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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

福島県双葉郡に中間貯蔵施設を押しつける野田首相と私たちは、福島県民を同じ日本国民だと思っていますか?

2012年01月10日 | 福島原発事故


 「双葉郡民を国民だと思っていますか、法の下の平等が保障されていますか、憲法で守られていますか」

 福島県の双葉町は第1原発が立地し、すでに最も放射能汚染度が高いと言うことで、中間貯蔵施設の有力候補地の一つに挙げられています。

 その双葉町の井戸川町長は1月4日の仕事始めのあいさつで受け入れ反対の意思を明らかにし、政府が町の意向を聞かずに地元設置の方向性を打ち出したことにも不満を抱いています。

 これに対して、野田首相は1月8日、「原子力災害からの福島復興再生協議会」で福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設を福島県双葉郡に設置することをあらためて要請しました。

 井戸川町長は協議会の席上、原発事故で古里を追われた上、中間貯蔵施設の受け入れを迫られて理不尽な境遇に置かれた住民の思いを酌み、野田首相に質問したのだそうです。

 「双葉郡民を国民だと思っていますか、法の下の平等が保障されていますか、憲法で守られていますか」

 野田首相は「大事な国民だと思っている」と答えたというのですが。

 なんと空々しく、乾いて聞こえる言葉でしょうか。。。。

 

政府が避難者数を誤魔化していた 東日本大震災の避難者はこれまでの公表の4・5倍以上で33万人!

もはや被災者棄民 仮設住宅の暖房設置 宮城県たったの8・5%!福島県も3割未満・・・

(福島・双葉町が集団避難 役場機能ごと千人が埼玉へ)

 

 


 野田首相は福島県の税制優遇措置などを手土産に佐藤福島県知事と会談しましたが、佐藤知事は2011年12月に首相が行った事故収束宣言について「あくまでも避難者の帰還が収束だ」と不快感を示しました。

 福島県議会が全会一致で求めた「福島県内の原子力発電所を全部廃炉にする」という決議に対して、野田首相は全く応えないばかりか、原発を維持しさらに輸出するという政策を打ち出しています。これでは福島の誰も納得できるわけがないでしょう。

 井戸川双葉町町長の首相に対する問いは、血を吐くような思いで出されたものでしょう。ひょっとしたら全国民から「地域エゴ」どの指弾を受けるかも知れないことを覚悟した上での、文字通り必死の訴えです。

 今年の年頭の決意として、東日本大震災からの復興でもなく、福島原発事故の収束と脱原発でもなく、選りに選って被災地も直撃する消費税の増税を不退転の決意でやりきると宣言した野田首相には福島県民への一片の真情も感じられません。

 福島から脱出した避難者は数万人。彼らを援助せず、逆に帰れるように手を尽くすでもなく、福島県にとどまる200万人弱の県民にも誠意を尽くさない一国の宰相に対して、大震災の被災者であると同時に原発事故の被害者でもある福島県民が不信感しか持てないのは当たり前ではないでしょうか。

 

子どもたちを原発事故の放射線から守るために、除染だけではなく集団疎開を!子ども未来法律事務所通信13

(避難先の「さいたまスーパーアリーナ」の通路に設置された福島県双葉町の臨時町役場)

 

 

 

 

 誰もあからさまには言わないけれども、中間貯蔵施設を作られてしまったら、たぶん、そこが何万年も最終処分施設になってしまうのです。よそに持って行けるわけないじゃないですか。

 双葉町の人たちは、実は永久に故郷を失う危機に今立たされています。

 私も、実は、中間貯蔵施設や最終処分場は福島第1原発だけでなくすべての原発を廃炉にして、原発の敷地をそれに当てるしかないと思っています。原子炉を廃炉にすれば膨大な放射性物質が出るのですから、それを移動させるよりはそこでそのまま処理した方が良いに決まっています。

 

除染後の放射性廃棄物は脱原発後の「元」原子力発電所を中間処理施設にしてその敷地に集めよう 

 

