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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

安倍首相の米議会での歴史に残る迷演説 そんなに好きなの?! 祖父岸首相・アメリカの山羊・TPP・軍事同盟

2015年04月30日 | #安倍晋三が諸悪の根源

安倍晋三首相が4月29日、アメリカ議会上下両院合同会議で演説した。この様子を報じた海外の記事が話題になっている。

この日、安倍首相は英語で演説を行ったが、ウォール・ストリート・ジャーナルは安倍首相が手に持った原稿を大きな写真で紹介した。原稿には、「次を強く」など抑揚をつける位置や、息継ぎの箇所が赤ペンで書き込まれていた。

カナダ版のYahoo!ニュースに掲載されたロイターの記事には、「顔を上げ拍手促す」「おさまるのを待つ」などの書き込みも見られる。

安倍首相の演説、海外でカンペ画像が報じられる「顔を上げ拍手促す」

投稿日: 2015年04月30日 13時52分 JST 

 

 

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 いろんな人がいろんなことを横から言ったのでしょう。

 話があっちに行ったりこっちに行ったりする、長い割には散漫な演説でしたが、その中身には看過できない重大な部分がいくつも。

 

1 とにかくTPP押しが凄い!

 日本時間で2015年4月30日に行われた安倍晋三首相によるアメリカ議会での演説を読んでみて、まずインパクト大だったのは、予想以上のTPP押し!

 TPP(環太平洋連携パートナーシップ)の日米交渉は大詰めに入っているのですが、それにしても、これを日米軍事同盟と同じ比重で語るとは思いませんでした。

 謝辞とか思い出話や最悪だったジョークなどを全部合わせて45分話した中で、10分前後もTPPの話をしています。

こうして米国が、次い で日本が育てたものは、繁栄です。そして繁栄こそは、平和の苗床です。日本と米国がリードし、生い立ちの異なるアジア太平洋諸国に、いかなる国の恣意的な 思惑にも左右されない、フェアで、ダイナミックで、持続可能な市場をつくりあげなければなりません。太平洋の市場では、知的財産がフリーライドされてはな りません。過酷な労働や、環境への負荷も見逃すわけにはいかない。許さずしてこそ、自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を、世界に広め、 根づかせていくことができます。その営為こそが、TPPにほかなりません。しかもTPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意 義があることを、忘れてはなりません。経済規模で、世界の4割、貿易額で、世界の3分の1を占める一円に、私たちの子や、孫のために、永続的な「平和と繁 栄の地域」をつくりあげていかなければなりません。日米間の交渉は、出口がすぐそこに見えています。米国と、日本のリーダーシップで、TPPを一緒に成し 遂げましょう。

実は、いまだから言えることがあります。20年以上前、GATT農業分野交渉の頃です。血気盛んな若手議員だった私は、農業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に、国会前で抗議活動をしました。ところがこの20年、日本の農業は衰えました。農民の平均年齢は10歳上 がり、いまや66歳を超えました。日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらなければなりません。私たちは、長年続いた農業政策の大改革に立 ち向かっています。60年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます。世界標準に則って、コーポレート・ガバナンスを強めました。医療・ エネルギーなどの分野で、岩盤のように固い規制を、私自身が槍の穂先となりこじあけてきました。人口減少を反転させるには、何でもやるつもりです。女性に 力をつけ、もっと活躍してもらうため、古くからの慣習を改めようとしています。日本はいま、「クォンタム・リープ(量子的飛躍)」のさなかにあります。親 愛なる、上院、下院議員の皆様、どうぞ、日本へ来て、改革の精神と速度を取り戻した新しい日本を見てください。日本は、どんな改革からも逃げません。ただ 前だけを見て構造改革を進める。この道のほか、道なし。確信しています。

 


「自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を、世界に広め、 根づかせていくことができます。その営為こそが、TPPにほかなりません。」

