『七三一部隊のはなし－十代のあなたへのメッセージ－』
西野留美子・著/日野多津子・さし絵/明石書店1994年
「教えられなかった」……。下「」引用。
「その歴史を分かりにくくしてきたのは、七三一部隊（関連部隊を含めて）の犯した事実を認めることなく、教科書から歴史の真実を隠し、次代に事実を事実として渡すことを回避してきた日本の歴史教育の結果ではないでしょうか。－略－」
マルタは使いたくない言葉だが、当時を表現しているという。
千葉県での試験。下「」引用。
「ところが試験場に着いたとき、すでに試験は終わるところでした。事情を話して何とか受けさせてほしいと頼んだところ、私のために特別に時間を延長してくれたのです。試験官は、七三一部隊長石井四郎の兄の石井剛男さんでした。－略－」
元隊員が口を開きはじめる……。下「」引用。
「ところが、昨年から、彼のように七三一部隊の体験を話す人が、急に増えてきました。それには、大きなきっかけがあります。昨年の七月から、新宿を皮切りに全国各地で、七三一部隊展が開かれています。どの会場にも、中・高生の若者が大勢足を運んでいます。そのうねりのなかで、元隊員の方が名乗りはじめたのです。ほとんどが、戦後一度も公けに話したことがなかった方たちです。－略－」
森村誠一の『悪魔の飽食』について、元隊員。下「」引用。
「森村誠一さんの『悪魔の飽食』を読んで、隊員だった自分も知らないことがたくさんあって驚きましたよ。それで、自分が七三一にいたと知ったら気持ち悪がられるんじゃないかと、そう思うと、また話せなくなってしまいました」
犯罪人を生体実験したと隊員たちはいうが……。抵抗運動をしていたにすぎない人たちと書く著者……。
マルタの条件。下「」引用。
「まず健康であることでした。彼らには「栄養のある」食事が与えられ、短時間でしたが、中庭で日光浴や運動をする時間も与えられました。－略－」
軍医学校がトップ機関。下「」引用。
「これらの部隊を統括していたのは、七三一部隊ではなく、東京新宿にあった軍医学校でした。軍医学校こそが、これら細菌部隊関係機関のトップ機関だったのです。」
女性や子どももマルタ。下「」引用。
「ロ号棟の屋上に上がると、中庭がよく見えるんですよ。そこで女『マルタ』が赤んぼうを抱いているのを見たことがありましたよ」
私はこの話を、複数の元隊員から聞きました。七、八棟と呼ばれていた特設監獄に収容されていたのは、女性も、そして幼い子どももいたのです。いったい女性や幼い子どもは、どんな実験にさらされたのでしょうか。いくつかの史料をみますと、女性には性病研究の実験がなされていたことがわかります。－略－」
“梅毒”体中、六人を生体実験。下「」引用。
「「調べたいのは、体中の変化だ。梅毒に感染した女『マルタ』の症状は、性器だけじゃありませんよ。あらゆるところにを解剖して、はじめて成果が出るんだよ」－略－「斑点は、内臓や筋肉にも出ておったね。黒くなっておった」「……わしが解剖した女『マルタ』は、六体おった。ロシア女が二体と中国の女が二体。それに蒙古が二体……。性器はホルマリン漬けにしたよ」
解剖ができるのは、技師だけ。技師には高等官と判任官があったという。
『マルタ』の男と女をセックスさせる実験。
強姦をした隊員のことを証言（元隊員上田弥太郎）（中国の档案資料館の残る資料）。下「」引用。
「一九四二年四月のこと。「マルタ」が毒ガスの演習に使われたことを知った小林が、「それはもったいないことをした。おれの子どもまで殺しちゃった」と言ったことが、上田の証言記録に残されているのです。つまり小林が「おれの子ども」といったのは、監獄に入れられていた女性を強姦し、その結果女性が生んだ子どものことだったのです。隊員による女「マルタ」の強姦は、こればかりではありません。」
赤ちゃんの生体実験……。下「」引用。
「これらから、そこで生まれた子どもが実験台になっていたことは想像できます。陳列室には、胎児のホルマリン漬けも置かれていたといいますから、出産間近に解剖された取りだされたケースもあったと考えられます。また、凍傷班の吉村寿人の論文のなかに、生後三日から一カ月まで、赤ちゃんを使って凍傷実験したことが書かれています。－略－」
フィルムに撮影されていた（731部隊教育部長・西俊英）。下「」引用。
「私は、一九四○年の中国中部への第七三一部隊の活動に関する記録映画を見ました。まず映画には、ペストで感染されたノミの特殊容器が、飛行機の胴体に装置されている場面がありました。ついで飛行機のつばさに撒布器が取りつけられている場面が写され、－略－」
アメリカと石井隊長の取り引き。下「」引用。
「そして七三一部隊の研究データと引きかえに、石井四郎らを戦争犯罪人として裁かないことを決めたのです。同時にそれは、七三一部隊のりデータがアメリカに独占されることを意味しました。」
埼玉のねずみと朝鮮戦争。下「」引用。
「戦争が終わってからも、埼玉のねずみの飼育は終わっていませんでした。戦争の頃は、軍に納入するねずみが増え、七三一部隊のほかにも、一○○部隊、一八五五部隊、一六四四部隊、東京帝国大医学部、伝染病研究所、陸軍軍医学校、陸軍獣医学校、北里研究所、慶応大学医学部、千葉医学専門学校、京都帝国大学医学部、金沢医学専門学校等々に届けられていたのです。ところが戦後になって、その主な送り先は、アメリカの細菌戦研究部隊であるJ二C四○六部隊になりました。それは朝鮮戦争後、一九五三年頃まで続いているのです。」
もくじ
