磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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黒い蝶 原爆前後の手記

2008年05月10日 | 読書日記など
『黒い蝶 原爆前後の手記』
   松岡鶴次・著/季節社1960年

体験記といっていいかと思います。広島の方のものです。



「序」を市長が書いています。下「」引用。

「この書によって、今や民族やイデオロギーを越え、輝く平和世界の建設をめざして、大きく生きつづけようとしている広島の意志や更に深く理解いただけるなら、無数の犠牲者に対してもこれにすぎる散華はないと存じます。
  一九六○年七月一日  広島市長  浜井信三」

高射砲は無駄だと思われていたようです。下「」引用。

「珍しく空襲警報は鳴らないのに、夜を掠めて高射砲の唸りがいんいんとして聴こえて来る。無駄な弾なら打たずに置いて貰いたいと思う。いたずらに折角静かな夜を粗れた声で怒鳴ってもらいたくない。
 皇軍が必死に守り抜かんとした硫黄島も全員玉砕となる。」

広島名産。下「」引用。

「なお山の近い有り難さは六月ともなれば、太田川の鮎にはじまり、秋の味覚の楽しみの一つとして美しい山の幸がある。香り高い松茸の味は新庄なばと言って広島でなくては味わえないさえ思うくらいで、広島名産の一つである。」

その日の八時十分、枕峠、笠原の木陰で腰を下ろしていたという。下「」引用。

「前方の下界は広島方面であるが、吾子や弟妹や多くの親戚友人達自分とは因縁も深い人達がそれぞれの気持で又各自の職場で働いている。-略-私はゆるんだ巻ゲートルを巻直して立ち上がろうとした瞬間、ピッカリと光って強烈な線光が目を視した。あらッと思う間潑入れずドンッと轟音が地球も揺らいだかと思う程の響をこの中国山脈の上まで伝えて来た。重なり会った山々も地軸もゆらいで来ると同時に魂さえゆさぶる其響きと風圧に思わず私は山の峠の上でどんツと尻餅をついてしまった。
 地球をゆさぶるような其音は雷ではない余りにも音響大過ぎる。-略-」

無警察状態だったという。下「」引用。

「三日間は倉庫の焼跡を整理した。懐かしい土地の香りはないけれども、長年使って来た機械類や溶解してはいるが-略-終戦この方無警察状態の今となっては果たして盗難に会わずに住むとも思われないのでその壗放置も出来ず、執着もあるので終日炎天の中にあえぎ乍ら整理に励んだ。」

原爆症で苦しむ我が子。下「」引用。

「九月六日
 きょうで二昼夜長女千代の枕辺を離れずにいる。自分の脳裏さえ迷夢の混乱の中に彷っている。千代の可細い体には初めは紅く次第に紫色に変色して来る斑点が無数に現われて来た。五六時間すると其斑点は黒いしみとなって残り又新しい斑点が現われて来る。」

著者の言葉。下「」引用。

「ここに原爆投下十五周年にあたり、犠牲者に対して深甚なる冥福を祈るとともに世界の恒久平和を念願するものであります。終わりに終始御助力を頂いた中国新聞社学芸部長金井利博氏、および広島大学中野清一教授、同今堀誠二教授並びに広島短期大学大原三八雄教授の緒先生方の誠意に対して、衷心より御礼申上げる次第であります。   著者識」







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