ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ソル:悲歌風幻想曲 op.59   by 福田進一(ギター)

2011-08-23 | CDの試聴記
なかなかブログを更新できなくて、大変ご心配をおかけしました。
申し訳ありません。
決して入院したとか精神的に参ったとかが原因ではないので、ひとまずご安心いただければ幸いです。

そんな中、久しぶりに更新する気持ちになったのが仲間との別れ。
同期入社の仲間が、また一人逝ってしまった。
ガンの告知を受けて、まだ1年も経ってないのに・・・
昨夜の通夜で彼の遺影を見ながら、そのあまりに爽やかな笑顔に、思わず泣けてきた。
神様の気紛れに、怒りすら覚える。
まだまだ、遣りたいことがいっぱいあっただろうなぁ。
誰よりも本人が残念だったことだろう。
でも、すべてを忘れて、どうか安らかに休んでください。

自宅に戻って、絶対バッハの音楽を聴こうと思いながら、結局手に取ったのはギターの作品だった。
ソルの晩年の名作「悲歌風幻想曲」を聴きながら、彼を偲びたい。
ソルは古典期を代表するギターの名手で、作曲家としてもギターのための傑作を数多く遺してくれたが、この作品は弟子のシャルロット・ベズレー夫人の死を悼んで作曲されたもので、その沈痛な曲想はソルの全ての作品の中でも異色だ。
譜面の中に、「シャルロット さようなら!」とわざわざ書かれているのも、きわめて珍しい。
シャルロットの死因は彼女の出産に伴うものだったようで、そのためか、ソルとの関係が取り沙汰されることがあるようだけど、そんなことはどうだっていい。この音楽の持つ高貴なまでの美しさには、何の関係もないのだから。
それにしても、ソルが悲しみをこれほどストレートに表現することは滅多にないと思う。

福田進一さんの古楽器をを使ったこの演奏は、ちょっと激しすぎるように感じる箇所もあるが、その確信に満ちた表現は、聴き手の心を掴んで離さない。
悲痛な叫びの表現もさることながら、後半でほんの少しの間長調に転じる部分が、はっとするくらい美しい。
ただ、このような作品を弾かせたら、おそらくジュリアン・ブリームの右に出るギタリストはいないと思うが、録音リストに見当たらないのが本当に残念。

週末には、久しぶりに自分でもこの曲にチャレンジしてみよう。
上手く弾けないかもしれないけど、弾きながらじっくり彼のことを偲んでみたい。
コメント (2)
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