幸せについての考察 【桐棺三寸】

桐鳳柳雨が贈る、幸せについての考察。
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夜道を歩かねばならない人々

2005-01-15 | 戯言 Ⅰ

夜雨(よさめ)に濡れた如くに暗く光る土瀝青(アスファルト)。
衣嚢(ポケット)に手を入れ、やや俯(うつむ)いて早足に歩く。

そうだ!
俺は、自転車に乗ることさえも許されずに歩いているんだ!
もし、自転車が見付かってしまったならば、
その自転車は忽(たちま)ちのうちに取り上げられ、
投げ壊され、そして、俺は罵られるだろう。

しかし見よ、彼等を!
彼等は、搾取されることのない富や権利を受けるばかりか、
自転車に乗ることまでもが許されている!
しかも、こんな夜道ではなく、陽の当る場所を。
堂々と!

もし今、この夜道で俺が狂人か誰かに襲われ、
そして、この身を切り裂かれるようなことがあったとしても、
俺は、笑みさえ浮べて喜んでそれに応じることだろう。
結果、こうしているこの事実が、
白日の下に曝(さら)け出されることになるならば!

彼等に対する恨み、嘲(あざけ)り、憤(いきどお)り、
そして、哀れみさえをも胸に秘めて。
さあ、誰か!
俺を、殺しに来てくれ!

夜雨に濡れた如くに暗く光る土瀝青は続く。
何事もなく、やや俯いて早足に歩き続ける。




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