って、なにか別のものとTPPを間違えて論じてるんじゃないですかねえ。まるっきり関係ないでしょう。というかむしろ逆行するというか。

「世界標準に則って、コーポレート・ガバナンスを強めました。医療・ エネルギーなどの分野で、岩盤のように固い規制を、私自身が槍の穂先となりこじあけてきました。」

とびっくりするようなことも言っています。TPPはコメなどの関税「障壁」問題より、国民皆保険などの非関税「障壁」の分野が破壊されるのが非常に恐ろしいものなので、この人のTPP本気度がうかがえて、身が震えました。

日米がTPP交渉で合意する コメさえ守れない安倍政権は日本の食糧安保と健康と安全と労働者の生活を破壊する

本人だけは熱が入ってますが、まさか後ろからカンペが見えている?w


 

2 かつて聞いたことないくらいのアメリカ礼賛!

 あと、印象的だったのが、アメリカへの物凄い媚び、へつらい!

 ある程度社交辞令も必要だとは言え、今時こんなにアメリカを手放しで礼賛する人いないでしょう。

 まず、過去を回顧する部分で

「焦土と化した日本に、子ども達の飲むミルク、身につけるセーターが、毎月毎月、米国の市民から届きました。山羊も、2036頭、やってきました。」

という部分もあるんですが(ヤギが2036頭ってなに?)、敗戦により日本にもたらされた戦後民主主義については、「東京裁判史観」「戦後レジーム」と言って、徹底的に否定するくせに、アメリカからもたらされた「物質」についての印象は強烈なようです。

「親愛なる、同僚の皆様、戦後世界の平和と安全は、アメリカのリーダーシップなくして、ありえませんでした。省みて私が心から良かったと思うのは、かつての日本が、明確な道を選んだことです。その道こそは、冒頭、祖父の言葉にあったとおり、米国と組み、西側世界の一員となる選択にほかなりませんでした。」

 まあ、反共のことですね。

 そして、演説の最後がこれです。



「私たちには、トモダチがいました。被災した人々と、一緒に涙を流してくれた。そしてなにものにもかえられない、大切なものを与えてくれた。希望、です。米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。

 米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。アメリカと日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。希望の同盟――。一緒でなら、きっとできます。ありがとうございました。」

  持ち上げられるアメリカ人の方が、お尻がこそばゆくなるんじゃないですかね。

「米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。」

って、連合軍がナチスからパリを解放したときのフランス人の感想みたいです。

 全く恥ずかしげもなく、こんなに「瑞々しい」感性でアメリカを語れるなら、アメリカ大統領選挙に出た方がいいんじゃないですか。

 

 

3 戦争法制を強行採決で乗り切る宣言!

 そして、これは予想とおりの、とことん日米軍事同盟拡大を自画自賛。上に引用したアメリカ礼賛からきて、アメリカの軍事路線に対しても無条件で手放しの評価です。

「私たちは、アジア太平洋地域の平和と安全のため、米国の「リバランス」(再均衡)を支持します。徹頭徹尾支持するということを、ここに明言します。」

 徹頭徹尾というのが凄いです。何でも盲目になってついていくということです。

 そして、日本に住む人全員ア然なのが次の部分。

「日本はいま、安保法制の充実に取り組んでいます。実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。

 戦後、初めての大改革です。この夏までに、成就させます。ここで皆様にご報告したいことがあります。一昨日、ケリー国務長官、カーター国防長官は、私たちの岸田外相、中谷防衛相と会って、協議をしました。いま申し上げた法整備を前提として、日米がそのもてる力をよく合わせられるようにする仕組みができました。一層確実な平和を築くのに必要な枠組みです。

 それこそが、日米防衛協力の新しいガイドラインにほかなりません。昨日、オバマ大統領と私は、その意義について、互いに認め合いました。皆様、私たちは、真に歴史的な文書に、合意をしたのです。」

