黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

三池炭鉱 #21:炭鉱電車

2014-02-15 16:21:44 | ・三池炭鉱
シリーズでアップしている三池炭鉱。
文化財等には指定されていないものの、
三池炭鉱の足跡を後世に残す意味で重要な残存施設。
今回は三池鉄道の保存機関車群です。

三池炭鉱が閉山した時に、
四輛の炭鉱電車が大牟田市に寄贈され、
現在も三池の化学工場の一角に保存されています。

三池炭鉱

4つの車輛はどれも今では珍しい貴重な車輛ですが、
中でも目を惹くのは、最も古いL字型をした15tB形の5号機関車です。
その特徴的な形状と運転速度の遅さから、
大牟田の方言で亀をあらわす「ガメ電車」と呼ばれたそうで、
明治43年(1910)にアメリカから輸入されたものです。
ずんぐりとした低い車体と、
バランスが悪いほど大きなパンタグラフは、
とても愛嬌のあるルックスですね。





三池炭鉱

ガメ電車の運転席部分の外観。
扉の構造がみあたりませんが、
なんと窓から入るのだそうです。





三池炭鉱

限りなくシンプルな運転席。
左側中央のとってのついた青い部分が、
荷物入れ兼用の運転席のようですが、
ただの鉄板なので、さぞかしおしりも痛かったのでは。





三池炭鉱

ガメ電車の後ろにある、
少し重量が大きい凸型をした20tB形の1号機は、
明治44年(1911)にドイツから輸入されたもので、
その後の三池機関車のレファレンスにもなったモデルです。

さらにその後ろには凸の底辺部分がより長い、
昭和に入ってから芝浦製作所で製造された、
45tBB形の17号機が鎮座していました。





三池炭鉱

この運転席は、上述の20tB形の1号機を模して、
日本車輌と三菱造船所で大正4年(1915)に製造された、
20tB形の5号機のもので、
国産機関車としては国内最古クラスのものだそうです。
ガメ電車のそれと比べると、かなり複雑な構造ですが、
それでも現代の運転席と違って、
産業遺産の雰囲気出まくりですね。





三池炭鉱

上記の4車輛は、三池の機関車の中でも
ある意味重要な機関車なので保存されているのだと想いますが、
実は炭鉱時代の機関車は、現役で動いているものもあるんです。

この記事最下段の地図の上部にある、
修理工場と書いた建屋の中とその周辺のヤードに、
幾つもの車輛が停まっています。

画像は修理構造内に停車する、
20tB形の11号機(手前)と45tBB形の18号機です。
ご存知の方も多いと想いますが、
凸型の小さめのが20tB形、
凸型の底辺が大きいのが45tBB形ということですね。





三池炭鉱

なので修理工場の一番奥に停まっていたこの車輛は、
20tB形の9号機関車ということになります。

この他20tB形の12号機と45tBB形の19号機をあわせて、
現役で動いている電気機関車は全部で5輛あるそうです。





三池炭鉱

20tB形11号機の後ろには電源車輛が連結されていますが、
これは、化学工場内では架線による運行が危険なためだそうです。
それにしても機関車よりもはるかに大きい電源車。
機関車を動かすのも容易ではないんですね。





三池炭鉱

電源車に搭載されたバッテリーボックスの中には、
小分けされていくつものバッテリーが埋め込まれています。

三池炭鉱の電気機関車はいずれも、
なんの文化財にも登録されていないようですが、
これだけの状態で保存されているのはとても珍しいと想います。
是非とも保存して、後世に伝えて行って欲しいと想います。



【三池鉄道の保存機関車群】

修理工場と保存基地は、
いずれも11月最初の週末の一般公開の日に、
同時に公開される様です。
私も、この記事の撮影は、他の方々と一緒に、
一般公開の日に撮影させて頂きました。

三池炭鉱

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2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
貴重な写真 (ed731003)
2014-02-15 19:17:25
はじめまして。
三池炭鉱関連の近代化遺産について、分かりやすくまた数多くの遺産がよくまとめられていますね。また、日頃は公開されない場所や目にすることができない古い写真など、貴重なものが沢山掲載されていることも魅力です。
非常に貴重で魅力的なレポート、ありがとうございます。
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▼ed731003さんへ (KLO@廃墟徒然草)
2014-02-16 21:19:56
コメントを頂きありがとうございます。
三池炭鉱は、ずっと気になっていたのですが、このシリーズの最初にもアップしたとおり、
大牟田・荒尾炭鉱のまちファンクラブの方々との出会いで、ファンクラブの方にご案内頂いたので、
普段見ることのできない施設も、沢山見学することができました。
せっかくなので、ささやかな三池の記録として、ご覧になって頂ければと想い、アップさせて頂きました。

それよりなによりed731003さんのブログ『炭鉱電車が走った頃』をさらっと拝見させて頂きましたが、
貴重な写真の数々とともに、なかなか一般的には知り得ない情報も満載で、
感激しました。
記事が沢山ございますので、ゆっくり拝見させて頂きます。
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