タハ自伝(9)

 タハの独特のアンチ=コンフォルミスムって、こういう言い方をしてはなんですが、面白いです。

 彼の否定するもの。

★レゲエ。
 リヨンでDJをやっていたころはフラメンコ、ロック、ズーク、ソウル、リズムアンドブルーズ、フレンチ・ヴァリエテなどなんでもかけていたけど、レゲエだけはかけなかった。なぜならレゲエは原理主義イデオロギーを隠し持っているから。

★コリュシュColucheと彼の作った「心のレストラン」Resto du coeur(ホームレスたちに食べ物を配る慈善団体)
 コリュシュのギャグ、たとえばアラブ人警官がアラブ訛りでしゃべるやつなどはどうもひっかかる。コリュシュはカリカチュリストだが、カリカチュアというのは常に物事を単純化するものであり、単純化は結局、おそらく無意識的にだろうが、他者をその存在において、他者が持っているニュアンスにおいて、他者の歴史と苦しみにおいて、否定してしまう危険をはらむ。
 コリュシュが主演した映画『チャオ・パンタン』では、アラブ・バーにたむろするアラブ人は当然のように麻薬売人dealerである。(あ、dealerというのも「フランス語で使われているマイナスイメージの英語単語」に入りますね) 
 「心のレストラン」の意図は素晴らしいが、本来行政がやるべきことを無償でやってあげていることになる。

★SOSラシスム(人種差別反対の団体)
 タハがCarte de Sejour --- これはart de jouer sec(荒っぽく演奏する)のアナグラム(字を並べ替えたもの)という意味もある、と言ってますね --- をやっていたころ、SOSラシスムのコンサート(これの収益をSOSラシスムは運営資金にあてているわけです)があって、活動姿勢からいって当然このバンドこそ演奏すべきバンドなのに出演を拒否されたことがあった。
 すったもんだの末、結局演奏はできることになったが、ギャラは他の出演者よりずっと安かった。
 やりとりの過程でこの団体がずいぶんお金を持っていること、そしてフランス社会党の手先に他ならないことに気づいた。
 黒人やアラブ人のアーチストは彼らの政治的企画の端役をやらされているにすぎない。
 彼らの"touche pas a mon pote"「俺の友達に触るな」というのは典型的な西洋的、プチブル的スローガンだ。マグレブ人は、友達だからこそ体に触るのだから。

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