本人にはいい思い出になった。。。



 私もこのブログで戦争法制が危ない危ないと言っていますが、まだ、法案は閣議決定もされず、国会にも提出されていません。それは、たぶん5月中旬のこと。

 それなのに、

「この夏までに、成就させます」

と言いきってますからね。2~3か月しかないじゃん。

 ほとんどまともに審議する気がありません。これは、必ず強行採決する気です。

 しかも、自民党と公明党とで協議していただけで、日本国民には全く説明もしていないものを

「ケリー国務長官、カーター国防長官は、私たちの岸田外相、中谷防衛相と会って、協議をしました。」

「昨日、オバマ大統領と私は、その意義について、互いに認め合いました。皆様、私たちは、真に歴史的な文書に、合意をしたのです。」

などと誇らしげに報告してます。

 日本の国会より先にアメリカ議会で。

 こんな人に、民主主義だの、法の支配だのを語られたくないですね。

日本が攻撃されていなくても集団的自衛権を行使できる「存立事態」概念導入はむしろ日本人を危険に追いやる

 

安倍首相は今回の演説の題を「希望の同盟」と名付けています。誰にとっての希望なんだか。

 

 

 いやあ、覚悟はしていたものの、予想を超える酷い演説でした。

 さらに覚悟をして彼の帰国を待ちましょう。

歴史上最悪の約束をするから、安倍首相は日本の総理として歴史上初めて米国上下両院合同会議で演説できる

ずっと練習はしてたらしい。この執念に負けないようにしたい。

 

 

 

帰ってこないでほんとにアメリカ大統領選挙に出たらいいのに。

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追伸  

4 NHKの早朝ニュースで安倍首相のアメリカ議会演説を聞いた率直な感想は

「ろれつが回ってない」

でした。 

 あれえ、例の福島の原発事故は完全にコントロールしていると言った東京オリンピック招致演説の時には、もっとずっと英語がうまく聴こえたのですが、今回は原稿を読むのに必死で棒読みだし、なにしろ発音がはっきりしていなくて聴き取りにくかったです。

 遅くまで練習しすぎたか、持病を抑えるお薬をいつもより余計に飲んだのでしょうか。

 歴史的な名演説にするには、そもそも語学力と体力が不足だったようです。

オリンピック招致の最終プレゼンで大嘘をついた安倍首相「福島原発事故は完全にコントロールしている」

 

5 中国への当てこすりで、「法の支配」「法の支配」というのですが、自分がこの前、違憲のはずの集団的自衛権の行使を「憲法解釈の変更」で乗り切ってしまっているため、でかいブーメランが眉間に突き刺さってるの感が凄い。

 

6 今回の演説のハイライトは次の部分

「みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。こう、おっしゃっています。

 「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉をたたえることだ」

 もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のおじいさんこそ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした。これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。

 熾烈(しれつ)に戦い合った敵は、心の紐帯(ちゅうたい)が結ぶ友になりました。スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。ほんとうに、ありがとうございました。」

 いや、「歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう」、って安倍さんが隣同士に座るように頼んだんでしょ(笑)。そのとなり、安倍さんのお連れ合いだしw

演説で首相が硫黄島の敵味方を紹介 盛大な拍手

演説で首相が硫黄島の敵味方を紹介 盛大な拍手


 3月のネタニヤフイスラエル首相のアメリカ議会演説は、スタンディングオベレーションが安倍首相の比ではなく(回数でも約二倍)、地鳴りのようだったのですが、あの時もホロコースト収容所の生き残りの方を呼んでいました。電通あたりがそこからヒントを得たのでしょう。

