『放射能から子どもの未来を守る』
児玉龍彦、金子勝・著/
ディスカヴァー・トゥエンティワン2012年
東京の水……。下「」引用。
「3月21日に降った雨は放射性物質で汚れていた。
東京都は3月23日、金町浄水場の水が、乳幼児の基準の2倍以上の放射性ヨウ素で汚染されていると発表した。」
甲状腺がん……。下「」引用。
「しかし、4月12日、西山さんは、レベル7だと突然言いだした。これはチェルノブイリ級だということだ。
甲状腺がんを本当に心配しなくてはいけなかったのだ。-略-」
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マスコミは何を報道していたのだろうか? 下「」引用。
「メルトダウンしたあとで、とにかくメルトダウンを避けることが大切と解説していた東大や阪大の教授というのはなんなのだろう?」
「国民の義務だ」山下俊一。ナチス幹部もこんなことを言った!? 下「」引用。
「避難した原発周辺の住民は何も知らされていなかったという。避難を伝えにきた人は、白い防護服を来て、マスクを着けていたという。放射能を浴びることを知っていたというのだ。
長崎大学の山下俊一氏は、3月21日福島市、4月6日飯舘村、4月17日伊達市、などにおいて、次々と講演会を行い、100ミリシーベルトまでは大丈夫、避難する必要はない、笑っていれば被害が少ない、などといった楽観的発言を繰り返した。
しかし、山下氏が講演した飯舘村では、5月後の4月11日に突然、「計画的避難区域」に指定、全村民の避難が政府から指示され、村長以下が愕然とした。
5月3日二本松市の講演では、100ミリ以下では発がんリスクは証明できない、10ミリ/年程度の福島や二本松は心配ない、と断言し、不安をもって悲観するより、ここに踏みとどまって、安全だと思って活動しなさい、とした。
しかし、山下氏は、福島原発事故以前は、学校で、放射能を使うPETやCT検査の医療被曝については、2ミリシーベルト程度の自然放射線と同じレベルについても「医療被曝の増加が懸念される」と述べ、学問的には危険性を認め対応を勧めている。
にもかかわらず、事故後の危険なレベルは政治的に決められるべきとし、放射線に弱い小学生の校庭は3.8マイクロシーベルト/時(33ミリ)と国が決めた以上、それにしたがうのが「国民の義務だ」とまで極言した。
この発言に対して多くの住民は怒りはじめたという。山下教授は招いた二本松の三保市長ご自身も、この専門家についていっては市民の健康は守れないと、危機感をもったことだろう。
山下教授の講演会をわざわざ聞きに行った福島のお母さんから、山下氏の発言を聞いて「地獄を見た」と、聞かされた。甲状腺の専門家である山下教授は、今、放射性ヨウ素はまったくなくなっている、と言ったが、質問に立った母親から、土壌検査で今も6000ベクレル/キロ出ている、という具体的な数値を諄々(じゅんじゅん)と示され、科学者としての山下教授の態度にさらに疑念がつのることとなった。」
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帰宅難民だった金子勝。避難所は居酒屋。下「」引用。
「金子 それが、学校はもういっぱいでした。なので、結局、駅前の朝までやっている居酒屋で夜を明かすことにしました。偶然、同じところに入った若者たちと一緒に。そして、日付が変わって翌12日、福島原発がどうも危ないっていう話になっていて。そこで、ある原子炉に詳しい人物と連絡をとったら、その人から「かなりヤバイな。たぶん壊れただろう」と言われたんです。」
「情報封鎖 中村審議官の突然の交代」 下「」引用。
「金子 中村審議官は、わりと正直に情報を話す人だという印象がありました。それがクビになった時点で僕は確信を持ちました。間違いない。メルトダウンしている。
でも、ツィッターを書いたあとには、ものすごい勢いでツイートが返ってきました。それも「おまえ、証拠はあるのか?」「メルトダウンなんてありえない」というものがほとんどです。「メルトダウンなんて書くと風評被害をもたらす」だとか、「東電の社員や現場の作業員はがんばっている」「消防隊はがんばっている」というのに、「おまえはこういう英雄的な行為に対して足蹴にするようなことを言っていてけしからん」というんです。僕がそのとき、直感的に連想したのは戦争中のことだった。」
元東電社員で、プルトニウム飲めるの大橋弘忠教授。下「」引用。
「ところで、僕らからか見ると、大橋先生というのは工学系の人であって、医学生物学のことをぜんぜん知らない人なんですよ。いわゆる原子力ムラという存在の本当の悪質さを僕がいちばん感じたのは、小出先生との討論の場に、その大橋先生をぶつけてくるというやりかたですね。なぜかというと、大橋先生は自分でプルトニウムの生物実験をやるはずがないんですよ。」
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市長ベタ誉め? 下「」引用。
