦線離脱者をいかに減らし、医療機能を維持するか
なぜ院内感染が発生したのか、感染の連鎖を断つために必要なことはなにかを見出し、対策を講じることが必要です。
おそらく、これからのCOVID-19対策に必須であるこの作業には、ICNの役割が重要でしょう。

昨日、本省の方から電話をいただき、どうやってICNがクラスターが発生している病院や施設に行くようになったのか、そのスキームについて質問を受けました。
途中、彼女が「10年間に渡って培ってきた保健所との信頼関係の基盤があったのですね」とつぶやきました。
2009年のパンデミック以降、いろいろな感染症の取り組みを共に行い、関係を作った方が県内全土に異動され、またそこでICNと関係を作り
そうして2020年を迎えているわけです。
3月から4月の混乱の最中に、時に感情的になる人もいる中で、どうやって命を救うかを真剣に考えることができる関係は、一朝一夕ではできないでしょう。
そう考えると、そういった土壌がない地域で、役割だけで作ったスキームがすぐに有効に機能するかは未知数です。
それでも、今から作っておくにこしたことはありません。
うまくいかなかったら、評価検証し、改善していけばよいのです。
第2波、第3波、来ないといいなあと思いますが、大なり小なり来るのだと思って、今準備をしておくことが必要です。