 彼らは決してこういう方々はお呼びしません。

安倍首相はファシズムの歴史的責任認めよ。「バターン死の行進」の米退役軍人団体が議会演説に条件。

 ちなみに、新藤議員ってこんな人。

自民党議員3馬鹿トリオの政治ショー 入国拒否でウルルン滞在記・・・・にならず

安倍自民党政権がヘイトスピーチ社会を作っている。安倍・麻生・伊吹・下村・高市・新藤・稲田・萩生田。

アベノリスク5 ネトウヨ・ネオナチと化して、人が憎しみ合うヘイト社会を創る安倍極右政権

イランへの攻撃を訴えたネタニヤフを共和党議員が熱烈歓迎。

 

 

7 「慰安婦」問題批判をかわすために、とってつけたように女性の人権話。

 そして、またも出ました、日本語と英語を使い分けて、アメリカには結構反省しているように見せる裏ワザ。

リテラ

米国向けには反省、国内では歴史修正…安倍首相が米議会演説で駆使した卑劣な“二枚舌”

 

8 で、あらためて内容を見て最初に驚くのは、おじいちゃんの岸信介首相押しが凄い!

 まず、演説の冒頭部分がこれです。

「議長、副大統領、上院議員、下院議員の皆様、ゲストと、すべての皆様、1957年6月、日本の首相としてこの演台に立った私の祖父、岸信介は、次のように述べて演説を始めました。

 「日本が、世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからであります」。

 以来58年、このたびは上下両院合同会議に日本国首相として初めてお話する機会を与えられましたことを、光栄に存じます。お招きに、感謝申し上げます。」

 このあと、日本が駐日大使として迎えた政治家への謝辞が続くのですが、祖父岸信介のところ、全く必然性がありません。官僚が用意した原稿にどうしても入れろとおじいちゃんのことを無理やり挿入したのが手に取るようにわかります。

 そして、驚くことに、もう一回祖父が出てきます。

「親愛なる、同僚の皆様、戦後世界の平和と安全は、アメリカのリーダーシップなくして、ありえませんでした。省みて私が心から良かったと思うのは、かつての日本が、明確な道を選んだことです。その道こそは、冒頭、祖父の言葉にあったとおり、米国と組み、西側世界の一員となる選択にほかなりませんでした。」

 「冒頭、祖父の言葉にあったとおり」、要らない!

 安倍首相再登板の頃から書いてきたように、やはり、安倍首相はA級戦犯容疑者だったおじいちゃんの名誉回復のために政治をやっているんですねえ(岸信介とCIAの関係について)。

怨念の政治家 橋下徹大阪市長と安倍晋三元首相が日本を不幸にする

安倍晋三自民党新総裁誕生 暗黒の騎士(岸)再び

 

 

2015年4月30日は、アメリカのベトナム戦争敗戦40周年記念日でした。

これも何かを象徴しています。

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安倍首相は現米政権11人目=戦後は100人余-合同会議演説

 

首相の米議会演説の全文 

2015/4/30 1:33 日本経済新聞
 

安倍首相米議会演説 全文

4月30日 2時16分
安倍首相米議会演説 全文
 
安倍総理大臣は日本時間の30日未明、アメリカ議会上下両院の合同会議で、日本の総理大臣として初めて演説しました。演説の全文です。
 
議長、副大統領、上院議員、下院議員の皆様、ゲストと、すべての皆様、1957年6月、日本の総理大臣としてこの演台に立った私の祖父、岸信介は、次のよ うに述べて演説を始めました。「日本が、世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからであります」。以来58年、このた びは上下両院合同会議に日本国総理として初めてお話する機会を与えられましたことを、光栄に存じます。お招きに、感謝申し上げます。申し上げたいことはた くさんあります。でも、「フィリバスター」をする意図、能力ともに、ありません。皆様を前にして胸中を去来しますのは、日本が大使としてお迎えした偉大な 議会人のお名前です。マイク・マンスフィールド、ウォルター・モンデール、トム・フォーリー、そしてハワード・ベイカー。民主主義の輝くチャンピオンを大 使として送ってくださいましたことを、日本国民を代表して、感謝申し上げます。キャロライン・ケネディ大使も、米国民主主義の伝統を体現する方です。大使 の活躍に、感謝申し上げます。私ども、残念に思いますのは、ダニエル・イノウエ上院議員がこの場においでにならないことです。日系アメリカ人の栄誉とその 達成を、一身に象徴された方でした。

