ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

小川典子/仲道郁代 女流ピアニストたち 『熱狂の日2007(その10)』

2007-05-13 | コンサートの感想
室内楽の合間に地上広場をふらっと歩いていると、ドボルザークの室内楽を終えた仲道さんが、ごく自然な雰囲気でテーブルに座って談笑されていました。
アーティストと聴衆が、こんなに身近な雰囲気で接することができるというのも、LFJの大きな魅力だと思います。

さて、18:30から聴いたのは、小川典子さんのドビュッシー&ラヴェル。

   ↓公式HPより  
   

<日時>2007年5月5日
<会場>ホールB5
<曲目>
■ドビュッシー:アラベスク第1番
■ドビュッシー:「ベルガマスク組曲」より月の光
■ドビュッシー:「前奏曲集」第1集」より沈める寺
■ラヴェル:クープランの墓
■(アンコール)亜麻色の髪の乙女
<演奏>小川典子(ピアノ)

小川さんは、ヨーロッパでも大変人気のあるピアニスト。
是非一度、生で聴いてみたいと思っていました。
まず「月の光」がよかったなぁ。
つや消しのような音色を使って静かに始まり、徐々に音楽が華やかになっていきます。
その間、押し寄せては引いていく波のように、極めて自然に変化していきます。
うまい!
「沈める寺」では、一転して凄みのあるフォルテを聴くことができました。
3日に聴いたケフェレックは相対的なダイナミックレンジが広いと感じましたが、小川さんは絶対的なダイナミクスの持ち主です。
もちろん、ヘビー級のボクサーのような強音ではなく、空手家の一発必中の拳のようなイメージの音です。
「クープランの墓」では、「アラベスク」「月の光」で聴かせてくれた詩的な表現に加えて「沈める寺」の凄みのあるフォルテの効果もあって、圧倒的な印象を与えてくれました。
小川さんは抜群のテクニックを持っていますが、決して異常なテンポ設定をしないし、力任せにならないところが、ヨーロッパでの人気の高さに繫がっているんでしょうね。
それにしても、リゴードンとトッカータでみせたテクニックの冴えは本当に見事だった。
このくらい弾ける人も、そう多くないでしょう。

1分間だけ時間をもらったからと、最後にアンコールで「亜麻色の髪の乙女」を聴かせてくれました。
同じ時間帯でバッティングしてしまったケフェレックを諦めて小川さんのコンサートに来たわけですが、ほんとに来てよかった。
その甲斐あったというものです。


さて、私の今年LFJ最後のコンサートは、仲道郁代さんをソリストに迎えてのグリーグのピアノ協奏曲。

     ↓公式HPより
     

<日時>2007年5月5日
<会場>ホールC
<曲目>
■グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16
■シベリウス:悲しきワルツ 作品44
■シベリウス:フィンランディア
<演奏>
■仲道郁代(ピアノ)
■ペーテル・チャバ(指揮)
■シンフォニア・ヴァルソヴィア

グリーグの冒頭、オーケストラがもの凄い気合で入ってきます。
そのためか、ピアノの入りがほんの少しずれるのですが、かえってライブの雰囲気が色濃く出てよかったと思います。
仲道さんのピアノの音色は、透明感があってとても素敵でした。
昔、その愛くるしい美貌から、私は勝手にアイドル系のピアニストかと思っていたのですが、昨年BS放送で放映していたハンマークラヴィーアをみて、決定的に印象が変わりました。
あのアダージョから終楽章にかけて、彼女が涙を浮かべながら聴かせてくれた音楽は、紛れもなくベートーヴェンの魂にせまるもの。
この日のグリーグも、一見なんの気負いもなく弾き進めながら、この魅力的な音楽を余すところなく描き出してくれました。

それにしても、このシンフォニア・ヴァルソヴィアというオーケストラ、豊かで温かい響きがして、私はとても好感を持ちました。
コルボのフォーレのときよりも人数がずっと増えた分、パワーは大違いでしたが、基本的な音の色・香り・温度は、やはり同じでした。
いいオケだと思います。

指揮のチャバは、一見サンティとホルスト・シュタインを足して2で割ったような風貌。
大変な馬力でオーケストラをドライヴしていました。
シベリウスには、ある部分でこの豪快さが必要です。
終曲のフィンランディアは少し粗っぽいところもありましたが、この曲の勇壮さがよくでていた好演。
たくさんのブラヴォーがとんでいました。

今年のLFJは、14のコンサートを聴くという、相当に欲張ったプランだったのですが、コルボのフォーレ等の歴史的な?名演奏にも立ち会えたし、結果的は大変満足できる音楽祭でした。
来年のテーマは、「シューベルトと同時代の作曲家たち」。
公式HPによると、シューベルトを核にして、横・縦両方に展開していきそうです。
またまた楽しみ・・・。