 しかし、じゃあ、原発周辺の住民はどうなるんでしょうか。

 私は、これまで原発を容認し、電源三法でじゃぶじゃぶお金をもらってきたのだから我慢してくださいと言えば言えますが、本当は血も涙もない話ですよ、これは。

 原発が立地すると言うことがそれほどの深刻で重大で致命的な問題なのだとは、原発周辺住民だって知らされないで受け入れてきたのですから。

 彼らこそ、「原発安全神話」という名の壮大な詐欺の犠牲者なのです。

 双葉町長の言っていることは決して、決して、地域エゴではありません。

 

出口が見えない放射能汚染土壌の除染問題 けれども安易な「解決」より問題を真摯に考え続ける誠実さを

(さいたまスーパーアリーナの通路に敷いた毛布の上で休む福島県双葉町の町民)

 

 

 

 狭い日本で本当は余り意味のないことなのに、それでも都市部から離れていると言うことで、我々は福島とか青森とか新潟とか福井とか山口とか愛媛とか佐賀とか、比較的人口の少ないところに原発を押しつけて、そこで犠牲を払って作られた電力を使って生活してきました。

 同じ構造は、沖縄の米軍基地でも見られます。

 

沖縄差別の象徴 普天間基地移設問題の解決方法は撤去・廃絶のみ

 

 わずか、日本の国土の200分の1程度の面積しかない沖縄県に、日本にある米軍基地の4分の3を押しつけてきました。

 土地を奪い、騒音も犯罪も事故も環境破壊もすべて沖縄の人々に押しつけてきたのです。

 私たちは少数者の人権をどう考えてきたのか。

 私たちは、彼らの命を食べて生きているとは言えないか。

政府が米軍普天間基地を辺野古移設する環境影響評価書提出を強行 今試されている我々日本人の人間性

 


(沖縄国際大学での米軍ヘリ事故)

 

 

 

 原発推進派の不合理性と不誠実、非人間性は言うまでもありません。

 しかし、脱原発派はどうでしょうか。

 私も脱原発ではそれほど人後に落ちないと思いますが、極端な脱原発の人は、福島の屋内で作った花火も県外の花火大会で使ってはダメだの、京都の五山で陸前高田の薪を燃やしてはダメだの、福島のものは食べ物もなにもかも一切県外に持ち出すなだの、福島の人に死ねと言わんばかりのことを平気で言います。

 

平泉大文字送り火:被災家屋の木材使用 京都五山の送り火は陸前高田の薪使用中止

本当に「心の復興」が必要なのは被災者ではないのかもしれないです

 

 脱原発は、すべての人が幸せに生きていくためにするのでしょう?

 今や完全に弱者となった福島原発周辺の人を平気で切り捨てるような心根で、本当をこの社会を良くしていけると思いますか。

 改めて自らにも問いたいと思います。

 福島や沖縄の方々を国民だと思っているか、法の下の平等を保障しているか、憲法で守っているか、と。

 

東日本大震災から半年 本当の復興とは被災者の幸福追求権を保障すること

 

(避難所を訪れたフィンランドのサンタクロースと握手する福島県双葉町の子どもたち、埼玉県加須市)

 

 

 

とにかく胸が痛むが脱原発の一点では国民の大多数が賛同できるはずと思われた方は

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首相、中間貯蔵要請 井戸川町長「双葉郡民は国民ですか」

協議会で中間貯蔵施設の双葉郡設置を要請する野田首相=8日午後、福島市のサンパレス福島

 

 野田佳彦首相が8日、「原子力災害からの福島復興再生協議会」で福島第1原発事 故に伴う中間貯蔵施設を福島県双葉郡に設置することをあらためて要請したことについて、出席者の一人で受け入れに反対している福島県双葉町の井戸川克隆町 長は協議会後、「話が一方的に進み、納得できない」と不満を述べた。
 「双葉郡民を国民だと思っていますか、法の下の平等が保障されていますか、憲法で守られていますかと尋ねた」
 井戸川町長は協議会の席上、原発事故で古里を追われた上、中間貯蔵施設の受け入れを迫られて理不尽な境遇に置かれた住民の思いを酌み、野田首相に質問した。首相は「大事な国民だと思っている」と答えたという。
 双葉町は第1原発が立地し、中間貯蔵施設の有力候補地の一つに挙げられている。井戸川町長は4日の仕事始めのあいさつで受け入れ反対の意思を明らかにし、政府が町の意向を聞かずに地元設置の方向性を打ち出したことにも不満を抱く。
 協議会に出た富岡町の遠藤勝也町長も政府の説明が不十分だという認識で、「どういう場所にどういうスケジュールで設置するのかをしっかり説明してほしいと国にお願いした」と語った。