私個人とアメリカとの出会いは、カリフォルニアで過ごした学生時代にさかのぼります。家に住まわせて くれたのは、キャサリン・デル・フランシア夫人、寡婦でした。亡くした夫のことを、いつもこう言いました、「ゲイリー・クーパーより男前だったのよ」と。 心から信じていたようです。ギャラリーに、私の妻、昭恵がいます。彼女が日頃、私のことをどう言っているのかはあえて聞かないことにします。デル・フラン シア夫人のイタリア料理は、世界一。彼女の明るさと親切は、たくさんの人をひきつけました。その人たちがなんと多様なこと。「アメリカは、すごい国だ」。 驚いたものです。のち、鉄鋼メーカーに就職した私は、ニューヨーク勤務の機会を与えられました。上下関係にとらわれない実力主義。地位や長幼の差に関わり なく意見を戦わせ、正しい見方なら躊躇なく採用する。――この文化に毒されたのか、やがて政治家になったら、先輩大物議員たちに、アベは生意気だとずいぶ ん言われました。

私の名字ですが、「エイブ」ではありません。アメリカの方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。民主主義の基礎 を、日本人は、近代化を始めてこのかた、ゲティスバーグ演説の有名な一節に求めてきたからです。農民大工の息子が大統領になれる――、そういう国があるこ とは、19世紀後半の日本を、民主主義に開眼させました。日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。出会いは150年以上 前にさかのぼり、年季を経ています。

先刻私は、第二次大戦メモリアルを訪れました。神殿を思わせる、静謐な場所でした。耳朶を打つのは、 噴水の、水の砕ける音ばかり。一角にフリーダム・ウォールというものがあって、壁面には金色の、4000個を超す星が埋め込まれている。その星の一つ、ひ とつが、倒れた兵士100人分の命を表すと聞いたときに、私を戦慄が襲いました。金色(こんじき)の星は、自由を守った代償として、誇りのシンボルに違い ありません。しかしそこには、さもなければ幸福な人生を送っただろうアメリカの若者の、痛み、悲しみが宿っている。家族への愛も。真珠湾、バターン・コレ ヒドール、珊瑚海…、メモリアルに刻まれた戦場の名が心をよぎり、私はアメリカの若者の、失われた夢、未来を思いました。歴史とは実に取り返しのつかな い、苛烈なものです。私は深い悔悟を胸に、しばしその場に立って、黙祷を捧げました。親愛なる、友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃 れた米国の人々の魂に、深い一礼を捧げます。とこしえの、哀悼を捧げます。

みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中 将がお座りです。70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば 参加してこられました。こう、仰っています。「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を 追悼し、栄誉を称えることだ」。もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のお祖父さんこ そ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした。これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。熾烈に戦い合った敵は、心の 紐帯が結ぶ友になりました。スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。本当に、ありがとうございました。

戦後の日本は、先の大戦に対す る痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。みずからの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思いは、 歴代総理と全く変わるものではありません。アジアの発展にどこまでも寄与し、地域の平和と、繁栄のため、力を惜しんではならない。みずからに言い聞かせ、 歩んできました。この歩みを、私は、誇りに思います。焦土と化した日本に、子どもたちの飲むミルク、身につけるセーターが、毎月毎月、米国の市民から届き ました。山羊も、2036頭、やってきました。米国がみずからの市場を開け放ち、世界経済に自由を求めて育てた戦後経済システムによって、最も早くから、 最大の便益を得たのは、日本です。下って1980年代以降、韓国が、台湾が、ASEAN諸国が、やがて中国が勃興します。今度は日本も、資本と、技術を献 身的に注ぎ、彼らの成長を支えました。一方米国で、日本は外国勢として2位、英国に次ぐ数の雇用を作り出しました。

