ほぼ日刊、土と炎、猫と煙突

白く燃え尽きた灰の奥深く、ダイアモンドは横たわる。

アヤフヤな記憶の断片から。

2009年05月31日 00時58分46秒 | フィクション
場所:  都内の食堂めいた所。
時間:  ランチタイム
人物:  スーツ姿のサラリーマン A=先輩、B=後輩
テーマ: 哀れと言うより、滑稽な悲哀。

*実際に聞いた会話を元にしていますが、フィクションです。

「Aさん、最近、どうっすか?」
「うーん。どうもこうも無い。離婚してから完全に”手詰まり”だね」
「別れた奥さんの方はどうしてるんですか?」
「……再婚する気らしい」
「え? 誰と?」
「具体的に誰かいる訳じゃないけどな。
 ”若い男狙い”でダイエットに励んでいるって噂だ」
「へえ」
「他にもヒアルロン酸注射だか何かやって、若返ってるらしい」
「やる気マンマンっすね」
「でも、あれって無駄なんだよな」
「何でですか?」
「スリムな女性や皺の無い女を好む男はさ。やっぱり若いコが好きなんだ」
「ははあ。なるほど。”若作り”より、”若いコ”ですよね」
「”熟女好きな若い男”の好みがわかってない。
 そこを狙うのなら、むしろ皺って太っていないと」
「ふーん。そりゃ、まあ。そうかも知れないですね」
「盲点だろ? でもさ。俺も同じ所にハマっちゃってて」
「同じ所? ハマる? どういう意味っすか?」
「うん。俺も色々気を使ってるから、何とか若い体裁を保ってるけど」
「はい。10歳は若く見えますね。お世辞抜きにして」
「だろ? それを武器に若いコと再婚したい、と思ってたんだよ」
「ああ。俺の周囲にも年上好きな女のコいますよ。
 若い男じゃ何か物足りないんだって」
「そこだ! でも、良く考えたら……
 そういう趣味の女の子は俺みたいな男はノー・サンキューなんだ」
「え? じゃあ、どういう男がいいんすかねえ?」
「良く言えば渋いっつーか。もっと”オッサン”っぽい中年。
 そういうのに魅力を感じる若い女のコはいる、らしいけどね」
「うーん。つまり……」
「今まで”俺の最後の財産だ”と思っていたモノは何だったんだ?」
「じゃあ、今からチョイ汚れの”小汚なオヤジ”でも目指しますか?」
「それも嫌だね。てか、キャラ的に無理。下手すりゃ”トッサン・坊や”だし」
「はあ」
「かと言って、俺の隣にいて”お姉さん”いや”お母さん”に見える女はなあ」
「嫌っすか?」
「嫌ってよりさ。俺達は何の為に離婚した訳?」
「いや、その辺の事情、知らないっすけど」
(微妙な間合い。10秒)
「とにかく……俺の人生”手詰まり”って感じさ」
(ひたすら食事。30秒)
「色々、大変っなんすね」
(コーヒー飲みながら)
「うん」

フェードアウトして<終>

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