総理がコジキでコジキがソーリィー 206 『いじめに勝つ!』って本 「ぼくね、この『いじめに勝つ!』って本は大嫌いなんだよ。愛情的恫喝って、よく書いてあるんだけど、自殺する人は愛情的恫喝をしているんだって、人を脅しているだって……」 「ひどいことをされた被害者が訴えることが、愛情的恫喝なのかしら……」 怒る沙也加。 それに反して冷静なソーリィー。 「そんなことはない。すべての人とは言えない、ケース・バイ・ケースだけど。きみの場合はそんなことはない。相手はきみが自殺しようとしたことさえ知らないだろう。その本は条件づけが甘いんだよ。たしかに、自殺するふりをして、相手からお金を奪おうとする人もいた……」 「そんな人がいるの……」 「でも、心理学者が、自殺企図のある人たちについて、こんなバカなことを書いているのは、きみが驚いても仕方がないことだよ。自殺についての本にも、時にはこのようなバカな心理学者がいるが、たいていの専門家はそんな専門家を否定しているよ」 --学者の世界というのも階級社会である……。 それを改革しようとする人たちもいる……。 上が白を黒といえば、黒となる社会でもある……。 そんなことになっている学者の世界も一部には存在する。 広島の放影研というABCCの仕事をひきついだ学者は、チェルノブイリでひどい報告をした。 「専門家なら正しいってこともないし、有名だからって間違ったことを書かないとはいえないのよ。ナチス・ドイツの時代の学者はヒトラーに気に入られようと思ってか、あるいはその前から差別主義者でユダヤ人や有色人種は、白人より劣等であると証明したという論文を発表していた学者もいるのよ。でも、それが正しいとは、当時から多くの学者は認めてはいなかったのよ」 「ふーん、学者でもいろいろいるんだなあー。でも、ぼくの宿題はどうしたものか、ぼくにはわからない」 高橋青年は、その本を手にとり読んでいる。 「いじめらる人は、いじめられる状態を知らず知らず自ら作り出している……」 「もっともらしいけれど、これは泥棒にあった人が悪いという論理だ」 と、ソーリィー。 「好きでもない人とつきあう必要もない。好きでもない人に好かれようとするから悪いのだ……。何のこっちゃ?」 「まったくね……。いじられているのであって、好きとか嫌いとかの問題じゃない。すりかえているのよ」 「この著者は大学の先生、それにベストセラー作家でもある。だから、好きでもない人とはつきあわない。つまり、いじめられっ子とはつきあわないと書いているんだなあー」 と、ソーリィーが笑った。 「お見事な論理だわ」 「『いじめに勝つ』じゃなくって、『いじめ“で”勝つ!』が、本の内容にあっているなあー」 「高橋くんも、なかなか表現が上手になったね」 と、ソーリィーが笑った。 「こんな本をお手本にして自殺した子がいたら、その子の親御さんは裁判で訴えてほしいよ。こんな、出鱈目な本を気安く出版できないようにしてもらいたいよ……」
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