磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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親と子の愛と憎しみと

2011年07月15日 | 読書日記など
『親と子の愛と憎しみと』
   歴史と文学の会・編/勉誠出版2008年

芥川龍之介の自殺は有名だけど……。
くわしくは知らなかった……。
--生命軽視の日本らしい土壌に生きた一人の人間・芥川龍之介……。
息子にまで自殺のすすめ……。まるで、古武士のようだ……。



母の愛からではなく……。下「」引用。

「彼女のぞっとする記憶の中にいつもいるのが、「憎々しげな顔でメアリーに指図する母親--メアリーを憎悪に満ちた目で見ていた母親」(同五二○頁)であった。
 メアリーは判決後に刑務所に収監されいくつかの刑務所を転々とするが、母親は刑務所が変わると必ずメアリーに面会に来た。しかしそれは、娘を金稼ぎの道具であった。「メアリーを憎悪に満ちた目で見ていた母親」の態度は一貫して続いていたのである。-略-」

拒絶する子ども……。下「」引用。

「一般に、親が子どもの愛着要求を無視するだけでなく、拒絶し、しかも長期にわたって繰り返し積極的に拒絶する場合は、子どもは親を回避し、さらには親にたいして怒りの態度をとるようになる。そして、親の援助の見込みないことを悟った子どもは情緒的に自分で自己充足的になろうとし、本来の自分を隠して「偽りの自己」を演じるようになる。-略-しかし彼女は一度として母親を捨てようとしたことはないし、むしろ母親をかばってさえ来た。メアリーにとって母親とは何であったのか。
 メアリーが全幅の信頼をおいている一人の博士の次の言葉によって、ジッタ・セレニーはメアリーの「母親に対する真意」をはじめて理解することになる。-略-……子どもが求めているのは、どんな困難を乗り越えても子どもを信じようとする人間の意志なのです」それから博士は静かにこう言った。「子どもが生まれながらしてもっている善なるものを信じようとする人間の意志なのです」(『魂の叫び』四一一頁)。」

芥川の父性愛と自殺……。下「」引用。

「芥川は残してゆく子どもたちに、「人生は戦いである、自分の力を便りとして生きよ、そのためには努力を忘れるな」と教訓しているのである。だが、「人生に敗れたときは自分の父のように自殺せよ」と謂ながら、「他の者に不幸を及ぼしてはならない」とも言う。また、「母を慈しめ」と言うものの、母は慈しむために自分の意志、あるいは進む道と言ってよいのであろうか、それを棄てる必要はない、一時期母への慈しみを断念しても、自分の目標が達成されたときは、むしろ母にとってもそれは「幸福」となると諭している。いかにも芥川らしい文章であるが、三五歳の人間にしては、随分と老成した教訓といえる。自殺は身勝手な行為である。しかし、自分には自殺しかたどる道がない。とはいえ、残してゆく子どもたちのことは気がかりである。この遺書には激したところはない。むしろ、まことに冷静である。そして、芥川の父性愛を感じ取ることができる遺書である。」

芥川と養父母……。下「」引用。

「しかし龍之介は一方で「養父母に孝」という倫理に従いそれに縛られた生活を送った。家庭人芥川龍之介は、いつも養父母と伯母ふきに遠慮しがちの生活を送らざるを得なかったのである。昭和二年三月に発表された「河童」という小説で詩人河童トックが自殺した場面でマックという名の河童に「トック君の自殺したのは詩人として疲れてゐたのですね」と言わせたり、「かう云ふ我儘な河童と一緒になった家族は気の毒ですね、何しろあとのことも考へないのですから」と河童同士が対話している場面がある 。また子供が生まれる際に父親が胎内の子供に生まれたいかを問う場面がある。すると腹の中の子は「僕は生まれたくありません。第一僕のお父さんの遺伝は精神病だけでも大へんです」と答えているのも、龍之介が精神病の母を持ち、その遺伝は晩年は特に気にしていたことに突き当たる。「何の為にこいつも生まれて来たのだらう。この娑婆苦の充ち満ちた世界へ。何のために又こいつも己(おれ)のやうなものを父にする運命を荷ったのだらう」と書いたのは『或阿呆の一生』の中で龍之介の長男芥川比呂志が誕生した際の「出産」という章である。-略-」

index

英世と母……。下「」引用。

「英世は医学者・研究者という生き方を貫き通し、シカは農作業や産婆など様々な仕事に従事し家を守り続けた。この親子の具体的な生き方を全く違うが、二人の心に流れる正直と忍耐という情念は、同じように通底していたのである。猪苗代の貧村生活の中で、愚鈍に正直を旨とし、黙々と耐え忍び働く母の姿を見て育った英世に、正直と忍耐が植え付けられたのであろう。母の情念が、遠隔から息子を育てたのである。「偽」と「きれる」が横行している現在、切実に、親子の間で「正直」と「忍耐」が必要とされているのではないだろうか。
 冒頭の掲げた一通の手紙は、今に至るまで、手紙の力・母の情念を我々に諭してくれている。」










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