磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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絵本 よっちゃんのビー玉

2006年05月27日 | 読書日記など
『絵本 よっちゃんのビー玉』
     児玉辰春・文/北島新平・絵/新日本出版社1996年

表紙の裏ページに書いてあります。
「「おにいちゃー」--兵隊に行くおにいさんをなきながらおいかけたよっちゃんの上に、八月六日原爆が……! 原爆資料館にある熱でとけたガラスびんにまつわる物語。」



戦争中には、物資もなく、
また生活にもいろいろ、
やっかいなことがありますね。
子どもたちの好きな鯉のぼりも、
あげてはいけなかったようです。
それは敵国の飛行機の目標に
なるからだそうです。

よっちゃんには15歳年上の
お兄さんがいました。
そのお兄さんから素敵な
宝物をもらいました。
それがビー玉でした。

作者の熱い思いが終わりに書かれてあります。下「」引用。

「数学の教師であったわたしが、児童文学の世界へ引きこまれることになるのは、わたしのはじめての本『まっ黒なおべんとう』の出版によってでした。これを読んだヒロシマの子どもたちが、「あの弁当箱にはこんなことがあったの」と、原爆資料館の弁当箱をじーっとみつめていたというのです。
 わたしの頭に弁当箱をみつめる子どもたちの美しい瞳が浮かび、感動の心のひびきが伝わってきたのです。わたしは、文学を通じて幼い瞳を輝かせたい、感動の心を育てたいと思うよにうなりました。
 わずか四歳のよっちゃんが、広島駅の三番線ホームで、兵隊に出ていくにいさんをただひとりで見送ったという話を知ったのはそんなときです。わたしはさっそく、広島駅ちかくの的場町によっちゃんのにいさんの藤塚実(ふづかみのる)さんを訪ねました。藤塚さんは「いまでも広島駅の方をみると、あのときのことが思い出されるのです」と、涙ぐんで話してくださいました。藤塚さんの話に、わたしは心をゆりうごされ、ワープロのキーをたたきつづけました。
 三番線ホームで「おにいちゃーん、おにいちゃーん」と泣きさけび、消え去っていく列車を追い、やがてしょんぼりと立ちすくんでいるよっちゃんのさびしそうな姿が映画のシーンのように思いうかび、わたしはいつのまにかよっちゃんの気持ちになりました。
 わたしは、このお話を『広島駅三番線ホームのわかれ』と題して雑誌に発表しました。すると、多くの方から感動の手紙や電話をいただきました。これを改題して、読み物『よっちゃんのビー玉』を出版したのです。
 それから六年、絵本の魅力にひかれたわたしは、幼い心に感動の種子をまきたいと思ってこのお話を絵本にすることを思いたちました。
 お父さんお母さん、遊び道具もなかった戦中、よっちゃんはこのビー玉にどんな願いを託していたのでしようか。子どもたちは、この絵本からきっとよっちゃんの心のさけびを聞き取ってくれるでしょう。
   一九九六年六月         児玉辰春(こだまたつはる)」





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