III.手袋山
C032.『泣き面に蜂』
今は水草だけが、川の流れに流されていた。パパが足をひっかけたのはあのあたりかしら。ユリカが昨年のバーベーキューのことを思い出していると、雨がポツンと肩に落ちてきたのがわかった。
空を見上げると分厚い雲が空をおおっていた。
「いやだな。雨にぬれるの」
ユリカはあたりを見まわしたが、家なんて一軒もない。それで、大きな木の下にでも行って雨をしのごうと思った。走り出すとき草に足がからまって、べたとこけてしまった。
おばあさんの口ぐせの言葉を思い出した。『泣きつらに蜂』、きっとこんな時のことを言うのだろうと思った。
ユリカは激しく降る雨で、泥を落とした。
ヤスとチャボは藪蚊(やぶか)に刺されつつも、水晶をさがしていた。
「おい、すごく暗くなったな」
木の葉にぶつからず落ちてきた雨粒が、チャボの顔の上に落ちた。
「雨、降ってきたみたいや」
チャボはヤスに言った。
「涼しくなるで」
とヤスは笑った。けれど、目は一心に水晶をさがしていた。
宝石の美しさの虜とりこになるのは女の人ばかりとは限らない……。
ユリカは考えてみれば、こんなに遠くまで一人で来たことが、今までなかった。
ユリカは大きな木の下で、膝をたててすわった。そして、ひざの怪我を見つめた。血が流れていた。
とっても不安な気持ちがした。それに、こんなに天気が悪いのに一人だなんて、いやだなあと思った。
ピカッと稲妻は走り、バリバリどころか、ドスンと雷はお腹まで響く大きな音になった。山は雷が落ちやすいんだというパパの言葉を思い出した。
雷のときは、木の下にいるのは危険なことなんだと思ったが、どうしたらいいのかわからなくって、ユリカはそのまま木の下にいた。本当は危険なのだが……。
↓1日1回クリックお願いいたします。
ありがとうございます。
[レインボー・ループ]もくじ
C032.『泣き面に蜂』
今は水草だけが、川の流れに流されていた。パパが足をひっかけたのはあのあたりかしら。ユリカが昨年のバーベーキューのことを思い出していると、雨がポツンと肩に落ちてきたのがわかった。
空を見上げると分厚い雲が空をおおっていた。
「いやだな。雨にぬれるの」
ユリカはあたりを見まわしたが、家なんて一軒もない。それで、大きな木の下にでも行って雨をしのごうと思った。走り出すとき草に足がからまって、べたとこけてしまった。
おばあさんの口ぐせの言葉を思い出した。『泣きつらに蜂』、きっとこんな時のことを言うのだろうと思った。
ユリカは激しく降る雨で、泥を落とした。
ヤスとチャボは藪蚊(やぶか)に刺されつつも、水晶をさがしていた。
「おい、すごく暗くなったな」
木の葉にぶつからず落ちてきた雨粒が、チャボの顔の上に落ちた。
「雨、降ってきたみたいや」
チャボはヤスに言った。
「涼しくなるで」
とヤスは笑った。けれど、目は一心に水晶をさがしていた。
宝石の美しさの虜とりこになるのは女の人ばかりとは限らない……。
ユリカは考えてみれば、こんなに遠くまで一人で来たことが、今までなかった。
ユリカは大きな木の下で、膝をたててすわった。そして、ひざの怪我を見つめた。血が流れていた。
とっても不安な気持ちがした。それに、こんなに天気が悪いのに一人だなんて、いやだなあと思った。
ピカッと稲妻は走り、バリバリどころか、ドスンと雷はお腹まで響く大きな音になった。山は雷が落ちやすいんだというパパの言葉を思い出した。
雷のときは、木の下にいるのは危険なことなんだと思ったが、どうしたらいいのかわからなくって、ユリカはそのまま木の下にいた。本当は危険なのだが……。
閑話休題 盆地の雷はよく響きます。 山ではさらによく響きます。 高い山での雷の動きは、 平地とはちがいます。 人体に落雷すると絶命することあります。 それについて理解する必要があると思います。 たとえ建物であっても、 側撃雷で死亡した例もあります。 まわりに高い建築物などがない場合、 建物の内であっても、柱などに落雷する危険があります。 そのとき側撃雷によって死亡された事例があります。 柱などからも離れることが大切らしいです。 |
↓1日1回クリックお願いいたします。
ありがとうございます。
[レインボー・ループ]もくじ