「児玉 初めて除染に出向いた頃ですが、南相馬市の桜井勝延市長は非常に立派なかたで、「まず子どもを守ってほしい」と僕たちにお話になりました。」
ゴフマン。下「」引用。
「ゴフマンは、初め、核物理学者のシーボーグのもとで研究を続け、ウラン233の核分裂を世界で初めて証明した気鋭の学者であった。しかし、原爆をつくるマンハッタン計画から抜け出して、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で医師になる。
ゴフマンは、そこでコレステロールの研究にたずさわる。コレステロールは血液中では巨大なリポタンパクという粒子をつくって運ばれる。彼は、当時、開発されてきた1分間に10万回回転するものすごく早い遠心器(それは「超」遠心器と呼ばれた)を用いて、リポタンパクを比重の高いもの=HDL(高比重リポタンパク質)と、比重の低いもの=LDL(低比重リポタンパク質)に分けた。そして、コレステロールを血管壁に溜めてしまうLDLが悪玉であり、コレステロールを血管壁から引き抜き動脈硬化を防ぐHDLが善玉であることを発見し、『Nature』とならぶ世界のトップジャーナルである『Science』に報告した。
こうした業績をひっさげて、ゴフマンはアメリカの核研究の総本山であるローレンスリバモア研究所の生物学部長に選ばれる。ここでゴフマンは、低線量の被曝について、すべての文献を集め、従来いわれていたよりも、20倍もがんになる危険性が高いをまとめた。
ゴフマンの考えは、しっかりした理論と、しっかりしたデータを集めることにより未来が予測できる、という考え方であった。」
「おわりに 子どもの未来は日本の未来」金子勝。下「」引用。
「この歳になって、心のふるえが止まらないという感覚を覚えるとは思いませんでした。言うまでもなく、福島第一原子力発電所の事故のあと、東電だけでなく政府も役所も学者も、放射能が人々に、特に子どもと妊婦に与える被害を防ごうと動かなかったからです。それどころか、情報を隠して問題を放置してきした。不良債権問題、イラク戦争、小泉「構造改革」、原発事故と、この「失われた20年」の間、誰ひとり責任をとらず、失敗も総括しない、この国はついにここまで来たのかという思いもよぎりました。子どもたちは、そしてこれから生まれてくる子どもたちは、どうして生きていくんだろうと思うと、自分たちの責任を痛感せざるをえません。-略-」
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目 次
児玉龍彦、金子勝・著/
ディスカヴァー・トゥエンティワン2012年
東京の水……。下「」引用。
「3月21日に降った雨は放射性物質で汚れていた。
東京都は3月23日、金町浄水場の水が、乳幼児の基準の2倍以上の放射性ヨウ素で汚染されていると発表した。」
甲状腺がん……。下「」引用。
「しかし、4月12日、西山さんは、レベル7だと突然言いだした。これはチェルノブイリ級だということだ。
甲状腺がんを本当に心配しなくてはいけなかったのだ。-略-」
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マスコミは何を報道していたのだろうか? 下「」引用。
「メルトダウンしたあとで、とにかくメルトダウンを避けることが大切と解説していた東大や阪大の教授というのはなんなのだろう?」
「国民の義務だ」山下俊一。ナチス幹部もこんなことを言った!? 下「」引用。
「避難した原発周辺の住民は何も知らされていなかったという。避難を伝えにきた人は、白い防護服を来て、マスクを着けていたという。放射能を浴びることを知っていたというのだ。
長崎大学の山下俊一氏は、3月21日福島市、4月6日飯舘村、4月17日伊達市、などにおいて、次々と講演会を行い、100ミリシーベルトまでは大丈夫、避難する必要はない、笑っていれば被害が少ない、などといった楽観的発言を繰り返した。
しかし、山下氏が講演した飯舘村では、5月後の4月11日に突然、「計画的避難区域」に指定、全村民の避難が政府から指示され、村長以下が愕然とした。
5月3日二本松市の講演では、100ミリ以下では発がんリスクは証明できない、10ミリ/年程度の福島や二本松は心配ない、と断言し、不安をもって悲観するより、ここに踏みとどまって、安全だと思って活動しなさい、とした。
しかし、山下氏は、福島原発事故以前は、学校で、放射能を使うPETやCT検査の医療被曝については、2ミリシーベルト程度の自然放射線と同じレベルについても「医療被曝の増加が懸念される」と述べ、学問的には危険性を認め対応を勧めている。
にもかかわらず、事故後の危険なレベルは政治的に決められるべきとし、放射線に弱い小学生の校庭は3.8マイクロシーベルト/時(33ミリ)と国が決めた以上、それにしたがうのが「国民の義務だ」とまで極言した。
この発言に対して多くの住民は怒りはじめたという。山下教授は招いた二本松の三保市長ご自身も、この専門家についていっては市民の健康は守れないと、危機感をもったことだろう。
