評論家西部 邁と北海道同郷の故海野 治夫(うみの はるお)の45年間に及ぶ友情の実話である
二人は 1952年(昭和27年) 初めて出会った中学2年の時からの付き合いである
数年間の音信不通と再会 空白 再会 そして海野が自分の手記を西部へ託し 自死をする
著者西部の貧窮 海野の苛酷な生い立ち 二人の背景には戦後の北海道の社会状況がある
二人とも札幌の進学高校のトップの成績でありながら 傍から見ると どうしようもない不良である
貧乏 鬱屈 渇望 破綻 孤独 二人の心のありよう 生き様は似ている
生活環境が異なっても 西部は海野を見つめ 海野は西部の前で心を許し 生きる孤独を忘れられる
本は 海野の生い立ちを同伴しながら 西部自身の境遇も綴る 屈折せざるを得ない生活環境
それでも二人とも自分のそういう軌跡に 自己憐憫は持たず 決然と自分の道を行く
高校生の海野は 親がなく兄弟は離散し 居候させてもらってる居酒屋で一日一食が実情である
真冬の厳寒の北海道で コートも持てず 教室に駆け込んできてストーブの前で学生服のボタンを
はずして暖をとるとき 制服の下は下着も着ていない素裸である
教師が海野へ奨学金をもらえるよう薦めてくれて 面接官の前で生い立ちを正直に語ったら
あまりの悲惨さに 面接官は海野を 奨学金欲しさの嘘つき呼ばわりして信じなかったという
十歳に満たない子どもが死期の迫った病身の母親の下の世話をし 着物の洗濯をするのである
母の死後 他家へ子守りに出され 朝四時に起きて 釜で飯を炊く 掃除 洗濯 子守り
水汲み 薪割り 毎日のおしめ洗いは冷水で洗濯板でごしごし洗う あかぎれ しもやけで
腫れた手をしている十一歳の子どもが 海野なのである 真っ黒な水が流れる川の橋の上で
「 母ちゃん、 俺をあの世に連れていってくれ 」 と十一歳の子が 小さく呟くのである
高校を中退して海野はヤクザに 西部は東大生へと道が分かれていく
海野が刑務所に入り ヤクザの幹部になり ヒロポン中毒になり 会わない時が数年に及んでも
西部の気持ちは いつも海野を気にかけ 眼差しがあたたかい
こういう生を生きてきた人の事実に なかなか本のページが進まなかった
この頃のわたしは いろんなことに まぁ いっかぁ しかたないなぁ と呟いていることが多い
この本を読んで わたしの呟きなど何ほどのことかと思う
いまは 粛然と衿を正す思いである
二人は 1952年(昭和27年) 初めて出会った中学2年の時からの付き合いである
数年間の音信不通と再会 空白 再会 そして海野が自分の手記を西部へ託し 自死をする
著者西部の貧窮 海野の苛酷な生い立ち 二人の背景には戦後の北海道の社会状況がある
二人とも札幌の進学高校のトップの成績でありながら 傍から見ると どうしようもない不良である
貧乏 鬱屈 渇望 破綻 孤独 二人の心のありよう 生き様は似ている
生活環境が異なっても 西部は海野を見つめ 海野は西部の前で心を許し 生きる孤独を忘れられる
本は 海野の生い立ちを同伴しながら 西部自身の境遇も綴る 屈折せざるを得ない生活環境
それでも二人とも自分のそういう軌跡に 自己憐憫は持たず 決然と自分の道を行く
高校生の海野は 親がなく兄弟は離散し 居候させてもらってる居酒屋で一日一食が実情である
真冬の厳寒の北海道で コートも持てず 教室に駆け込んできてストーブの前で学生服のボタンを
はずして暖をとるとき 制服の下は下着も着ていない素裸である
教師が海野へ奨学金をもらえるよう薦めてくれて 面接官の前で生い立ちを正直に語ったら
あまりの悲惨さに 面接官は海野を 奨学金欲しさの嘘つき呼ばわりして信じなかったという
十歳に満たない子どもが死期の迫った病身の母親の下の世話をし 着物の洗濯をするのである
母の死後 他家へ子守りに出され 朝四時に起きて 釜で飯を炊く 掃除 洗濯 子守り
水汲み 薪割り 毎日のおしめ洗いは冷水で洗濯板でごしごし洗う あかぎれ しもやけで
腫れた手をしている十一歳の子どもが 海野なのである 真っ黒な水が流れる川の橋の上で
「 母ちゃん、 俺をあの世に連れていってくれ 」 と十一歳の子が 小さく呟くのである
高校を中退して海野はヤクザに 西部は東大生へと道が分かれていく
海野が刑務所に入り ヤクザの幹部になり ヒロポン中毒になり 会わない時が数年に及んでも
西部の気持ちは いつも海野を気にかけ 眼差しがあたたかい
こういう生を生きてきた人の事実に なかなか本のページが進まなかった
この頃のわたしは いろんなことに まぁ いっかぁ しかたないなぁ と呟いていることが多い
この本を読んで わたしの呟きなど何ほどのことかと思う
いまは 粛然と衿を正す思いである