東京電力福島第一原発から港湾外の海に汚染水が流出していた問題で、地元の福島県からは25日、流出を公表してこなかった東電の姿勢に一斉に反発の声が上がった。建屋周辺の地下水をくみ上げ、浄化後に海に流す「サブドレン計画」の交渉は棚上げに。信頼関係が失われ、廃炉計画に影響する可能性も出てきた。

 

 福島県漁業協同組合連合会(野崎哲会長)は25日午前、いわき市で組合長会議を開いた。東電幹部が出席、雨が降るたびに排水路の水の放射性物質濃度が高まることを把握しながら公表しなかったことを陳謝した。

 東電が排水路の放射性物質の定期測定を始めたのは昨年4月。8月には、ベータ線を出す放射性物質で通常の10倍以上の1リットルあたり約1500ベクレルを検出した。

 これに対し、漁業者からは「なぜ我々に黙っていたのか」「情報隠しだ」と批判が相次いだ。この日はサブドレン計画について協議する予定だったが、持ち越しとなった。会合後、野崎会長は「東電との信頼関係を揺るがせる事態だ」と記者団に語り、計画をめぐる交渉を凍結する考えを示した。

 県も内堀雅雄知事ら幹部が急きょ対応を協議。内堀知事は「情報の速やかな公表と、その意識の徹底という基本がなされなかったことは極めて遺憾だ」と強い口調で東電を批判した。

 排水路には、2号機の原子炉建屋とつながる「大物搬入口」の屋上にたまった雨水が汚染されて流れ込んだとみられる。東電は、外洋と仕切られた港湾内へ排水路の水を流すポンプの設置などを検討するという。

 菅義偉官房長官は25日午後の記者会見で、流出先の海水での濃度は低い値だとして「港湾外への汚染水の影響は完全にブロックしている。状況はコントロールされている」と強調した。

 ただ、原子力規制委員会にも、検出状況は報告されていなかった。東電は「原因を調べ結果が分かってから公表するつもりだった」と釈明。搬入口が原因と特定できたため24日になって公表したという。規制委の田中俊一委員長は25日の会見で「環境に影響するようなことなら、速やかに発表するべきだ」と指摘した。

 東電は過去にも、放射性物質の分析結果や流出を示すデータを公表せず、批判を招いてきた。サブドレン計画をめぐっても、以前から地下水くみ上げを検討しながら、浄化して海に放出する考えを明らかにしたのは昨年8月。計画は汚染水対策に必要として理解を求めている最中だった。

 

 ■福島第一原発のデータ公表について東電が批判された例

<2013年6月>

 【内容】5月に岸壁近くの井戸で高濃度の放射性物質を検出。対策開始後の6月まで公表せず

 【東電の説明】測定に不備があり、念のため追加の分析をした

<13年7月>

 【内容】汚染された地下水の海への流出を示すデータを社内で共有できず、流出と判断後も3日間公表せず

 【東電の説明】情報共有が不十分、情報を公表する姿勢も積極的でなかった

<14年1月>

 【内容】港湾内や地下水中のストロンチウム濃度の計測値を半年分公表せず

 【東電の説明】他のデータとつじつまが合わなかった。隠す意図はなかった

<15年2月>

 【内容】2号機搬入口上部のたまり水が流れる排水路で、雨のたびに放射性物質濃度が高まることを把握しながら10カ月公表せず

 【東電の説明】排水路の清掃に目を奪われ、情報公開の観点が欠けていた

 

 

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