代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

「ウォールストリートジャーナル」が共産党の吉井英勝議員の原発事故予見質問を報道

2011年03月28日 | 震災関連
 前の記事で「ウォールストリートジャーナル」の原発作業員に関する記事を評価する記事を書いたところ、以下のようなコメントをもらいました。

Unknown (ななし)       2011-03-27 23:55:44
ウォールストリートジャーナルを始めアメリカのメディアが構造改革を後押しして非正規雇用を増やし奴隷化を進めアメリカの株主に利益誘導した事もお忘れなく。
コストカッター清水社長も今回の事故が無ければ彼ら市場原理主義の擁護者に称えられてたであろう事は言うまでも無い。


ななし様 (関)           

 はい忘れてません(^^;)。

 しかし、こと今回の原発事故に関してはウォールストリートジャーナルはよい記事書いてますね。
 何と、本日のウォールストリートジャーナルは「コミュニスト・パーティ」の「ヨシイヒデカツ」が今回のような事故を予見していた、と大きく報道しています。以下の記事。

http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703576204576226530875684182.html?mod=WSJAsia_hpp_LEFTTopStories

****一部引用****

A landslide or earthquake could knock out a nuclear plant's emergency power as well as cut off power supplies from outside, Communist Party legislator Hidekatsu Yoshii told a parliamentary committee in May 2010. Such a sequence of events could remove the ability to cool the reactor's core, Mr. Yoshii said. That sequence occurred at the Fukushima Daiichi power plant two weeks ago.
(共産党の吉井英勝議員は、2010年5月の衆院の委員会で、震災により原発の非常用電源も外部からの電力供給もともに失われる可能性もあり、そのような場合、炉心を冷やせなくなるだろうと指摘していた。それはまさに、二週間前に福島第一原発で発生したことだった)

************

 ちなみに吉井議員のこの国会質問に対して、原子力安全・保安院の寺坂伸昭氏の回答は、「論理的には考え得る」「しかしほとんどそういったことはあり得ない」というもの。ちなみに同紙の翻訳では、「theoretically possible, but nearly unthinkable」。日本語ではあり得ても、英語的にはあり得ないようなこのような非論理的な表現に、英語圏の人々は「?????」となることでしょう。英語では、「possible」であったら「thinkable」でなければならないのです。

 ところで、ウォールストリートジャーナルで「コミュニスト」がこのように肯定的に報道されたことなど過去あったのでしょうか?

 ちなみにこの国会質疑の詳細は、吉井議員ご本人のホームページ(下記サイト)をご参照くださ。

http://www.441-h.com/message.html

 
 日本でもネットでは、共産党の吉井英勝議員が今回の事故を完璧に想定する内容の国会質問をしていたことがずいぶん話題になっています。私もネットで知りました。
 しかし何故か日本のマスコミは、あまり報道してきませんでした。私の知る限り、3月24日に東京新聞が吉井議員の質問内容を本人へのインタビューと共に取り上げ、26日には朝日新聞も、本人へのインタビュー抜きですが吉井質問の内容を紹介する記事を載せたようです。しかし扱いは小さいです。

 本来であれば、吉井議員は今頃マスコミに引っ張りダコになっていてもおかしくないところです。海外メディアまで大きく扱っているのに、日本のマスコミの扱いはあまりにも小さい。

 まあ、このように想定されていた今回の事故を「想定外」にしたいのは、東電や経産省のみならず、事故リスクを軽視して原発推進の旗を降ってきたマスコミも同じですからね。事故を懸念する人々の想定を報道してこなかった人たちが、今さら、じつは「想定されていた」とは報道しにくいのでしょう。(もっとも、全国新聞の中で毎日新聞は割と原発に対して抑制的な論調でした。東京新聞も他の新聞が取り上げない上関原発問題を取り上げるなど、原発抑制派の論調だったと思います)