山下教授の講演会をわざわざ聞きに行った福島のお母さんから、山下氏の発言を聞いて「地獄を見た」と、聞かされた。甲状腺の専門家である山下教授は、今、放射性ヨウ素はまったくなくなっている、と言ったが、質問に立った母親から、土壌検査で今も6000ベクレル/キロ出ている、という具体的な数値を諄々(じゅんじゅん)と示され、科学者としての山下教授の態度にさらに疑念がつのることとなった。」
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帰宅難民だった金子勝。避難所は居酒屋。下「」引用。
「金子 それが、学校はもういっぱいでした。なので、結局、駅前の朝までやっている居酒屋で夜を明かすことにしました。偶然、同じところに入った若者たちと一緒に。そして、日付が変わって翌12日、福島原発がどうも危ないっていう話になっていて。そこで、ある原子炉に詳しい人物と連絡をとったら、その人から「かなりヤバイな。たぶん壊れただろう」と言われたんです。」
「情報封鎖 中村審議官の突然の交代」 下「」引用。
「金子 中村審議官は、わりと正直に情報を話す人だという印象がありました。それがクビになった時点で僕は確信を持ちました。間違いない。メルトダウンしている。
でも、ツィッターを書いたあとには、ものすごい勢いでツイートが返ってきました。それも「おまえ、証拠はあるのか?」「メルトダウンなんてありえない」というものがほとんどです。「メルトダウンなんて書くと風評被害をもたらす」だとか、「東電の社員や現場の作業員はがんばっている」「消防隊はがんばっている」というのに、「おまえはこういう英雄的な行為に対して足蹴にするようなことを言っていてけしからん」というんです。僕がそのとき、直感的に連想したのは戦争中のことだった。」
元東電社員で、プルトニウム飲めるの大橋弘忠教授。下「」引用。
「ところで、僕らからか見ると、大橋先生というのは工学系の人であって、医学生物学のことをぜんぜん知らない人なんですよ。いわゆる原子力ムラという存在の本当の悪質さを僕がいちばん感じたのは、小出先生との討論の場に、その大橋先生をぶつけてくるというやりかたですね。なぜかというと、大橋先生は自分でプルトニウムの生物実験をやるはずがないんですよ。」
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市長ベタ誉め? 下「」引用。
「児玉 初めて除染に出向いた頃ですが、南相馬市の桜井勝延市長は非常に立派なかたで、「まず子どもを守ってほしい」と僕たちにお話になりました。」
ゴフマン。下「」引用。
「ゴフマンは、初め、核物理学者のシーボーグのもとで研究を続け、ウラン233の核分裂を世界で初めて証明した気鋭の学者であった。しかし、原爆をつくるマンハッタン計画から抜け出して、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で医師になる。
ゴフマンは、そこでコレステロールの研究にたずさわる。コレステロールは血液中では巨大なリポタンパクという粒子をつくって運ばれる。彼は、当時、開発されてきた1分間に10万回回転するものすごく早い遠心器(それは「超」遠心器と呼ばれた)を用いて、リポタンパクを比重の高いもの=HDL(高比重リポタンパク質)と、比重の低いもの=LDL(低比重リポタンパク質)に分けた。そして、コレステロールを血管壁に溜めてしまうLDLが悪玉であり、コレステロールを血管壁から引き抜き動脈硬化を防ぐHDLが善玉であることを発見し、『Nature』とならぶ世界のトップジャーナルである『Science』に報告した。
こうした業績をひっさげて、ゴフマンはアメリカの核研究の総本山であるローレンスリバモア研究所の生物学部長に選ばれる。ここでゴフマンは、低線量の被曝について、すべての文献を集め、従来いわれていたよりも、20倍もがんになる危険性が高いをまとめた。
ゴフマンの考えは、しっかりした理論と、しっかりしたデータを集めることにより未来が予測できる、という考え方であった。」
「おわりに 子どもの未来は日本の未来」金子勝。下「」引用。
「この歳になって、心のふるえが止まらないという感覚を覚えるとは思いませんでした。言うまでもなく、福島第一原子力発電所の事故のあと、東電だけでなく政府も役所も学者も、放射能が人々に、特に子どもと妊婦に与える被害を防ごうと動かなかったからです。それどころか、情報を隠して問題を放置してきした。不良債権問題、イラク戦争、小泉「構造改革」、原発事故と、この「失われた20年」の間、誰ひとり責任をとらず、失敗も総括しない、この国はついにここまで来たのかという思いもよぎりました。子どもたちは、そしてこれから生まれてくる子どもたちは、どうして生きていくんだろうと思うと、自分たちの責任を痛感せざるをえません。-略-」
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