磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

鱧男の小説などをUP。環境問題に戦争・原発を!環境問題解決に民主主義は不可欠!

世紀の閃光

2008年03月03日 | 読書日記など
『世紀の閃光』
   稲富栄次郎・著/廣島図書1949年

伝えなければならないという使命感は、すべての人たちにあったわけではない。その当時のことを、きちんと理解するためには、そのような使命感をもった人たちの文章は貴重だとボクは思う。



はじめの方で書かれてあります。下「」引用。

「原爆の当日、私はとてもじっとしていられない気持だったというのは、必ずしも当日の痛ましい情景を、あちこち見て廻ったという意味ではない。筆を以て生きて来た私には、その日の衝撃を、じっと胸の中だけに収めておくことができなかったのである。そして滅茶滅茶に破壊された足の踏み場もない、混乱と狼藉とを極めた室の一隅で傷ついた右腕をつるしながら、私は兀々と禿筆(とくひつ)を振るった。」

台風で資料が……。下「」引用。

「私が本書を書き綴るにあたり、あの直後に書き残した手記を唯一の拠り所にしたことは言うまでもない。けれどもあの手記は、九月始めの長雨(ちょうう)と颱風(たいふう)とに、散逸した部分や汚損した部分も少なくはなかった。また真実に対する無知から、その当時の錯覚をそのまま記した所もなくはなかった。」

投下前にはこんな噂もあったという。下「」引用。

「広島には敵のスパイが沢山潜(もぐ)りこんでいるそうだ。だから空襲がないそうだ。」
などとまことしやかに言いふらす者もあった。」

空襲警報を伝えるラジオの様子。下「」引用。

「こうして遠い異国の空に想像していたB29の銀翼が、もはや日本の空の乗客となって明けても暮れても、ラジオが、
「ジャー」
という、やけに悪質の金属を軋(きし)らすような信号と共に、空襲警報を報ずるようになると、祖国の悲劇も、黒いカーテンを下したまま、いよいよそのカタストロフィに直面したような感じがするのだった。」

科学学級などというものがあったようです。下「」引用。

「八月六日の朝、木村は朝食後の一時を、妻の美知子と対坐(たいざ)しながら、昨夜の空襲のことをきっかけに、色々な話をした。朝七時前、広島工専の勤労動員で、大洲町(おおずまち)の工場に出かけて行った長男隆(たかし)のこと。十日ばかり前から、科学学級(かがくがっきゅう)の疎開 で、東城に行っている次男彬夫(あきお)のこと。」

焼夷弾の知識もあったようです。下「」引用。

「「テルミット焼夷弾だろうか。いやエレクトロン焼夷弾だろう。いやいやそすうでもなさそうだ。勿論油脂焼夷弾だとは思わない。」
木村はかつて、東練兵場で実験された。各種焼夷弾爆発の実況を想い出したり、隣組に配布された、防空ビラの説明を想い浮かべたりした。けれどもどの実験も、どの説明も、今眼(ま)のあたりに見る事態とはぴったりしない。」

たまたま一機きて、たまたま我家に爆弾を一つ落としたのだろうと最初は想ったという。

僧侶たちの様子が描かれています。下「」引用。

「すると突然左方から、激しい物音が聞えて来た。見れば三名の日蓮宗の僧侶が独鈷(どっこ)をたたき、題目を唱えながら屍に掩われた十字路を、はすかいに横切って行くのである。力の限りたたく独鈷の音は、あちこちに焼け残った建物の残骸にこだまして、焦土の町全体をはげしくゆさぶるようだった。腸(はらわた)を絞るような「南妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の叫びは、虚空(こくう)に反響して、焦熱(しょうねつ)の砂漠に、洪水のように流れて行った。一望ただ寂(せき)として、虫の音一つ聞えぬ死の町に、これはまた何という逞しい威力の表現だろう。灰燼(かいじん)の中に眠る十万の生霊(せいれい)を、たたき起さずにはやまないといったような、すさまじい勢いである。
 木村は勿論日蓮宗の信者ではない。日蓮宗の教えがどんなものであるかということも、木村の知るところは、ただ常識の域を、一歩も出ずるものではないのである。けれどもそんなことはどうでもよいことだった。ああした鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)たる屍の街で、たとえお題目だろうと念仏だろうと、兎も角も絶対の世界を気求する、はげしい宗教的な生命の躍動に触れたということが、木村にとっては電撃的な感銘だった。」

心に余裕がある時は、こんなふうにも想えるものだとボクも思います。

仏教関連の人たちも平和運動をされています。

index


しかし、日常と切り離してしまったのなら、あまり意味がないとボクは思います。

ただのパフォーマンしたら……。

でも、そうでないように、平和をもとめている人たちはされているようです。


著者は当時文理大の教授だったようです。
くわしくはここをクリックしてください。










index





エンタメ@BlogRanking







最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。