 日本の原発事故は、ドイツの選挙に激震を与え、脱原発の綱領を掲げる緑の党が大躍進。本日の選挙の結果、バーデン・ビュルテンベルク州の州首相は緑の党から選出されることになるそうです。州首相が緑の党から選出されるのはドイツ史上初のこと。
 日本の原発事故は、何と遠く離れたドイツの歴史を変えてしまったのです! 以下の毎日新聞記事参照。

http://mainichi.jp/select/world/news/20110328dde002030024000c.html

 日本がドイツの歴史を変えているというのに、私たちは日本の歴史を変えられないのでしょうか? 
 外部からの警告を一切無視して突き進んできた、日本の政官業学報による原発推進翼賛体制が、これだけあぶり出されたのに、日本の選挙結果には何の影響もないのでしょうか? 
 この期に及んで、「震災は天罰」とのたまわり「東京湾に原発を造ろう」とまで主張した人が当選するとしたら、あまりにこの国はオメデタイと言わざるを得ません。


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10 コメント

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吉井英勝議員の予見 (Cosmopolitan)
2011-04-02 14:46:01
同感ですね。
二一世紀は「生命」と「環境」を守る時代です。原発はこの課題に逆行した巨大プラントで、戦艦ヤマトに喩えられます。この巨大プラントと共に日本が沈没することを避けねばなりません。同時に「地球温暖化の問題」も深刻で、平均気温が二度上がれば、地球環境は壊滅的な打撃を受けるでしょう。
したがって、脱原発を基本にして、環境エネルギー政策をみなさねばなりません。
吉井氏の近著は、まさにその問題を扱っています。
http://d.hatena.ne.jp/Cosmopolitan/20110327
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Unknown (ゆうき)
2011-04-03 17:22:20
これからの日本、反共から反原発になるでしょう。
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Cosmopolitanさま、ゆうきさま ()
2011-04-03 21:54:27
 コメントありがとうございました。

>これからの日本、反共から反原発になるでしょう。

 日本社会は本当に自力で変化をおこしにくい国なので、反原発に舵を切れるかどうかはなはだ心もとないのですが、このまま今のシステムを続けたら間違いなく破滅ですね。
 
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Unknown (ごま太郎)
2011-04-09 20:30:28
私も同感です。読売は正力が原子力の父だからしょうがないにしても地元の静岡新聞は情けない!即停止は難しいですが代替エネルギーは考えるべきです。
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日経にも出ていたはずです (yukoinouenote)
2011-04-10 22:11:01
吉井議員の国会質問について。
日経本紙の3月13日から15日の1面にも
名前は記憶にありませんが、出ていたはずです。
「朝ナマ」でもあまり、話のじょうずじゃなさそうな女性の方が、話に出していました。
流されていました。

反対派が新設を阻んだから、旧式のまま運転が続行されて、事故が起きた、というツイーとが
出回っていたことがあります。

私の友人(理系)は、それをそのまま信じていました。
吉井議員のことを教えたら、それは知らず(私はツイッターをあまりしてなかったので、1面に出ていた衝撃の事実を国民誰しも知ってるばかりと思っていた)、友人はそのまま、二の句が継げず、話はうやむやになりました。

議員のことはともかく、吉井議員のことは、ツイッターで拡散されず、
反対派の新設阻止と、事故を関連付けるRTは、どんどん広まるのはなぜですか?
私もそのRTは読みましたが、あー、そうか
新しければ事故は起きなかったのかもな、とは
思っても、
それで、「事故は反対派のせいだ!」とは思いませんでした。思えるわけない。
論理的におかしいじゃないですか。

これを論理的に理解できない私は頭がおかしいのですか?
もう誰に聞いていいのかわかりません。。
中立な立場の方に聞きたいのです。
電力が必要なことは停電でよく分かったから、
安全にエネルギーを供給するにはどうするのかの、仕組みを作っていってほしいです。
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yukoinouenoteさま ()
2011-04-11 00:06:24
 日経にも出ていたことは知りませんでした。本文に触れられず、すいませんでした。

>議員のことはともかく、吉井議員のことは、ツイッターで拡散されず、
>反対派の新設阻止と、事故を関連付けるRTは、どんどん広まるのはなぜですか?
>これを論理的に理解できない私は頭がおかしいのですか?