こうして米国が、次い で日本が育てたものは、繁栄です。そして繁栄こそは、平和の苗床です。日本と米国がリードし、生い立ちの異なるアジア太平洋諸国に、いかなる国の恣意的な 思惑にも左右されない、フェアで、ダイナミックで、持続可能な市場をつくりあげなければなりません。太平洋の市場では、知的財産がフリーライドされてはな りません。過酷な労働や、環境への負荷も見逃すわけにはいかない。許さずしてこそ、自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を、世界に広め、 根づかせていくことができます。その営為こそが、TPPにほかなりません。しかもTPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意 義があることを、忘れてはなりません。経済規模で、世界の4割、貿易額で、世界の3分の1を占める一円に、私たちの子や、孫のために、永続的な「平和と繁 栄の地域」をつくりあげていかなければなりません。日米間の交渉は、出口がすぐそこに見えています。米国と、日本のリーダーシップで、TPPを一緒に成し 遂げましょう。

実は、いまだから言えることがあります。20年以上前、GATT農業分野交渉の頃です。血気盛んな若手議員だった私は、農 業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に、国会前で抗議活動をしました。ところがこの20年、日本の農業は衰えました。農民の平均年齢は10歳上 がり、いまや66歳を超えました。日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらなければなりません。私たちは、長年続いた農業政策の大改革に立 ち向かっています。60年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます。世界標準に則って、コーポレート・ガバナンスを強めました。医療・ エネルギーなどの分野で、岩盤のように固い規制を、私自身が槍の穂先となりこじあけてきました。人口減少を反転させるには、何でもやるつもりです。女性に 力をつけ、もっと活躍してもらうため、古くからの慣習を改めようとしています。日本はいま、「クォンタム・リープ(量子的飛躍)」のさなかにあります。親 愛なる、上院、下院議員の皆様、どうぞ、日本へ来て、改革の精神と速度を取り戻した新しい日本を見てください。日本は、どんな改革からも逃げません。ただ 前だけを見て構造改革を進める。この道のほか、道なし。確信しています。

親愛なる、同僚の皆様、戦後世界の平和と安全は、アメリカのリー ダーシップなくして、ありえませんでした。省みて私が心からよかったと思うのは、かつての日本が、明確な道を選んだことです。その道こそは、冒頭、祖父の ことばにあったとおり、米国と組み、西側世界の一員となる選択にほかなりませんでした。日本は、米国、そして志を共にする民主主義諸国とともに、最後には 冷戦に勝利しました。この道が、日本を成長させ、繁栄させました。そして今も、この道しかありません。

私たちは、アジア太平洋地域の平和 と安全のため、米国の「リバランス」を支持します。徹頭徹尾支持するということを、ここに明言します。日本はオーストラリア、インドと、戦略的な関係を深 めました。ASEANの国々や韓国と、多面にわたる協力を深めていきます。日米同盟を基軸とし、これらの仲間が加わると、私たちの地域は各段に安定しま す。日本は、将来における戦略的拠点の一つとして期待されるグアム基地整備事業に、28億ドルまで資金協力を実施します。アジアの海について、私がいう3 つの原則をここで強調させてください。第一に、国家が何か主張をするときは、国際法にもとづいてなすこと。第二に、武力や威嚇は、自己の主張のため用いな いこと。そして第三に、紛争の解決は、あくまで平和的手段によること。太平洋から、インド洋にかけての広い海を、自由で、法の支配が貫徹する平和の海にし なければなりません。そのためにこそ、日米同盟を強くしなくてはなりません。私たちには、その責任があります。日本はいま、安保法制の充実に取り組んでい ます。実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係 は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。戦後、初めての大改革です。この夏までに、 成就させます。ここで皆様にご報告したいことがあります。一昨日、ケリー国務長官、カーター国防長官は、私たちの岸田外務大臣、中谷防衛大臣と会って、協 議をしました。いま申し上げた法整備を前提として、日米がそのもてる力をよく合わせられるようにする仕組みができました。一層確実な平和を築くのに必要な 枠組みです。それこそが、日米防衛協力の新しいガイドラインにほかなりません。きのう、オバマ大統領と私は、その意義について、互いに認め合いました。皆 様、私たちは、真に歴史的な文書に合意をしたのです。

