磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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167死人に口なし

2006年09月01日 | Ra.
ラヂオアクティヴィティ[Ra.]
第二部・国境なき恐怖

十一、チェルノブイリ・クライシス

167死人に口なし



地図がうつる。ドイツがアップされる。そして男性が写り話し出す。

「事故のあと、ここでも、すごく汚染された雨が降りました。そのすぐあと、どうしても自分で放射能を測りたかったので、西ドイツの軍隊が持っている測定器を借りて行ったのです。借りる時、軍人は笑いました。この器械は放射能汚染がケタ違いに大きくないと測れないものだから役に立たない、と説明されたのです。ところがですよ、その器械を持って来て、農場で堆肥のある場所で測ったら、いっぺんに針が振り切れて、器械が壊れてしまったのです。本当に壊れたのです。あんまり汚染がひどくて、軍の人たちも驚いたのですよ、と述べる証言者もいます。それも場所は西ドイツなのですよ」

チェルノブイリ原発が画面にまたも映る。
「動員された兵士たちは、散らばっている核燃料破片を素手で拾い集めました。一キログラムの核燃料破片には、四百二十兆ベクレルもの放射能が含まれているのです。こんなものを手でつかんだりすれば、壊死のために手を切断しなければならないほどの被曝線量でした。彼らは何も知らずにこのような作業をし、多くの者が病院で治療を受けたのです。その中には命を落としたもの、腕を切断したものがいるのです」

ナンシーは、いったい何人の被害者をつくったら気がすむのだろうと思った。

「たとえばチェルノブイリの北西四百キロにあるミンスクは、事故二日後の一九八六年四月二十八日に放射能におおわれ、一時間当たり二十八マイクロシーベルトという通常の約八百倍の値を記録した。しかし、市民には何も知らされなかったのです。快晴のもと、メーデーの行進や記念体育大会の練習が行われ、子どもたちは露店に群がっていました。夕方、にわか雨が降りました。ゆっくりと空から落ちる不思議な雨で、アスファルトには黒いしみが残ったのです。その『黒い雨』を多くの子供たちが浴び、いま後遺症に悩まれさているのです」

広島と同じだと、多くの視聴者は思った。

「四月二十九日モスクワ発のUPI電で、ソ連チェルノブイリ原発事故で、キエフの住民は、八十人が即死、約二千人が病院に運ばれる途中で死亡したと語ったという短いものだったが、これが翌四月三十日の世界の新聞の一面トップを飾って各国にセンセーションを巻き起こしました。後に判明することですが、これはUPIモスクワ支局がキエフのソ連人女性で医療関係者から入手したものでした。四月二十八日、この女性は当局が周辺住民を避難させるため、キエフからバスを送り込み、軍隊を配備したと伝えた。二十九日、さらにこの女性は原発周辺で約八十人が死亡、事故直後の死者数は計二千人に達し、被曝して死んだ何人かの遺体は、核廃棄物処理場に埋められたと語ったのです」

何枚もの新聞が映っていた。

「のちの五月二十二日、UPIの主筆は「何らかの不明な理由で、誤った情報を与えられたようだ」と、第一報の誤認を認めた。が、今となっては、これは誤認ではなかったと話している人もいます。何しろKGBが事故の隠蔽に走ったのです。西側では考えられない選別という段階をへたバス移動なのです。具合の悪い者、あるいは死亡した人を、処理するのは簡単なことと推測できます。
実は事故から四日後の四月三十日、ソ連自身がすでに“死者三百人”のニュースをテレビとラジオで流していました。この人数は、翌朝からニュースに手が加えられ、消え去った。どこで消されたのか。死人に口なし、とはこのことです」

国家のこのような隠蔽は何もソ連だけが行うものではないと、弁護士は話した。

「メーデーに西側のマスコミは何か知っただろうか。ドイツのアマチュア自転車チームが放射能の心配からキエフを引き揚げたという。ロンドン・フェスティバル・バレエがソ連講演を延期した。リヨンのアトレチコ・マドリッドと優勝杯決勝を戦うためにフランスにいたダイナモ・キエフ・サッカチームのメンバーが、ウクライナの家族と電話連絡をとろうと八時間頑張ったが、うまくいかなかった。政府により電話が不通にされていたのです」

空港で電話をかける人、苛立ち、受話器をおく映像。

「たとえば放射能の汚染状態についても、ソ連政府は信用できません。たとえば、シカゴ大学の語学科を出た留学生は母より電報を受け取り、モスクワへ避難した。モスクワではソ連当局が学生たちにガイガー・カウンターをかけて、汚染されていないと告げた。しかし彼らがロンドンに着いた時、彼らの衣服から放射能が検出され衣服は処分されたのです」

ここでも、政府の隠蔽があっただろうとミス・ホームズ。

「メーデーにソ連のラジオを聞いたり、ソ連の公的新聞を読んだりウクライナとベルーシアの人たちはチェルノブイリ事故についてほとんど何も知らされなかった。三回、当局の発表があったが、事故当初二人が死に、一九六人が病院に送り込まれたという事実しか知らなかった。次にソ連閣僚会議が短いコメントを出したのはメーデーのバレードが終わってからでした」

原発サイトがうつる。
「西ドイツのハム原発は、チェルノブイリ事故で大気中の放射能値が高くなったのに目をつけ、これに便乗して自分のところの放射能廃棄物をたれ流しにしたのです。こうしたことは世界じゅうでおこりました。日本でも同じだそうです。信じられないことです……」








閑話休題

チェルノブイリに関する本を読めば、
驚くべきことがたくさん書かれてあります。

死人に口なしなんて、
現代の世の中でありえないことでは?

そう思いたいものですが、
それを否定できる方はいないと思います。







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