 悪いことは何でも「サヨクの陰謀」のように短絡的に思考する「ネットウヨク」の方々がまだまだ多いからだと思います。
 しかし屁理屈もここまでくると唖然としてしまいますね (+_+) 老朽化した原発を少しでも延命させて利益を上げようとしてきたのは東電に他ありません。
なんでも誰かのせいにしてしようとする思考は、悩まず、苦しまずにすむので、精神的には楽なのだと思います。

 この思考パターンは思想の左右を問わずに存在しますね。左は右のせいにするし、右は左のせいにするという・・・・。
 しかし、それでは思考停止だと思います。これを機に皆が一生懸命に考え、再生可能エネルギーの普及を進めていかねばならないと思います。
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すみませんでした (yukoinouenote)
2011-04-11 04:05:40
 >日経にも出ていたことは知りませんでした。本文に触れられず、すいませんでした。

非難めいた口調で大変失礼しました。
先ほど、ツイッターで岩上安身さんもRTされておりました。(発信元は私ではありませんが)
この件については、原発の安全性への不信というより、電力会社と国の安全性をあらゆる面から、追求するというリスクマネジメントの欠落を示しているにとどめたほうがいいのかもしれませんが。
代替エネルギーをねん出することは
早急には無理で、しばらく原発に頼ることになるのかもしれない、とは思っています。


>悪いことは何でも「サヨクの陰謀」のように短絡的に思考する「ネットウヨク」の方々
そういう人たちがいるのですね。
ソーシャルメディアや掲示板などに参加し始めたのが最近なので、あまりよく分かりませんでした。
少し気分が晴れました。
いたちごっこみたいなことは、ネット上だけにしてほしいです。
右翼ではなくても、代替案がないなら
原発を批判するべきではない、というのは
震災・事故前から、私の周りで多かった意見です。
経済発展を考えなくてもいいのか、と。
震災後にもそう言える友人の気持ちが理解できません。迷いもなく、そう言えるのはなぜでしょうか。
今後、ずっと考え続けていきたいと思います。

このたびはありがとうございました。
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yukoinouenoteさま ()
2011-04-11 21:36:30
>経済発展を考えなくてもいいのか、と。

 実際は脱原発を目指している国(ドイツ、スウェーデン)が経済成長していて、原発依存度を高めようとしている国(日本、アメリカ)が経済停滞しています。経済のみが重要というわけではありませんが(低成長でも安心と安全の方が大事だと思います)、経済性を考えても、上記の議論は誤りです。
 
 ドイツやスウェーデンは2020年代の脱原発を目指して、太陽光・風力・バイオマス・マイクロ水力など自然エネルギーの開発を進めてきましたが、その分野で成長産業が生まれたの功を奏して、経済成長率も日本よりもはるかに高いです。1990年から2007年の17年間のGDP成長率は日本の20%に対し、スウェーデンは40%と倍になります。
 
 原発は経済成長よりも、逆に経済の足をひっぱてしまうと思います。
 
 ドイツやスウェーデンも時間をかけて少しづつやっているように、日本も今すぐの脱原発は無理だと思いますが、長期的な目標で徐々に依存度を減らしていくことだと思います。

 このブログの二つあとの記事で、自民党の河野太郎議員の主張を紹介してます。河野さんは、2050年まで40年間をかけて原発の全廃を目指すとブログで書いています。そのくらいの長期目標を掲げて計画的に進めることではないでしょうか。