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西野留美子・著/日野多津子・さし絵/明石書店1994年
「教えられなかった」……。下「」引用。
「その歴史を分かりにくくしてきたのは、七三一部隊（関連部隊を含めて）の犯した事実を認めることなく、教科書から歴史の真実を隠し、次代に事実を事実として渡すことを回避してきた日本の歴史教育の結果ではないでしょうか。－略－」
マルタは使いたくない言葉だが、当時を表現しているという。
千葉県での試験。下「」引用。
「ところが試験場に着いたとき、すでに試験は終わるところでした。事情を話して何とか受けさせてほしいと頼んだところ、私のために特別に時間を延長してくれたのです。試験官は、七三一部隊長石井四郎の兄の石井剛男さんでした。－略－」
元隊員が口を開きはじめる……。下「」引用。
「ところが、昨年から、彼のように七三一部隊の体験を話す人が、急に増えてきました。それには、大きなきっかけがあります。昨年の七月から、新宿を皮切りに全国各地で、七三一部隊展が開かれています。どの会場にも、中・高生の若者が大勢足を運んでいます。そのうねりのなかで、元隊員の方が名乗りはじめたのです。ほとんどが、戦後一度も公けに話したことがなかった方たちです。－略－」
森村誠一の『悪魔の飽食』について、元隊員。下「」引用。
「森村誠一さんの『悪魔の飽食』を読んで、隊員だった自分も知らないことがたくさんあって驚きましたよ。それで、自分が七三一にいたと知ったら気持ち悪がられるんじゃないかと、そう思うと、また話せなくなってしまいました」
犯罪人を生体実験したと隊員たちはいうが……。抵抗運動をしていたにすぎない人たちと書く著者……。
マルタの条件。下「」引用。
「まず健康であることでした。彼らには「栄養のある」食事が与えられ、短時間でしたが、中庭で日光浴や運動をする時間も与えられました。－略－」
軍医学校がトップ機関。下「」引用。
「これらの部隊を統括していたのは、七三一部隊ではなく、東京新宿にあった軍医学校でした。軍医学校こそが、これら細菌部隊関係機関のトップ機関だったのです。」
女性や子どももマルタ。下「」引用。
「ロ号棟の屋上に上がると、中庭がよく見えるんですよ。そこで女『マルタ』が赤んぼうを抱いているのを見たことがありましたよ」
私はこの話を、複数の元隊員から聞きました。七、八棟と呼ばれていた特設監獄に収容されていたのは、女性も、そして幼い子どももいたのです。いったい女性や幼い子どもは、どんな実験にさらされたのでしょうか。いくつかの史料をみますと、女性には性病研究の実験がなされていたことがわかります。－略－」
“梅毒”体中、六人を生体実験。下「」引用。
「「調べたいのは、体中の変化だ。梅毒に感染した女『マルタ』の症状は、性器だけじゃありませんよ。あらゆるところにを解剖して、はじめて成果が出るんだよ」－略－「斑点は、内臓や筋肉にも出ておったね。黒くなっておった」「……わしが解剖した女『マルタ』は、六体おった。ロシア女が二体と中国の女が二体。それに蒙古が二体……。性器はホルマリン漬けにしたよ」
解剖ができるのは、技師だけ。技師には高等官と判任官があったという。
『マルタ』の男と女をセックスさせる実験。
強姦をした隊員のことを証言（元隊員上田弥太郎）（中国の档案資料館の残る資料）。下「」引用。
「一九四二年四月のこと。「マルタ」が毒ガスの演習に使われたことを知った小林が、「それはもったいないことをした。おれの子どもまで殺しちゃった」と言ったことが、上田の証言記録に残されているのです。つまり小林が「おれの子ども」といったのは、監獄に入れられていた女性を強姦し、その結果女性が生んだ子どものことだったのです。隊員による女「マルタ」の強姦は、こればかりではありません。」
赤ちゃんの生体実験……。下「」引用。
「これらから、そこで生まれた子どもが実験台になっていたことは想像できます。陳列室には、胎児のホルマリン漬けも置かれていたといいますから、出産間近に解剖された取りだされたケースもあったと考えられます。また、凍傷班の吉村寿人の論文のなかに、生後三日から一カ月まで、赤ちゃんを使って凍傷実験したことが書かれています。－略－」
フィルムに撮影されていた（731部隊教育部長・西俊英）。下「」引用。
「私は、一九四○年の中国中部への第七三一部隊の活動に関する記録映画を見ました。まず映画には、ペストで感染されたノミの特殊容器が、飛行機の胴体に装置されている場面がありました。ついで飛行機のつばさに撒布器が取りつけられている場面が写され、－略－」
アメリカと石井隊長の取り引き。下「」引用。
「そして七三一部隊の研究データと引きかえに、石井四郎らを戦争犯罪人として裁かないことを決めたのです。同時にそれは、七三一部隊のりデータがアメリカに独占されることを意味しました。」
埼玉のねずみと朝鮮戦争。下「」引用。
「戦争が終わってからも、埼玉のねずみの飼育は終わっていませんでした。戦争の頃は、軍に納入するねずみが増え、七三一部隊のほかにも、一○○部隊、一八五五部隊、一六四四部隊、東京帝国大医学部、伝染病研究所、陸軍軍医学校、陸軍獣医学校、北里研究所、慶応大学医学部、千葉医学専門学校、京都帝国大学医学部、金沢医学専門学校等々に届けられていたのです。ところが戦後になって、その主な送り先は、アメリカの細菌戦研究部隊であるJ二C四○六部隊になりました。それは朝鮮戦争後、一九五三年頃まで続いているのです。」
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