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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

出口が見えない放射能汚染土壌の除染問題 けれども安易な「解決」より問題を真摯に考え続ける誠実さを

2011年09月15日 | 福島原発事故

 

 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質の除染について話し合う環境省の「環境回復検討会」が9月14日初会合を開き、10月末までに方向性や方法を取りまとめることを決めました。

 政府は除染の基本方針について、「汚染地域の年間被ばく線量を今後2年間で半減させる」との暫定目標を掲げていますが、その後についても検討会で方針を示すことを確認しました。

 この土壌除染でも特に農地について、農林水産省は、放射性物質に汚染された農地の除染技術について、表面の土を取り除く方法が最も効果があるという研究成果を発表しました。

 福島原発の事故の後、農林水産省は、放射性物質に汚染された農地をコメの作付けができるレベルにあたる、土1キロあたり5000ベクレル以下に除染する技術を研究してきました。

 その結果、放射性セシウムを吸収することが期待された、弁護士バッジにもなっているヒマワリを植える方法ではほとんど効果が見られませんでした(涙)

 やはり、農地の表面の土を取り除く方法が最も効果があることがわかったということです(そりゃそうだ 末尾の新聞記事参照)。




 ただ、5000ベクレルを超える農地はおよそ8300へクタールにのぼるため、該当する農地の土を剥ぎ取ると、東京ドームに換算して2個から3個分に達する見通しで、膨大な量の土をどのように保管するかといった別の課題が残ります。

 農林水産省は、セシウムだけを土壌から除去し、土を再利用する方法を引き続き研究することにしています。




さらに、問題は3つあります。

1 一つ目は、土壌汚染の問題は農地だけではないということです。

 ちなみに福島県は日本の都道府県で北海道、岩手県に続いて大きく13782平方キロメートル=137万8200ヘクタール。

 普通の土地も農地と同じ汚染具合だとすると、東京ドーム400個分の土壌を除去しないといけないと言うことです。

 一体どこに持って行けばいいのか。福島原発の敷地だけでは足りないでしょう。

 また、費用は一体何百兆円かかるのでしょうか。

2 二つ目は、福島の土地にも汚染の程度が低いところがあるけれども、逆に、他の都道府県にもホットスポットと呼ばれる、高濃度汚染地域があると言うことです。

 これを綿密に探し出し、除染をしなければなりません。

 その放射能汚染土砂をどこに集めるのか。どう運搬するのか。

3 三つ目がある意味最も深刻な話ですが、まだ毎日毎日福島原発から放射性物質が放出され、日本列島に降り積もっているということです。

 もちろん、3月の水素爆発の時よりは量は減っているものの、原子炉を突き抜けて核燃料が落ちたままでいる以上、放射性物質は外に出続けるわけで、つまり、除染はやってもやっても、ある意味切りが無いということです。




 この問題について、同じBLOGOS仲間(笑)の中には、

年間100mSv以下の被曝による健康被害のデータはまったく存在しない。」

 「今回の原発事故のような1回きりの被曝では、100mSv以下の被曝による健康被害はないと断定してもよい。」

福島事故についてはLNT仮説を棄却し、年間100mSv以上の持続的な放射線が観測される土地に限って除染を行なうべきだ。そんな場所は原発のサイト外にはもうないので、除染費用は800兆円どころか800万円にもならないだろう。」

と力強くも、超楽観的な見解を述べられるBLOGOS相撲の横綱がいらっしゃるのですが、ビル・ゲイツにインタビューするような、功成り名を遂げた大横綱は本当に気楽そうで羨ましいです(笑)。


左から二番目の方です



 実質的には原発推進機関であるICRP(国際放射線防護委員会)でも、

「年間100ミリシーベルト以下の被ばくでは健康被害が生じるか否か不明である」

とはいいますが、大横綱のように

100mSv以下の被曝による健康被害はないと断定してもよい」

とはいいませんからね。

 被害が生じるかどうかわからないというのと、生じないと断定してよいというのとではまるで意味が違いますから、この楽天性?にはびっくりです。




 私は、曲がりなりにも原爆症集団認定訴訟の弁護団員として、大横綱が厳しすぎるとおっしゃるICRPの基準でさえ全くナンセンスだと思っています。

内部被曝の恐怖24 ICRPの放射線被曝限度年間1~20ミリシーベルトの安全基準はまだ甘い


 この基準が根拠としている、アメリカ占領軍が作ったABCC→放射線影響研究所による、広島・長崎の被爆者の追跡調査は、致命的な欠陥をいくつも抱えているからです。

1 原爆の初期放射線は爆心地から2・5キロまでしか飛ばないという誤った前提に立っている

2 残留放射能・黒い雨などの放射性降下物の影響=内部被曝をほとんど無視している

3 その結果、被爆者と比較対照する非曝露群として2・5キロ以遠の「遠距離」被爆者と、原爆投下後広島長崎に入った入市被爆者を対照として比較した

4 このように被曝している者同士を比較したので、放射線の影響は極度に矮小化された

 これら以外にも大きな問題がいくつもあるのですが、原爆投下の責任を矮小化するための、こんなデータを元に原爆症認定してきた厚労省が、被爆者に裁判で19連敗して、麻生太郎自民党内閣が「ごめんなさい」したのは当然でしょう。

内部被曝の恐怖25 近畿原爆症集団認定訴訟 大阪高裁判決文よりICRP基準の問題点

 

原爆症認定訴訟 近畿弁護団通信

 


