三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

ドイツと北海道 住宅の対比

2015年03月29日 08時21分35秒 | Weblog
一昨日、ドイツの住宅関連の官民の代表者を招いての
セミナーのことを書きました。
で、前から気になっていた、「北海道の住宅性能の国際的位置づけ」
について、考えが及ぶようになって来ました。
上の図は、IBEC(省エネルギー機構)が発表している各国での住宅性能基準表。
基準としてはQ値1.6という北海道のレベルは
まぁ、世界の中でもそう劣っているとも思えない。
で、ドイツと日本の総住宅数や着工数比較は以下のようになっています。
出典は、国土交通省の調査資料です。
上がドイツで下が日本です。




年間の「住宅着工数」が全然違う。
ドイツでは17万戸なのに日本は100万戸超。(最近80万程度に下降)
総戸数ではドイツは約3600万戸に対して日本が約5000万戸。
年間着工は1:5程度なのに、総戸数は72:100という比率。
こういう数字を見ていると、非常に新陳代謝の激しい日本に対して
住宅が非常に保守的な概念になっているドイツというような対比が見える。
石の住宅文化の国と、木の住宅文化の国の違いだろうか。
一方で、ドイツはここ10年くらいで
住宅性能基準を大きく前進させたけれど、
国全体の実態としての住宅性能レベルは、依然として低レベルであり、
既存改修で現行基準に合致した住宅は1%程度ということ(先日のドイツ側発表)。
基準を厳しく設定すればいいというものではない実態が見えます。
一方で、新設住宅での北海道の住宅性能レベルはどうなのかと探してみたら、
北海道建設部住宅局建築指導課による「推定値」があった。
それが以下の図です。



国全体での住宅性能基準達成率は、1~2割と書かれています。
そもそもの基準値自体が、温暖地ではお粗末な数字だけれど、
それでもその程度しか達成されていない。
それに対して北海道では、7割がQ値1.6を達成していると推計されている。
年間約30000戸のうち21000戸で達成していて
年々その率は上昇している。
このように考えてくると、平均としての北海道の住宅性能レベルは
やはり北欧のレベルに近づいているのではないかと思われます。
そうした住宅性能を、水分コントロールのきわめて難しい
本来が南方系の住宅構法技術である軸組木造で
達成できるほどの技術資産が、北海道にはあるとも言えるのでしょうか。
・・・このテーマ、いろいろ研究の必要があるでしょうね。

追記
着工件数で見ても、ドイツで一戸建てを建てられる人というのは
きわめてレアな存在だと言うことがわかりますね。
大部分の国民は集合住宅に入っていて、それは素寒貧な石造の住宅なのです。
それなのに「全室暖房」は文化として根付いているので、
驚くほどに暖房エネルギーを消費している。これをなんとかしたい、
というのが政策課題の前面に来るのは無理がない。
それに対して、より厳しい気候条件で、
なおかつ水分コントロールが非常に微妙な「木造」で作られていて、
しかも戸建て指向が非常に強い国民性を持つ
日本のなかの一地方である北海道が、国全体と話し合いながら、
「義務化」という強制手段も行使できないなかで、
ここまでのレベルの住宅性能を実現してきている。
地域一体となった住宅性能向上意識が共有されている。
むしろ、日本人が共有体験として本当に解析すべきなのは、
このことの方ではないかと思う次第です。

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