ここまでお付き合いいただいた読者の方、本当にありがとうございました。

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8 コメント

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良かった♪ (おさかな)
2007-05-14 00:25:49
素敵なコンサートの数々、本当に素晴らしくて良かったですね!!!
>おさかな♪さん (romani)
2007-05-14 00:42:04
こんばんは。

PCに日本語フォントが入った由、ほんとによかったですね。
私のほうは、「14個ものコンサート」と、いまになって冷静に考えると、ちょっと異常ですよね。
でも、「お祭りは、参加してなんぼ!」と昔から固く信じておりますので、まあよかったかと(笑)

しかし、コルボのフォーレは掛け値なしに素晴らしかったです。
また来年も、たくさん行くんだろうな・・・
それを考えると、自分で自分がちょっとだけ怖いです。
仲道郁代さん (narkejp)
2007-05-16 07:06:47
こんにちは。だいぶ前のことですが、オール・シューマンのプログラムのピアノリサイタルを聴いたことがあります。それはとてもすてきな演奏でした。また聴いてみたいのですが、なかなか機会に恵まれません。「熱狂の日」、いっぱい聴くことができて、良かったですね~(^o^)/
こんにちは (桜桃)
2007-05-16 14:51:18
こちらで二度三度と熱狂の日に行った気分になれました^^

私はミーハー路線のコンサートのみでしたが^^;、どれも、これも、楽しいですよね~。来年も今から楽しみです。

またいろいろお教えくださいませ。
>narkejpさま (romani)
2007-05-17 00:25:01
こんばんは。

仲道さんは、本当に素敵なピアニストですね。
音楽への誠実なアプローチと、ふとしたところで感じる人間性に惹かれます。
全国での演奏活動にも力を入れておられますし、子育てをしながらのエッセイもとても魅力的です。

私の住んでいる埼玉県のさいたま芸術劇場でも、定期的にコンサートを開催されているようなので、また行ってみたいと思います。

ありがとうございました。
>桜桃さま (romani)
2007-05-17 00:32:18
こんばんは。

いやー、今年はさすがに疲れました。(笑)
しかし、お祭り好きの私にとって、嬉しい悲鳴でありました・・・。
そんななかで、まさにかけがえのないコンサートにもいくつか出会えましたし、また「絶対、来年も行こう」と、早くもその気になっております。
今年はご一緒できませんでしたが、来年は是非「祭りの後の一杯」に行きたいですね。
楽しみにしております。

ありがとうございました。
小川典子と仲道郁代 (カンタータ)
2007-05-24 08:59:05
romaniさん
いつもお世話になります。熱狂の日は私も最終的に11公演を聴きました。コルボはホールCの2公演。そのどれもがあんな御祭りイヴェントで体験できるとは思っていなかったほど素晴らしいものでした。他にはエベーヌSQらのフォーレ、古典四重奏団、コロベイニコフのリサイタル、そして小川典子リサイタルに感銘を受けました。

ところで仲道郁代と小川典子は、先年ある企画を通して親しくなったようです。ピアニストは孤独な商売ですから、他のピアニストとは交流が殆ど無いのが普通です。しかも小川典子は英国在住ですから尚更です。その企画とは川口のリリアホールによる三人の“ミューズ”(笑)による饗宴とかいうもので、仲道郁代、田部京子、小川典子が仲良く共演するコンサートでした。互いに多忙を極める三人ですからプログラムなどの打ち合わせ会議は殆どメールで行っていました。ピアニストは商売敵としていがみ合うのではなく、互いに触発し合い、切磋琢磨しながら音楽界に資するべきであるという小川典子の願いが実現した企画の一つでした。

その小川典子は今週の土曜日にミューザ川崎で自らの企画を実現します。世界的パーカッショニストであるデイム・エヴェリン・グレニーを迎えての共演です。詳細はURLにございます。
>カンタータさま (romani)
2007-05-25 00:22:20
こんばんは。

いつもありがとうございます。
小川さんのピアノは初めて生で聴きましたが、本当に素晴らしいアーティストですね。
日本人ピアニストというよりも外国人ピアニストから聴く独特の雰囲気・オーラがありました。

>仲道郁代と小川典子は、先年ある企画を通して親しくなったようです。
そうでしたか・・・。
小川さんと田部さんのデュオは先日BSで拝見しましたが、仲道さんもはいったコンサートがあったのですね。
もし、次回があれば是非行きたいなあ。

>今週の土曜日ミューザ川崎で自らの企画を実現します。
プログラム拝見しましたが、これは魅力的なコンサートですね。
ただ、この日は読響マチネーの後、所用があって残念ながらいけそうにありません。
でも、小川さんのピアノは近いうちに必ず聴こうと思っています。

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