 ICRPの基準は厳しすぎるとする大横綱は

「まず国が原発周辺の放射線調査を行い、その上で賠償や除染の基準を決めるべきです。その際、IAEAとも協議して、現在のICRP基準をどこまで準用するのかを日本政府として決める必要があります。」

「100mSvを基準にすれば、安全対策や廃棄物処理のコストは数百分の一になり、納税者や電力利用者の負担は大幅に軽減されるでしょう。」

結論します。

 これでは「原発事故はなかったからお金はかからない」と言っているのも同然で、それなら、除染も賠償も、問題はなにもかも「解決」するのは当たり前です。


 


 確かに、大横綱のように、除染するほど日本の国土が放射能で汚染されていない、と本当に思えたら、私もすっごく気持ちが楽になるのです。

 しかし、福島原発事故直後からこの問題を考えているのですが、真面目に考えれば考えるほど、解決策なし、出口なし、と思えてしまいます。

 だからこそ、原発を推進してきた自民党・通産省経産省・電力会社やマスメディアなどに本当に怒りを覚え、にわか脱原発ブロガーになっているわけです。

 でも、考えても考えても解決策の浮かばない放射能汚染土壌のことを考えるのは一旦止めて

「どじょう内閣に土壌は除染できるか」

などとダジャレを飛ばして、この記事は大先輩に習って?気楽に終わろうと思ったのですが(汗)。

  末尾の新聞記事にあるように、真摯なことでは天下一品の児玉龍彦東大教授がやる気満々ですから、いずれ政府の除染プロジェクトの長になってくださることを応援したいと思います。

 


横綱でも私のような幕下でも、そんな気楽なことでいいわけないやろ!

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2011/09/14 19:27   【共同通信】 

 

 トラクターによる農地表土の削り取り=福島県飯舘村(農水省提供)

 

 農林水産省は14日、農地から放射性物質を取り除く除染技術の実証試験結果を発表した。表土を削り取ることで放射性セシウム濃度が約4分の1に低下することが判明、同省は最も有力な除染方法としている。一方、ヒマワリなど植物によるセシウムの吸収は効果が小さく、「普及の段階にない」と結論付けた。

 ただ、福島県の濃度5千ベクレル(土壌1キログラム当たり)以上の全農地の表土を削り取ると、約300万トンになり、東京ドーム2~3杯分にも達する計算。残土の処理が難題になりそうだ。

 農水省は、農地を30センチ以上深く耕し、放射性物質に汚染された表土を埋め込む「反転耕」も一定の効果があることを確認した。

 

 

 農林水産省は14日、福島県飯舘村などで5月から行っていた農地の放射性物質を除去する実証実験結果を発表した。農地の表面を3~4センチ削った場合はセシウムを7~9割減らせることが確認された。一方、放射性物質を取り込みやすいとされるヒマワリを植えてセシウムを吸収させる実験は効果が小さく、同省は「現時点での実用化は困難」とした。

 同省によると、5月に飯舘村で植えたヒマワリが吸収していたセシウムは1キロ当たり52ベクレル程度。1平方メートル当たりで10キロのヒマワリが育つとすると、現地の土壌中にあるセシウムのうち約2000分の1しか吸収できていない計算になるという。

 一方で、表面4センチを削った農地では1キロ当たり1万370ベクレルから2599ベクレルまで減少。薬剤で土を固めてから表面(3センチ)をはぎ取ったり、芝や牧草がある農地で網目状に張った根ごと表面(同)をはぎ取るなど工夫すると82~97%も減った。

 ただし、これらの方式では10アール当たり30~40トンの廃棄土砂が出る見込み。1キロ当たり5000ベクレルを超える農地は福島県内に約8300ヘクタールあると推計され、土砂は単純計算で約350万トン(東京ドーム2個分)に上り、処理方法が大きな課題となる。【曽田拓】

毎日新聞 2011年9月14日 20時54分(最終更新 9月14日 22時22分)

 

 

「除染ノウハウ、環境省ない」 東大・児玉教授が指摘

2011年9月14日23時17分 朝日新聞 

 福島県南相馬市で放射性物質を取り除く除染作業に取り組む児玉龍彦・東大教授が14日、超党派の勉強会で講演し、政府内で除染の事業を主導する環境省について「ノウハウが全くない」と指摘。「民間の専門家による第三者委員会を設け、除染の対象や基準を定めるべきだ」と主張した。

 野田政権は除染によって出る放射能汚染の土壌について、各地区ごとの仮置き場に集めてから中間貯蔵施設に移す方針を示している。だが、児玉教授は「中間貯蔵施設に移すことは住民感情からほとんど不可能。その場での処分しか考えられない」と語った。

 


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3 コメント

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BLOGOSに転載されました (ray)
2011-09-15 10:11:21
異例で、お手数ですがこちらからもお読みください。
http://news.livedoor.com/article/detail/5863570/
返信する
BLOGOSランキング1位、すごいですね (石田 力)
2011-09-16 09:28:00
前回のコメントでは池田信夫氏をBLOGOSの座長と書いてしまいましたが、かれはアゴラの組長のようです。失礼しました。
 それにしてもやはり正論は正しく評価されるということなのでしょう。BLOGOSの読者の皆さんの見識も捨てたもんじゃないと思いました。
返信する
どうちがうんでしょうか(笑) (ray)
2011-09-16 11:44:29
わたし、ブロゴス編集部に「池田先生w批判を書いたんですが、大丈夫ですか」ってメールしたんですよ(爆)

全然大丈夫だそうで、ちゃんと転載されました!

ライブドアのなんでもありなところがLEC東京リーガルマインドと似ていて、私にはなじみます。
返信する

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