河北新報 2012年01月09日月曜日

 


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8 コメント

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日本は、泥鰌の棲家ではない、人間の住むところだ。忘れるなヨ! (cafe)
2012-01-10 00:36:35
 世の中に、放射性物質の「中間貯蔵施設」なんてものはなく、中間と言っても一体全体、何時までの中間なのか、皆目、分かる筈がない。 要するに、国・政府は、その「最終貯蔵施設」を、福島県双葉群に設置するため、野田総理大臣が、わざわざ出かけた訳だ。この程度のことを、分からないでは、小学校就学の子供以前ですネ
 野田首相、その他の同行した閣僚らは、完全に狂っている!福島県知事も、そんな話を平然と聞いて、ただ”野田首相に不快を感じた”では、済まない話しを同行記者らに漏らしたとのこと。
 単純に不快で済む問題ではないから、「野田首相と会わない、帰ってくれ!」と啖呵を切るのが、当然の立ち場だヨ。その両方共に、全く狂っている!
 「中間廃棄施設などを、作るな!」
 これは、当たり前のことで、「日本は泥鰌の棲家ではなくて、人間様の住むところなのだ。」
 絶対に、忘れるな!
 わたしは、本当に怒っている。
返信する
お邪魔します。 (gangangansoku)
2012-01-10 10:01:21
福島県のほとんどの地域は避難した方が良いくらい汚染が進んでいると思います。更に福島周辺の県を含め汚染は前代未聞の深刻さを増しています。
日本国民として、日本人を愛するならば国の利益よりも国民の安全を優先させて欲しかったです。
返信する
self-will (noga)
2012-01-10 21:44:02
昔、「コーラは○○○、ボクシングはヤマトダマシィ」という宣伝文句があった。
闘争には、大和魂が有効であるということであろうか。大和魂とは、負けじ魂のことなのか。大和魂を発揮して頑張れば、その結果は沖縄戦のようになるというものであろうか。

悪くないものを悪いと言わせようとする恣意がある。これも、腹芸か、大和魂か。
その恣意が政治問題を何十年も膠着させている。
普天間基地の環境がどうしても我が国民に許しがたいものであるならば、政府は福島の第一原発のように「長期帰還困難区域」に直ちに指定すればよい。
この国の政治には、恣意の人でなく、意思の人が必要である。
さすれば、腹案ではなく、成案をもって問題は決着できる。

問題を解決する能力はないが、事態を台無しにする (ちゃぶ台をひっくり返す)力は持っている。
だから無能力の我々は、常に耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、もって万世のために太平を開かんと欲しなくてはならない。
和をもって尊しとなす。過ちは、繰り返しませぬから。
これは単なる感傷ではなく、我々自らの叡智をもって裏付ける行動に出なくてはならない。

日本人には意思 (will) がない。
意思は未来時制 (future tense) の内容である。
日本語には時制がない。
日本人には意思がない。

英米人の子供には意思がない。
この点で日本人のようなものである。
思春期を迎え、言語能力が発達すると、意思を表すことができるようになる。
英米流の高等教育 (大人の教育) が可能になる。これは、さらなる英語の教育である。
日本語脳の持ち主には、大人の教育の意味は理解できない。
日本人は英米流の大学教育を高く評価もしないし、効果も上がらない。

子どもには意思がない。
だから、子供には保護者 (chaperon) がついてきて、それを代行する。
日本政府にも、意思決定が難しい。
だから、アメリカ政府が意思決定を助けてくれる。
日本人の誰もが指摘する通り、我が国の政府は、アメリカ政府のポチである。
日本人は、自力でこの道を脱却できるか。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812

返信する
Unknown (h)
2012-01-11 09:53:48
うーん よくわからんなー
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/47b130081c06c4ab27dd610d5cfe75bf
あなた自身

>除染後の放射性廃棄物は脱原発後の「元」原子力発電所を中間処理施設にしてその敷地に集めよう 

といってるじゃない?「発電所」なら
いいけど周辺の双葉町はダメってこと?
返信する
中間貯蔵施設は原発周辺しかないだろう (タロ)
2012-01-11 10:32:52
まず、設定として「中間貯蔵施設は必要か?」という問いがある。