1990年代初め、日本の自衛隊は、ペルシャ湾で機雷の掃海に当たりました。後、イ ンド洋では、テロリストや武器の流れを断つ洋上作戦を、10年にわたって支援しました。その間、5万人にのぼる自衛隊員が、人道支援や平和維持活動に従事 しました。カンボジア、ゴラン高原、イラク、ハイチや南スーダンといった国や、地域においてです。これら実績をもとに、日本は、世界の平和と安定のため、 これまで以上に責任を果たしていく。そう決意しています。そのために必要な法案の成立を、この夏までに、必ず実現します。国家安全保障に加え、人間の安全 保障を確かにしなくてはならないというのが、日本の不動の信念です。人間一人一人に、教育の機会を保障し、医療を提供し、自立する機会を与えなければなり ません。紛争下、常に傷ついたのは、女性でした。私たちの時代にこそ、女性の人権が侵されない世の中を実現しなくてはいけません。自衛隊員が積み重ねてき た実績と、援助関係者たちがたゆまず続けた努力と、その両方の蓄積は、いまや私たちに、新しい自己像を与えてくれました。いまや私たちが掲げるバナーは、 「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」という旗です。繰り返しましょう、「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」こそは、日本の将来を導く旗印 となります。テロリズム、感染症、自然災害や、気候変動――。日米同盟は、これら新たな問題に対し、ともに立ち向かう時代を迎えました。日米同盟は、米国 史全体の、4分の1以上に及ぶ期間続いた堅牢さを備え、深い信頼と友情に結ばれた同盟です。自由世界第一、第二の民主主義大国を結ぶ同盟に、この先とも、 新たな理由付けは全く無用です。それは常に、法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結びつきです。

まだ高校生だったとき、 ラジオから流れてきたキャロル・キングの曲に、私は心を揺さぶられました。「落ち込んだ時、困った時、目を閉じて、私を思って。私は行く。あなたのもと に。たとえそれが、あなたにとっていちばん暗い、そんな夜でも、明るくするために」。2011年3月11日、日本に、いちばん暗い夜がきました。日本の東 北地方を、地震と津波、原発の事故が襲ったのです。そして、そのときでした。米軍は、未曾有の規模で救難作戦を展開してくれました。本当にたくさんの米国 人の皆さんが、東北の子どもたちに、支援の手を差し伸べてくれました。私たちには、トモダチがいました。被災した人々と、一緒に涙を流してくれた。そして なにものにもかえられない、大切なものを与えてくれました。――希望、です。米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、 希望である、希望でなくてはなりません。米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。アメリカと日本、力を合わせ、世界を もっとはるかによい場所にしていこうではありませんか。希望の同盟――。一緒でなら、きっとできます。ありがとうございました。 

 

 

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8 コメント

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Unknown (おいたわしや)
2015-04-30 23:42:32
なんだろ。。

そのまま居着いちゃっても違和感ないよね

結局、この気色わるい演説で得したのは誰?

