磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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UP選書40 日本の進路

2009年06月15日 | 読書日記など
『UP選書40 日本の進路』
   衛藤瀋吉・著/東京大学出版会1983年

この時代と今では大きく異なる……。
--一応、冷戦は終わった……。



コレラ菌を飲んだ人がいたという……。下「」引用。

「少壮無名のローベルト・コッホがコレラ菌をコレラの病源と主張したとき、ドイツ医学界の泰斗マックス・フォン・ペッテンコーフェルはこれを嘲笑、培養した菌株を飲みこんで見せた(ペッテンコーフェルは奇跡的にコレラにかからなかったという、稀有のことである)。それからわずか八十年あまり、今日、コレラ菌は地球上のごく限られた地域と、あとは医科大学の研究室かワクチン製造所にしか残っていない。学問の発達、教育の普及、衛生行政技術の向上、そして国際協力の発展などによって、人間はコレラとの戦いでは着実な勝利をおさめてきた。」

政治の呪縛をとりはらうこと……。下「」引用。

「人間が自然科学を宗教や政治の呪縛から解放して以来、実にその発達はめざましいものがあった。人間は「自然」との戦いのあらゆる分野で、しきりに勝ちどきをあげ、「自然」は今やその多くの部分が、人間の管理可能な領域におさめられつつあるといえよう。ところが、人間や人間社会を対象とする社会科学はどうであろうか。まず何よりも、自然科学にくらべると、宗教や政治の呪縛からの解放がはるかにおくれている。つぎに、研究者がもつ先入主や希望的観測、あるいは情緒に流されないように自己を抑える訓練がおくれている。
 この自己を抑えることをけんきゅうしゃの節欲(アスケーゼ)ともいうが、節欲にはきびしい鍛練が必要なのである。たとえば外科医が、苦痛に悲鳴をあげている手術患者を前にして、同情のあまり患者といっしょに昴奮してしまったら、もう手術はできない。-略-」

これは日本だけに限ったことではないだろう……。

石原莞爾はやはり先見性がない。下「」引用。

「かつて石原莞爾は、その世界最終論において、究極兵器による世界平和を推論した。窮極兵器たる熱核兵器、それに付随する光学・科学・細菌兵器の恐るべき発達は、戦争そのものの「果実」と「損害」との関係を大幅に変えてしまった。牧歌的ともいうべき過去の戦争においては、比較的気やすく武器をとって宣戦布告ができた。今日、いかなる国にとっても宣戦布告は、文字通り「死生ノ地存亡ノ道」である。ことに全面戦争となったら、核兵器による戦争はいわずもがな、たとえ通常兵器のみによるとしても大変なことになろう。戦争の手段たる兵器の発達が、逆に戦争阻止要因になるという弁証法的発展は無視できない。」

バランス・オブ・パワー……。下「」引用。

「では、十八世紀以来国際政治を律してきた勢力均衡の概念はどうであろうか。バランス・オヴ・パワーは虚構であり、平和の要因ないし戦争抑止力ではない、とする説もある。たしかに、バランス・オヴ・パワーといっても、何が「力(パワー)」なのか測定しようがないし、測定しようがないから、相対する国はお互いに自己を圧倒的優位におこうとすることになる。だから、その結果は無限の軍備拡張になり、戦争になるおそれが多い。しかしながら、バランス・オヴ・パワー政策はしばしば戦争を招いたのが歴史的 事実であったと同様、バランス・オヴ・パワー政策をとらなかった国ないしとり得なかった国は、戦いを挑まれた場合に、常に敗北したことも歴史的事実である。-略-」

ポーランドとスイス……。下「」引用。

「同様に一九三九(昭和一四)年、イギリスとポーランドは盟約を結び、ポーランドが侵略されたときにイギリスはそのシンリャクコクに対して宣戦布告をすることを誓っていた。たしかにその結果、ナチス・ドイツがポーランドの侵略を開始すると同時にイギリスは対独宣戦布告をした。しかしその盟約によってポーランドは祖国をまもり得たであろうか。否、むしろ逆にポーランドはそのような条約にもかかわらず、ドイツとソ連から分割され、その後苦しい歴史を歩み続けねばならなかったのである。
 これに対してスイスは、すでに述べたように永世中立を宣言し、またスウェーデンは第二次世界大戦中、非常な困難にもかかわらず中立をまもり通した。これらの国々の中立は一片の条約によって成立したものではなく、またまもられたものでもなく、実はその国民の営々とした、自分の国をまもる努力と聰明さによって、まっとうされ得たものなのである。」









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