当然、この答えは「イエス」になる。
ノーという方は希少だろう。

したがって「どこに作るか?」という問題になる。
この問題を左右する要素は「コスト」や「実現可能性」といったものになる。
決して「お題目」や「理想」ではない。
「現実」が左右する問題なのだ。

では、この場合の実現可能性やコストとはなんだろうか?
もちろん、経済的コスト、つまり「カネ」もそうだが、実際の壁となるのは、地元の合意を取り付けるという「政治的コスト」だろう。

当然、今、既に人が住んでいる地域でこの合意を得るより、汚染されていて当面住めない地域である方が合意は得やすい。
そして、他に使い道が当分見つからない汚染された土地であれば、中間貯蔵施設を建設しやすい。

もちろん、そこに最終的に貯蔵施設が作られる可能性もある。
でも、最終的な貯蔵施設を作るにしても、やはりその時には地元の合意が必要なのだ。

もはや、廃炉には50年単位で年月が掛かり、除染も困難が予想され、かつ、放射性物質は長期に渡って他の地域より高い状態が続くことが分かっている。

つまり、人生という単位で考えれば、周辺部であれば別にして、原発にほど近い地域に帰ることは事実上出来ないのだ。

君らはチェルノブイリ周辺産の農産物を買うか?ウクライナの小麦を輸入しているか?
そうではあるまい。
我々だって、避けているのだ。
仮に住んだとしても、双葉町などの地域から売れるものは無くなってしまったのだ。

これが現実だ。

それを無視して、他の生産が出来る土地に、新たな補助金を使って(使わずにタダでというのは、原発同様無理だろう)建設することは、政治的に難しく、かつ、カネも余計に掛かる。

現実的な選択肢として、事故現場周辺に作るしかないのだ。

これに反対する者がいれば、代替の選択肢を、そのコストと共に提示すべきだと思う。
仮に、有利な選択肢で、かつ、地元の同意が得やすいのであれば、それに賛成することにやぶさかではない。

しかし、それは難しいだろう。
決定する必要性が差し迫っていることに関し、代替の選択肢を提示せず反対することは、無責任と同義だと思うがいかがだろうか?
返信する
人間を大切に (通りすがり)
2012-01-12 04:55:39
福島県民をいつまでも福島県民としておきたいのはなぜだろう。極論をいえば住民ごとその汚染地域に封じ込めて地域振興を維持したいそんな人間より土地が大切という価値観がひそんでいるのではないか。中間貯蔵施設が不要であったり、来るべき余震や付随する大津波に耐えられないならば格別。被災者は全国民が助けるそれだけでいいではないか。
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難しいですね (kei)
2012-01-12 11:25:26
物理的・政治的に合理的だから双葉町にというのは間違いではないけれど、正解でも無いとは思います。
倫理的な正解は東京電力を利用してきた都町村なのではないかと。
実現はしないでしょうが、だとしたら、みんなでその責任をどう取るかを考える必要がありますね。
他人事に思っている人も多いのではないでしょうか。
「どうせ最後はお金でしょ?」by斑目氏
返信する
理想と現実は違う (たこ)
2012-01-29 18:36:22
飯舘村では若者を中心に村に戻りたくない人が増えているそうです。双葉はどうですか。
おそらく戻れるようになるまでに何十年もかかる。そしてそもそも戻りたい人がどれだけいるか。安全宣言を国が出したとしてもそんなものは誰も信用しませんよ。とくに小さな子供のいる家庭や妊婦さんはリスクを冒して戻りたいだろうか。
東京電力を利用してきた都町村には双葉も入ってますよね。本当に安全なのなら東京湾に原発を作ればいい。交付金なんか出さなくても雇用の産まれる原発は引く手あまたのはず。それが立地に苦労しているというのは不安があるからじゃないですか。だから安全安全と繰り返し喧伝しなければならなくなる。
もちろん責任はみんなで取る必要がある。でも解決策はやっぱり双葉にお願いする以外にないのではないでしょうか。現実的な唯一の選択肢です。他に実現可能なプランがありますか?
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