米国が一番イイトコ取りしましたよね、安倍が抱えきれんくらいのおみやげ(日本人の命)持ってきてくれたんだから。議場使わせただけで大して費用かかってないでしよ。手叩くだけならタダだし。

中韓も別に損したわけでもないでしょ。米国が歴史認識に甘い採点したのだって、安倍がこれだけおみやげわたせばまぁ、こうなることはある意味分かりきってたことで。勿論、形式上は抗議しますけど、本質的には安倍の歴史認識を米国が許すわけがないのは動かないのでね。

そうなると、日本は?「ある意味」歴史的な演説ができたことが、安倍個人にとってはいい「記念」になったんでしょうけど。
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痛切な反省 (ゴメンテイター)
2015-05-01 07:08:16
「痛切な反省」と言ったと、新聞で持ち上げ(?)ているけど、「次は負けないぞ、アメリカがついているから。」にしか聞こえない。
米議員たちが絶賛したそうだが、腹の中は「このサル、なかなか面白い。使える。」じゃないのか。
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Unknown (きまぐれに)
2015-05-01 16:07:21
これって成功なの?
あんちょことか
マジでダサいんですが

というかなんだかこちらが恥ずかしくなる….

アメリカだと笑われてるらしいですが

英語喋れないなら日本語でスピーチすりゃよかったんじゃないの。

下手な英語使って却って聞く側に神経使わせるなんて。

なんだか田舎モン丸出しみたいで、マジで日本で大人しくしててほしかった
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Unknown (ポパイ)
2015-05-03 06:09:06
ADBが融資能力1.5倍にしたとか。

今まで何してたん?

総裁は日本人が独占し続けてこの無能&醜態w

高級イスにふんぞり返って

上から目線で他国を扱ってきた姿が目に浮かぶようで。

AIIBが歓迎されたってのがその証左
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Unknown (mm)
2015-05-03 12:45:39
興味深く読ませていただきました。

私は決して安倍首相の諸々の発言や姿勢を
支持するものではありません。

しかし、今回の演説についての多くの反応に首を
かしげたくなる部分があります。演説の内容に
ついてはいくらでも批判(あるいは賞賛)があっても
いいと思います
(私は批判的に聴いた一人です)。

ただ、「発音」とか「カンペ」を嘲笑するのは
恥ずかしいことではないかと眺めています。
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Unknown (sk)
2015-05-03 18:16:58
わかってねーな。

カンペそれ自体に笑ってんじゃねーよ

むしろ見栄えはってセノビなんかせずに大人しく普通にやってりゃよかったんだよ。

しかし安倍は日本でもそうだが、他に大事なことがあるはずなのに、演説中拳振り上げたり、目線をそらさなかったり、まぁ、TVに見映えよく映るのに普段から異様な程心血注いでんのよ、この総理大臣は。ま、見映えよくするには、裏側の努力は絶対に見せたら駄目なわけだが。

んで、今回も米国議会で同じことやってみたら、よりによって今回その裏側がもろバレしちゃったんで、その格好悪さを世界中に晒したこととか、見栄えをやたらと気にする安倍の人間性のちっちゃさとか、安倍のセコさがバレたことを皆笑ってんだよ。アタマ隠してシリ隠さず、安倍ちゃん、てね。
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Unknown (さ迷い猫)
2015-05-03 20:55:16
演説の中身?
いまさら中身批判してどうすんだよ
口に出したんだから取り消しようもないしな
これからは外国行って勝手なことしゃべるんじゃなくて国内で何しゃべるか明らかにした後でしゃべれとしか言えんな
それよりコイツの国辱的国恥的スピーチを批判して何が悪いんだ?日本が恥掻いてんだよ。ってか、こんなダセー首相初めだわ

それにそもそも演説の中身以上にカタチに執着してたのは安倍の方じゃねえか。安倍が自分で蒔いた種なんだよ。それで大ゴケして日本が笑いのネタにされたんだから批判されて当然じゃねーか
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激しい言葉は止めてください (raymiyatake)
2015-05-03 22:05:52
私のブログの注意書きにある
「人を不愉快にする・品が悪いもの、感情的なもののみ承認しません。」
というのは私に対してのものというより、コメンテーターの皆さん同士のことを主にイメージしています。

そこのところ、よろしくお願いいたします。
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