 『世界』(岩波)の1月号のマイケル・シュナーダー氏の論文が無料公開されています。経済性で考えても、アメリカでは既に風力の方が原発よりも低コストという歴史的な逆転が発生しつつあります。以下のサイトで読めるのでご参照を。

http://www.iwanami.co.jp/sekai/2011/01/pdf/skm1101-1.pdf
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もう一つ考えたいこと ()
2011-04-14 16:54:45
 ドイツやスウェーデンのほうが経済成長率が高いと言う指摘興味深いですね。さて、私が指摘したい点は別のところです。
 『そもそも経済成長は常にいいことなのか?』
 政府も、マスコミも、はてはマルクス大先生の信者たちまで、経済成長=進歩=善というおよそ科学的とはいえない(ここで科学的でないというのは、これは論証、実証されていないからです)イデオロギーが蔓延しています。これがイデオロギーとして機能していることは、反論者を黙らせる根拠としてよく使われると言う現実に、よく現れています。
 この30年、私たちは『経済成長』のために、原発を増やし、規制を撤廃し、農的な暮らしを破壊し、労働分配率(お給料のこと)を下げて投資家に奉仕してきました。それで、儲かった人はまあ、幸せだったのかもしれませんが、私の出身成分(田舎の労働者、農家)の周りには、『経済成長のおかげで』そんなに幸せになった人は見かけません(不幸だったと言う気はないけどね!)。むしろ、田舎のことでこれらの政策では割ばかり食っていました。親父(トラック運転手)は運輸業界の規制緩和の結果、事業所ごとリストラで、年功賃金どころか年をとれば取るほど賃金が下がっていきました。親戚の百姓は牛肉・オレンジ自由化の被害を受け、別の親戚は国鉄から放り出されました。幸い首をくくった人が出なかったのは幸いでしたが、地方によっては自殺が多発した畜産地帯もあったわけで、本当うちの親戚一同は規模が小さくて(借金が少なくてすむ)よかったねといったもんです。
 町に出てくれば、出てきたで職場の3分の1(注意!女性は半分以上)はいつまで働けるのかも分からない非正規雇用。私個人は正規雇用ですが、それでも年収は300万円いきません(まだいいほう!)。
 何でも、こんな状態でも『トリクルダウン』と言う呪文を唱えれば、私らでも儲かるらしいのですが、ついぞそんな経験はしていません。魔法使いはどこで昼寝をしているのでしょうか。
 こんなわけで、私は『経済成長』なんてろくなもんじゃないという実感を持っているわけですが、多くの人たちが『経済成長』はいいものだと言っています。まともな飯と、服と、家があり、年寄りと子どもの世話ができる『経済成長』ならいくらでも支持してやるのですが。
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南さま (genpatsukorita)
2011-04-24 20:16:25
>この30年、私たちは『経済成長』のために、原発を増やし、規制を撤廃し、農的な暮らしを破壊し、労働分配率(お給料のこと)を下げて投資家に奉仕してきました。

鋭いご指摘だと思います。

今回の原発事故は、利潤至上主義という今の世の中の考え方が安全を軽視して、コスト優先で進めてきた結果です。
このことと、南様がご指摘されている規制緩和や非正規雇用の問題とは、根元が同じだと思います。
必要な安全対策コストをかけずに、「原発のコストは一番安い」と言ってきた官民マスコミの罪は大きいと思います。

今までは経済活動というと政府や財界のお偉方が考えることと思っていましたが、そろそろ、私たちもこれからの経済活動をどうしていけばいいのか、自分の頭で考え、そういう世の中にしていきたいですね。

ところで、私はかつてマルクスを読んだことがあるのですが、彼は決して経済発展至上主義ではなかったと思います。まずはじめに来るのが、「人間が人間らしく生きる」ということで、差別や抑圧のない社会を目指していました。経済発展も「貧困による抑圧からの自由」や「もっとも人間らしい創造活動」を保証するためのものであったと思います。
私は、経済学者や思想家ではないので、ひょっとして間違っているかもしれませんが。
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